1092話、ロゼッタ、もうやだこいつら
「しかし、何もしないようにしてもらうことが願いと言われても、俺たちとしてはなんつーか、誠意を見せたいっていうか。何もしないってのもなんかこう、なぁ」
何の話かって言えばライアネリオ君へのお詫びである。
ライアネリオ君としては襲わないでくれればそれだけでいい。という話なのだけど、兵士たちからすればそれだけでは誠意を見せたくとも見せられない、ということらしい。
「けどよぉ、誠意を見せるっつってもほら、俺ら基本何も持ってねーじゃん。竜滅姫に食料貰ってるわけだし、お詫びの品なんてもんはもってねーぜ」
「かといってそこら辺で拾ったもんを誠意だと言って渡すなんてのぁ、殴り殺されても文句言えねぇしなぁ」
「なら料理とか?」
「男所帯だぞ? 兵士の料理なんざ煮るか焼くかだろが。ライオネルの食堂で泣き喚いたのは忘れたか?」
「喚いてねぇだろ!? しかし、そうか。俺らの料理なんて手の込んだ料理とは呼べねぇからなぁ」
「他に何ができるか、つったら兵士としての訓練くらいだな」
兵士たちがそれぞれ考え始め、あるものは特技を提唱。しかし他の兵士が否定する。
その程度では彼の被った被害に報いることなどできないと。
ふむ。真剣にライアネリオ君に誠意ある謝罪がしたいというのなら、私も何か考えてみるか。
うーん。彼らにできるライアネリオ君への罪滅ぼしねぇ。
ライオネル王国であればプライダル商店の商品を送れば喜ぶとは思うんだけど。プリンとか好きそうだし。
でもこの島で、となると、あ、そっか。
「皆で手作りの品を送るとか?」
「手作り、っすか? ああ、工芸品とかを木や石で作ればいいってことですか」
私のフォローに皆して考え出す。
拾った貝殻を使うのは? 木彫りの熊とか? 石で包丁とか。いろいろな意見が出るが、どうにも決まらない。自分たちでそれができるのかとしり込みしているようだ。
いままで兵士としての訓練しかしてこなかったから不器用なモノしかできそうにないんだろう。
それでも、なんとか作ってみようということで、思い思い作ってみることにしたようだ。
ライアネリオ君が困った顔でこっちを見てくるが、これはあきらめてもらった方がいいよ。
「あの、僕だけ何もしないのもなんかその……」
「君が作っても意味がないでしょ。君への誠意を見せたい皆が君のために作るんだから」
「そういわれても……」
いらないよねぇ。木彫りのこけしとかもらっても。
あ、でもこけしかぁ。なんか作ってみたくなってきたなぁ。
暇があるときちまちま作ってみるか。赤べことかも、いいよねぇ。
民芸品か。作ったらプライダル商店でいくらになるか売ってみようかなぁ。
それから数時間。
兵士たちは指先切ったり、石と石の間に指挟んだりと一部大問題があったものの、事前にこの島に張り巡らせておいた回復魔法陣のおかげで誰もケガすることなくというか回復して問題はなかった。
しかし、皆揃って不器用すぎじゃない?
部隊長さん、何それ? え、ウサギ? あ、こっちの長いの耳なのか。足だと思……なんでもないんだよ?
土から土器を作ろうとしたメンバーは火魔法で作ろうとしたものだから、加減間違って消し炭にしてしまうし、石器作成メンバーは力加減間違えて割り砕くし、木彫りメンバーはすぱっと切りまくって木くずだらけだし、誰一人成功者が出てこない。
さすがにライアネリオ君もどうしたらいいんだろう、と困惑気味になっている。
「クソッ、俺たちにはこんなことすらできねぇのかよ!」
手に持っていた短刀を投げ捨て兵士は四つん這いになり己の無力を嘆く。
力は強くなった。レベルも上がって器用さも上がったはずだ。
それでも経験値が一つもない木彫りや石器造りなど彼らには難題過ぎたのである。
絶望に打ちひしがれている面々を見て、さすがにライアネリオ君もこれ以上彼らに民芸品作成はさせられないと、思ったようだ。
「あの。皆さん、本当に僕、大丈夫ですから。皆さんの誠意は受け取りましたし。ほら、今日は訓練してませんから訓練に移りましょう。食事とかの用意もしないとですし、ね?」
「しかし……」
「それに、僕だけ何もしていないのはその、気まずいといいますか。ほら、皆で訓練しましょう」
「そうだな。皆で……っ!」
「そうです皆で……ホーエンハイム隊長?」
「そうか。そうだったな。確かに、それは君への誠意がなさすぎる」
「あの、ホーエンハイム隊長?」
あれ? 隊長さん、何でいきなり鎧脱ぎだした?
って、服までなぜ脱ぐの!?
「我々は君を襲った。だが、だがだ! 私たちは、君に襲われていない。それは誠意がない。そうだ。私たちは受け入れなければならない。本当の仲間となるために!!」
すべての衣類を脱ぎ去った隊長さんは、憑き物が落ちたような顔で微笑み、両手を広げる。
「ライアネリオ君。君のすべてを受け止めよう。さぁ、来なさい」
「はい?」
「そうかっ! 確かに俺らは襲うばかりでライアネリオを追い詰めた。ならば、追い詰められる側に立たねば誠意とは言えない!!」
はい?
「ライア。俺たちは全員、お前を受け入れていなかった。誠意を見せるも何も、まずはお前の想いを受け止めなければっ。お前の不満を、お前の絶望を、俺たちに吐き出してくれっ」
……もうやだ、こいつら。
ライアネリオ君がどうしたらいいですか、とこちらを縋るように見てくるが、薄く微笑み浮かべて知るかと思念を送る。
私は即座に転移した。あとに何が起こったかなんぞもう知らん。




