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1096話、シクエス、敵情視察

SIDE:シクエス


 ラコッティーノの実家である総合店は、確かにかなりの品揃えだった。

 遠く離れた国の新商品なども抑えてあり、見る人が見れば確かに有用な店なんだろう。

 でも、なんというか……一般人には不要かな?


 平民にとって必要なモノは他の店で十分買えるものだし、ちょっとご褒美に高級品を、と思う人がいてもわざわざこの店の商品を買おうと思うようなものがない。

 品揃えはいいのだ。いんだけど、こう、なんというか似たようなものが多かったり、用途不明なのがあったり、これはってものがないのでわざわざここで買う意味がない。


 ケロちゃん商店の方がよほど高級店に思えるし、珍しいものならプライダル商店がある。

 日用品は他の店でいいから、ここにはまとめて買い物を終えたいと思う人か暇つぶしの人がやってくるくらいだろう。

 それは閑古鳥が鳴くというものである。


「ラコッティーノ君、あの、言いにくいんだけど……」


「ナニかなロス君」


「資金繰り、大丈夫?」


「……HAHAHA! 君が心配することじゃないさー、はは……実は結構ヤバいんだ」


 最後だけ声量落として素の顔見せたなぁ。

 

「君たちに来てもらったのも実際にウチの店の批評をしてもらいたくてねぇ。ご覧の通り、人の入りが少なくて赤字が続いているのさ」


「え。そうなの!?」


「なんとなくそうじゃないかと思ったけど、ヤベェじゃん」


「そうなのサー。パパンもいろいろ手は打っているんだけどどうにも現状を変えられなくてねぇ。改善すべき点があるなら是非にご意見いただきたい」


「う。うーん、じゃあ、とりあえず。僕が思ったのは、外装に金ぴかは平民には入りづらいかな」


「あの金像取り壊したらどうだ?」


「オル君。それだけは絶対に出来ないな。あれはウチの象徴だ」


 あ、そうなんだ。

 多分あれ撤去するだけでも十分すぎる集客になると思うのに。

 純金だったら資金の足しにもなるし。


「ともかく、何を変えればいいのかがわからなくてね。ただ、譲れないものもあるからそれ以外の変更点を頼みたい」


「そういわれてもなぁ。とにかく金像のインパクトがあり過ぎて二の足踏むのが一番だろうし」


「んー、ご主人殿に頼むのが一番のような?」


「やめて差し上げなさいウルスハさん。ロゼッタさんなんて呼んだらこの店原型留めないわよ」

 

 ロゼッタさんどんな酷いことするんだろう。

 というかアルマはロゼッタさんの何を知ってるんだろう。


「俺らが勧めるとすりゃ、商売敵かもしれんがプライダル商店見学してみたらどうだ?」


「敵対店舗をかい? パパンは従業員を向かわせてやったみたいだけど……あそこは業務の仕方が違いすぎて参考にならないといわれたよ」


「ラコッティーノが直で見た方がいいだろ。何がどう集客に繋がっているのか、商売人視点と従業員視点は違うだろ」


「なるほど! 一理あるデース」


 オル君の言葉で、私たちはこの後プライダル商店に行くことが決まった。

 ひとまず三階まで順に見学して、食事もここで済ませておく。

 正直、三階から見える景色が売りらしいんだけど、吹き抜けだから、なんというか、もうちょっとこう、なんかできないかな?

 夜中や夕方は戸を使って遮るらしいから普通に外見えなくなるらしいし。


 食事もおいしいと言えばおいしいんだけど、量は少ないし、この金額で食べるにはちょっと物足りない感じはする。

 貴族食程の豪勢さを出すと貴族が来てしまうので対応できる職員を雇わないといけなくなったり面倒になるそうで、そこまでに至らない料理を出しているそうだ。

 でも景観はいいのでちょっとした外食には、まぁいいのかな?


 冒険者たちは大衆食堂で沢山食えた方がいいし、稼ぐ冒険者は貴族街の店に行くからこういう中途半端な店に来るのは素行の悪い金持ち冒険者とか、金回りのいい商人とかくらいだろう。

 一般人が来るには敷居が高い。

 私たちについても周囲の人間がなぜ学生がここの食堂に? みたいな視線を向けてくるし。

 一応、聖女と王族がいるのよ? 位的には普通に食事していてもおかしくないメンツだからね。

 私はなんちゃって王女だけども。


 ラコッティーノの店を後にしてプライダル商店に向かう。

 前にも来て思ったんだけど、ここってホント大盛況よね毎日。

 なんでこんなに人の流れが途切れないんだろ?


「オゥ、人多すぎません?」


「ふ、プライダル商店はいつもこんな感じだぜ」


 なぜか胸を張るオル君。

 腕組んで仁王立ちで鼻を伸ばすようにふんぞり返る。


「いつ見ても大盛況よね。どうなってんのこれ?」


「えっと、ですね。リピーターが多いんです。朝は冒険者が冒険前に必要なモノを買っていって、昼前は市民が買いに来て、昼は業者さんが休憩がてら来て、昼から夕方までは親子連れとかが来て、夕方からは帰ってきた冒険者とかがごった返して、他のお店と違って夕日が落ちる前に店を閉めるので閑散とした時間帯がないんです」


 ロス君の説明にアルマともどもへーっと納得する。

 時間帯によって客層が違うのか。


「ちなみに、客層に合わせて店頭に置くもんも多少変えてんだ。用途にあったものを置いてるってことだ」


 つまり、一番必要としている人に必要なモノが買えるようにしているわけか。よくそんな何が売れるかみたいなのわかるね。

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