10話・ロゼッタ、買いモノをする5
吹っ掛け魔道具屋のあと道具屋に寄ってみる。
次の魔道具店へ向う道の途中にあったのだ。
ゲームとは違って高級日用雑貨も売られたそこは見知った物が少なくて、不便さを感じる雑貨店だった。
これが高級雑貨というのなら、平民の雑貨とはどんなものなのか。
そんな事を思いながら二つ目の魔道具店にやってくる。
「おおぅ!?」
店に入るとまさかの店員さんに思わず仰け反るように驚いた。
綺麗な顔立ち、まさにゲームでいうなら攻略対象になっていてもおかしくない美形男性。
右目にはモノクルだろう、片方だけのメガネというか虫めがねというか、多分そんなモノだろうと思われる道具を装着したお兄さん。
耳が、耳が長いです、耳長族であります、隊長! 隊長って誰か知りませんけどもっ!!
やばい、テンション爆上げじゃん、マジ神ってる! あげぽよですよ。春はあげぽよ! エルフよエルフ! 男性の場合はエロフになると男×男になっちゃう? むしろ攻められ役なのお兄さん? いやん、それはそれで、腐腐腐。
でゅふふ……じゅるり。
「お、お嬢様、正気をっ、流石に人の前ではヤバいですよその顔っ」
「はっ!? し、失礼」
突然の出来事に呆然と引いていたエルフのお兄さん。
美形ながらも気難しい顔をしたままのエルフお兄さんは私達の様子を見ても気難しい顔を崩すことは無かった。
いや、私が意識取り戻して一瞬、辺りまではちょっと目を見開いて引いてたけどね。どれ程ヤバい顔してたんだ私は? もしかして犯罪臭漂ってた? 臭くないよ? 乙女だよ? 花も恥じらういい匂いだよ。
「それで、ご令嬢がた、何か買いに来たのではないのですか?」
「あ、そうでした」
溜息交じりに告げるお兄さん、ちょっと、お客さん相手に溜息はダメだと思うのよ? 迷惑客には溜息もでるよ? でも私クレーマーじゃないんだよ?
とにかくお兄さんの眉毛がぴくんと動いちゃう前にお店の商品見るとしよう。
結構面白そうなのいっぱいあるね。さっきの手揉み店長なんかより品ぞろえもいいし、値段も手ごろらしい。
リオネッタが覚えている値段と照らし合わせても丁度いいくらいである。
値段自体も棚にちゃんと書かれているし、棚ごとに置かれた物がどういうものかも説明が書かれている。
親切設計だ。マメな性格が滲みでています。エルフは高慢野郎じゃなかったのでしょうか? 素敵です。クール系ツンデレ男子な気配がします。
これはもう腐でしょう、腐。腐腐腐の腐っ。
「そこのメイド。このお嬢さんは……」
「す、すいません、本当に申し訳ありませんっ」
「……っは!?」
あ、しまった、また変な顔してたのか。
やばい、エルフお兄さんの好感度が降下中だ。やばいよやばいよ。私ったら大ピンチ? これはもうプレゼントで好感度あげるしか無かったり?
でもお店の人だよ? プレゼントは全部買い取りなの? プレゼントのつもりが売却されちゃうんだよ?
「お嬢様ぁ、お願いですから普通にしてくださぁい」
おっとリオネッタが泣いてしまった。おかしいな、普通にしていたはずなのに。
「失礼しましたわ。こちらをくださいまし」
「魔法の杖か。いいのか? それは初期も初期、お嬢さんの魔力ならもう少し高価な物でも良いと思うが?」
え? 魔力結構あるの?
ソレは驚き。あ、でもロゼッタってば悪役令嬢だった訳だし暗黒魔法使えても問題無いわよね。
そうね、どうせなら少し高価な物にしてもいいかもしれない。
ジュエルワンドというものに変えておく。
お金自体は適正価格なんだけどなんだか上手く乗せられて高い物買わされた気がするぞ?
もしかしてやり手?
これはもうエルフお兄さんの掌でころころ転がされてるの?
なんてこと、私は既に男に貢がされてるよ。こいつぁ悪い男だよ。
「お嬢様ァ!」
「おっと失礼。ではまた来ます」
「また、来るのか……」
いやん、そんな溜息吐いて二度と来ないでほしいみたいな顔をしないでほしいですな。
私はちゃんとした客なんだよ? クレーマーじゃないし悪い悪役令嬢でもないんだよ?
プレゼント作戦もダメそうだし、地道に会話しかないね。
毎日の会話が好感度をあげて行くんだよ。
はて、毎日会話しているリオネッタの好感度はあんまし上がってない気がするんだよ?
もしかして好感度上昇値って殆どないのかな?
やはり選択肢が出ないと上昇はないんだよ。
一応、社交辞令としてまた来るといい。なんてことを言ってくれちゃったので遠慮なく会いに来ることにしよう。
ターゲットロックオン、なのだよ。
エルフのお兄さんゲットは時間の問題なのさ。
グッドエンド目指して会話しに何度だって来ちゃうんだぜ。
覚悟しろエルフのお兄さんっ! でも攻略対象ではなかったはずなんだよ?