1131話、グランザム、それゆけ究極要塞兵器ライオネル城・7
SIDE:グランザム
「……といった感じなっております」
侍従長以下、王族付きのメイドや執事たちがせわしなく移動する中、儂らはライオネル城三階へと戻り、寝所などの説明を受けておった。
正直に言えばまだコスタロカショックのせいで夢現状態なんじゃ。
まさか幽霊がおったとは、しかもここの警備システムを任せるとかロゼッタ嬢は何考えとんじゃ。
いや、確かにコスタロカ王は話してみれば世捨て人生活を満喫しておるようじゃし、再び世界征服を、とかは面倒だと感じるタイプの霊体なので安心ではあるけども。
加えて他国からの交渉を受けるような者でもないからここの管理者としては最適じゃ。
しかしながら、どこかで儂らの生活見てると言われると、のぅ?
王族としての部屋や便所、風呂場などの説明を受ける。
そういえばメイドや執事たちの風呂もあるらしいの。そっちは二階の中央部にあるらしいが。
位置的には謁見の間の裏側にあるらしい。とはいえ分厚い壁が間に挟まっとるから壁を破壊して侵入者が来るようなことはないそうじゃ。
王族の部屋を確認した後は、秘密の通路の案内じゃ。サラディンは知らない方がいいとか言っておったが次期宰相じゃし知っておいたほうが良かろう。
王族以外知るべきじゃないというのはわかるがの、ロゼッタ嬢とサラディンは次期王であるエリオットの部下となるべき信頼できる者たちじゃ。
しかし、パンフレット? という地図を貰って見てみたが、王族路多すぎんか?
迷わないように各所に案内図まで置かれておるんじゃが。
いや、もちろんこの中を通れるのは王族だけじゃし、案内図を見るのも王族だけなんじゃがの。
はー、なんというか親切設計過ぎて逆に不安になるわい。
しかしここ、どこまで続いておるんじゃ?
この先については書かれておらんぞ?
「ロゼッタ嬢、この先はどこに通じておるんじゃ?」
ちなみに、王族専用路、真っ暗かと思えばそうではなく、魔力灯はついておるので入り口で王族の魔力を通しさえすれば一人分の専用通路を明るく照らしてくれるのじゃ。
よいのぅ、ここ、儂ら王族が許可した者も連れてこれるようじゃし、逢引に持ってこいじゃ。
「グラン? 今変なこと考えなかったか?」
「はは、まさか? それでロゼッタ嬢、この先は?」
危ない危ない。クリスめ変に鋭いではないか。
いや、別にやらぬよ? やらぬのだが、そういうことにも使えるかもと、じゃな。
「この先は外ですね。城下町の兵舎に繋がっている場所です」
「兵舎にでるのか?」
「はい、分岐点がありますので、まっすぐだと平民街兵舎。右に折れた場合はさらに歩き続けることになります」
「その先は?」
「邪神洞窟最下層に繋がっております」
「どこに繋げておるんじゃっ!?」
「いや、そうでもないぞグラン。邪神洞窟の最下層といえばダンジョン核のアステル殿が管轄しているはず。つまりロゼッタ嬢の庇護下施設であり緊急避難先としては最高級の避難場所だ。まともに向かうならば100階層攻略を行わねばならんし、王族路を無理に通るならばトラップの群れ。さらに辿り着いた先はアステル殿のレベル300前後のボスが待ち構える邪神洞窟最下層だ」
「じゃが、儂でも300レベル程度ならワンパンで倒せるぞ?」
「父上、ロゼッタ嬢に毒され過ぎです。普通の兵士はレベル100もありません」
ああ、そういえば!?
え、つまりここまで逃げ込めば実質殺されることはない!?
しかもミノタウロス倒せば肉も手に入るし、アステルに頼めば食事関連だけでなく衣食住可能!? あれ、ここってもしかして……隠し別荘に最適なのでは?
「ダンジョンに住もうとするなよグラン?」
「はは、なんのことかのぅ」
終の棲家、ここでもよい気がしてきたのぅ。
「では一度戻りましょう」
「あ、そうじゃの、さすがにこのまま町中に姿を現しても意味がないし、戻るかの」
そうじゃった。今はただ王城の説明受けとるだけじゃったわい。
儂らはロゼッタ嬢に案内されてきた道を戻る。
王城三階に戻ってきた儂らは、そのまま二階へと戻る。
二階には中央部に謁見の間、側面は別の階段から従者たちの食堂や浴場施設があるらしい。
儂らは行くことがないので案内はしなかったらしいが、気になるなら後で見に行ってみてください、とのことだ。ロゼッタ嬢から説明はないらしい。
「ふぅ、なんだか濃密な午後じゃったわい」
謁見の間に帰ってきた儂はふらふらと玉座へと向かう。
多少形状は変わっておるがそれは内装のみ。玉座の座り心地は今までと一緒らしい。
「なかなか変わってる場所が多かったな」
「あ。変わってると言えばここの玉座ですが……」
どすっと座り込んだ儂、ひじ掛けに腕を載せてふーっと深く体を持たれかけた瞬間じゃった。
カチッとひじ掛けの裏にあったボタンのようなものを指で押してしまう。
「ん? ここにもあるのか?」
「はい、一応浪漫的なモノがいろいろな理由で取り付けられなかったので」
ブンッと目の前に現れる映像。
ナニコレ?
竜珠を壁に転写した時のような映像が空中に映し出される。
その画面に映っているのは我が王城が左側、右画面には王城から見たはるか遠くの映像。
なんでこんなもんが?
あ、城が、城の最上部がなんか動いとる!?
え、なにアレ?
なにこれ、ちょっと、なんか砲塔みたいになっとるんじゃが?
うぃんうぃんうううううう、とかなんかため込んどるんじゃが!?
ど、どうすれば、どうすればいいんじゃ? ボタンか? ボタンを押せば止まるんか?
非常停止はどこじゃ? ここか?
カチッ
「で? 何をやらかした?」
「いやー、ロボット化すると内部の人が大変なことになりますし、移動要塞は城下町どうしようという話になりますし、いろいろ考えた結果、長距離型固定砲台にすることにしました」
「長距離型……」
「固定……」
「砲台?」
え。待って。待って、これ、まさか……
「ちなみにこれも玉座に座れる陛下にしか使えないボタン式の……あれ? 起動してる?」
あ、でちゃう……




