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109話・ロゼッタ、たった一言で仕事が増えるマジックが披露されたんだよ

「ロゼッタ入りまーす」


「帰ってくれたまえ、俺はまだ死にたくない」


 なんでさっ!?

 ギルド長室にやってきたら速攻追い返されたんだよ。理由が死にたくないってどういうことかな?


「いや、今回の調査による報告なんだよ? ギルド長に告げないといけないことがあるんだよ」


「嘘だ。そう言って私を殺すつもりなんだろう!? そうなんだろう!? 朝ペレーラに必死に介抱されてようやく正気に戻れたのに、また精神を殺しに来たんだろう! もうゆるしてくれっ」


 えー。


「どうなってんのロゼッタさん?」


「いやー、ギルド長が正気度不足なんだよ。まいったな」


「ペレーラはん呼んできたえー」


 下も忙しそうだったから断りだけいれたんだけどキーリが気を利かせて連れて来てくれたようだ。


「もう、あまりギルド長を苛めないでくださいロゼッタ様」


「えー。心外なんだよ。私は別に酷いことはしてないんだよ? ただ買い取り用の道具出したり、報告しただけなんだよ。あ、そういえば買い取り途中だったんだよ」


「仕方ないので報告、私も聞きますね。はぁ、なんでこんなことに……」


 なんだか私が悪者扱いなんだよ、悪役令嬢だからって無実の罪はだめなんだよ?

 私とキーリがソファに座り、対面にペレーラさんとギルド長が座る。

 ギルド長は何故私と視線を合わせないのか。


「えーっと俺らもご一緒させていただきますね」


「ロゼッタさ……んが許可しているのなら問題はないでしょ。いいですよねギルド長」


「好きにしてくれたまえ」


 ギルド長が投げやりなんだよ? ちゃんと仕事しよう?


「では、今回引き受けていただいた仕事はD級の森周辺の調査依頼でしたね? ギルド長への報告があるとか?」


「はい。私とキーリで森の中の生態調査をしていましたところ、コボルトの集落を発見致しましたの」


「コボルトの集落だと!? 何匹居た!?」


「推定やけど600くらいやなぁ」


「小規模だが無視できない集落だな。すぐに討伐隊を」


「お待ちくださいギルド長。まだ報告の途中ですわ」


「え? いや、討伐隊……あ、嫌だ、なんかこの先聞きたくない」


 何かを察したギルド長は両耳を塞いで身体を丸め、ソファの上に三角座りしながら震えだした。

 いやいや、なんでそんなに警戒してるの?


「続きを、どうぞ」


 ペレーラさんも何かを察したようでごくりと生唾のんだあと、無言で眼鏡をふきふきして掛け直すと位置を直して私に視線を向け、促した。


「えーっと、コボルトにこちらとの意思疎通を確認いたしました。ここの森に住むコボルトは亜人である可能性が出て来ました」


「ぐほぁっ!?」


「ギルド長しっかりっ」


「亜人?」


「亜人だって!? それ、俺ら今まで人を殺してたってことに……」


「お、落ち付いてくださいライリーさん、グレンデルさん」


「しょ、詳細をお聞きしましょう」


 ペレーラさんに促され、私はコボルト達と出会った時の事を出来るだけ詳しく告げる。

 ギルド長は既にグロッキーだ。

 なぜかリリンさんが回復魔法を掛けだしたけど、怪我してる訳じゃないから回復しない。


「つまり、言葉は喋れないモノの、人間の言葉を理解し、一定水準の文化を持ち、民族を守り敵に立ち向かうだけの感情もある、と」


 私はペレーラさんに頷く。

 すると、ペレーラさんが頭を抱えて虚空を見上げた。


「今までの通説が一つ翻ってしまいましたね。ギルド長。国王陛下に報告書。それと交渉使節団の派遣要請。ギルド本部への報告書も作ってください、当然こちらも確認のための使節団派遣要請付きです。あと商業ギルドにも同様の報告と使節団派遣要請。それからギルド員にコボルト討伐部位買い取り取り止めの徹底と冒険者への布告。取引貴族へのコボルトドロップアイテム停止の旨を書類で先行報告、面会予約も必要ですよね? えーっとそれから……」


 お、おお、なんか私の一言だけでギルド長の仕事が山のように増えたんだよ? おかしいな。


「ああ、やはり死ぬのか、私は死ぬのだな」


 爪を噛みながら血走った眼で告げるギルド長。追い詰めたつもりは無いんだよ?


「まだ死なないでください。血反吐吐きながらでも全ての仕事をこなさないと死なせませんよ」


「うぅ、頑張る。ぼくがんばる」


 一人称ぼくになっちゃった!? 精神がおかしくなってる!?


「えーっと、ペレーラさん、買い取り、しない方がいいですかね?」


「仕方ないのでギルド長は書類お願いします。ロゼッタさん、買い取りについては私が、ギルド長の負担を考えて別の部屋でやりましょう」


 あはは、お願いします。

 そうして私達はギルド長室を後にする。

 扉を閉めたその瞬間、ばさぁっとなにか無数の紙が宙にばらまかれる音とともに笑い声が聞こえ出した。


「あは、あはは、あはははははははあばばばばばばっいっそ、殺せぇぇぇぇひゃははははははっ」


 何処に正気度消失トラップがあったのか……おかしいな。私全然そんな気なかったんだよ?

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