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1085話、ペルグリッド、出ていくわ

SIDE:ペルグリッド


「そういう訳だから、僕はこれ以上この国を広げる気はない。ペルグリッドさんもナッシュさんのところに行くといいよ」


「契約違反だわジームベルクッ!」


 冗談でしょう! まだ半分も世界征服してないわよ! これで満足!?

 あの女を手に入れたのがそんなに嬉しかったわけ? ミリアみたいなどうでもいい女が私よりも素敵?

 せっかく私の処女をくれてやったってのに、何よその態度はッ!!


「ミリアもミリアよ! 本気なの? こいつはすでに童貞じゃないのよ! 私と寝たの! ここに集まった側室候補たちとも何人か寝たのよ!」


「あー。私そういうのあんまし気にしない方なので」


 頭を掻きながら告げるミリア。

 何よ何よ何よっ、自然と見つめ合ったりして、そんなに私が邪魔なのかっ!


「ペルグリッドさん、ミリアさんと結婚を視野に僕は内政を行っていく予定だから、これ以上を求める君の世界征服はこの国以外でやってくれ」


「私を慕う男どもは連れて行くわよ?」


「ああ、わかってる」


 この国の兵力のほとんどがいなくなるのよ? 本気で言ってるの? 大国も目前なのに、ここで終わる気?

 絶対に他国が攻め込んでくるわ。そして徐々に追い込まれて縮小していくわ。

 それが分かってるのにこんな小娘を選んで私を放逐?


 ありえないわ、采配ミスよ。

 今までどれだけ尽くしてやったか!!


「そもそも、僕の目的はミリアさんを妻にするために彼女の条件に見合う男になること。君の目的はナッシュさんを夫にすること、だっけ?」


「違うっ。私に振り向かなかったナッシュを魅了して私に夢中にさせるのよ!」


 何が違うの、ってなにもわかってないわねこの小娘は。

 いい、ミリア。妻とか夫とかどうでもいいの、肉欲以前の問題でナッシュは私を拒んだのよ。

 許せる? 今まで欲しいものはすべて手に入った私が、たった一つだけ手に入れてないもの。それがナッシュなの。だから私はナッシュを手に入れるためなら……あら? ナッシュを手に入れるのにジームベルクとかファーガレアって、あんまり関係ないんじゃない?


 そうよ、よく考えれば全く不要だわ。

 私にはついてくる男どもがいるのだし、こいつらを踏み台にして国を立ち上げてしまえば、いえ、立ち上げるよりも今ある国を乗っ取る方がいいわね。

 この近くでちょうどいい国は……そうだわ、プライジャコリャ国なら王が馬鹿だから御しやすいわね。


「はぁ、仕方ないわね」


「わかってくれたペルグリッド」


「ええ。覚悟しておきなさいジームベルク、私を放逐すること、後悔させてあげる。それまでせいぜい滅びないことね」


 悔しいけど、ここは私にとって不要な国だ。

 いる必要はなくなったのだからさっさと国など捨ててしまおう。

 ミリアとジームベルクに踵を返し、私は足早に立ち去る。


 誰も彼も私のこと邪魔もの扱いして。

 ロゼッタもジームベルクも見ていなさいっ。

 この私が、ペルグリッドが世界を征服した暁には、お前たちを奴隷にして地獄の責め苦を味合わせてあげるっ。

 私は絶対にあきらめない。何度敗北しようとも、何度全てを失おうとも、必ず世界を手中に収め、お前たちを屈服させてみせるわ。


「おお、ペルグリッド、今日は随分お怒りのようだが、どうしたんだい? よかったら僕の部屋で」


「ベルーチ、ペルグリッド親衛隊だっけ? 全軍に通達。私はこの国を出る。付いて来たいならすぐに準備を整えなさい!」


「なんと、あの愚王をついに見限るのですね! 僕は当然ついていきますとも。ああ、愛しきペルグリッド、僕の愛すべき君よ」


 そうよ。男なんて体で誘惑すればこのように簡単に堕ちるんだから。

 もともと有名な国の有名な英雄だったベルーチでさえ、私の美貌の前には骨抜きになっていいなりになるのだから。


 私は部屋に戻ると自分の持ち物の中で絶対に必要と思うものだけを荷物に詰め込む。

 あとのモノ? 今の私には不要なモノよ。欲しければその時にまた手に入れればいいのだから。


 必要なものはすでに持った。

 自分の部屋から城門前へ。

 すでに兵士たちが勢揃いしており、私の到着を待っていた。


「総員2000名、すでに準備完了してるぜペルグリッド」


「ついに国を乗っ取るんだよなペル」


「いつでもあなたのために死ぬ準備は出来ている」


「さぁ、命令を、俺に殺せと命じてくれ我が聖女!」


 ふふ、そうよ、私は美しい。この美貌に群がる男どもがいれば世界を手中に収めることなど容易なのよ。

 待っていなさいロゼッタ、ジームベルク。そしてナッシュ、あなたたちを必ず私に跪かせてやるわ。

 それまではゆっくりと、人生を謳歌するといいわ。

 もう二度と、謳歌できる人生なんて訪れないのだから。


「全員、聞きなさい。私はこの国を捨て新天地で世界を目指す。付いて来たい者だけ付いて来なさい」


 言葉はそれだけ。

 私が城門へと歩くと、彼らは左右に避けて道を開ける。

 そして私を先頭に、そこに集まった全ての男たちが私に続くのだった。

 さぁ、ここからが私の世界制覇への道。阻むものは全て……潰してやるわ。

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― 新着の感想 ―
[一言] おおー、すごい。けどペルねぇじゃ…あれ?神様の加護はもうキレてます?
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