1043話、ロゼッタ、なんで呼ばれたかわかるか? A.わかるわけないんだよ
ふふふんふふふん、と鼻歌歌いたいくらいに毎日を謳歌していた私。
正直イベントとかフラグとかいらないからこういった日常こそ大切にしたいんだよ。
いうべきことのないようなどうでもいい日々、でも思い返すとダイヤモンドみたいに輝かしい毎日。
艱難辛苦はいらないんだよ。ブラック企業も不要です。
今までが忙しすぎたんだよ。ほんとこうしてゆったりした日常を……
と、思ってたんですけどね。何の御用でございましょうか?
「ふぅ。正直私たちも呼びたくはないんだ。呼びたくはないんだがね」
「ふぉっふぉっふぉ。なんで呼ばれたかわかるかのぅ」
「わからないのでとりあえずマギアクロフト吹っ飛ばしてくればよろしいですか?」
「違うっ!? 違いすぎるからまずは落ち着くんじゃっ」
「グラン……ロゼッタ嬢にまでパワーハラスメントはしないでくれないか。彼女の場合は何するか想像つかんから後悔するぞ本気で」
「ちょっとした茶目っ気なんじゃー」
茶目っ気だろうがなんだろうがされた方は迷惑千万なんですよ。
そもそもいきなりなんで呼ばれたかわかるか? とか相手に対してマウント取ってくる奴は上司であってもブラックリストに入れると決めてるんだけど。王様、ちょっと会うたびに殺気少しだけ飛ばしてもいいかな? かな?
「さて、とりあえずいくつか聞かねばならんことができてな。こうして謁見の間に来てもらったわけだが。学園の方には公欠扱いにするように伝えてあるゆえ出席日数に関しては問題ないはずだ」
「その分の授業や友人との交友に響きます」
「友人おらんじゃろ」
あああ、言った! 言ってはならぬことをををっ。
殿中でござる! 殿中でござるなんだよぉぉぉっ。意味は分かってないけどもっ。
「ぐぅらぁんんんっ」
「ほっ? あ、か、軽口、ほら友人同士の軽口じゃ」
「陛下と侯爵令嬢に交友関係などないんだよぉぉぉっ」
もはや涙目で両腕振り回してぐるぐるパンチしたい気分だ。
やったら竜巻起こって城が吹っ飛ぶしそこいらじゅうの人がトマト潰したみたいになるからやらないけども。やらないけどもっ。
「グランは後で説教しておく。今は落ち着いてくれるか?」
「落ち着いてますわ。落ち着いておりますのよ。錯乱していれば陛下はもうこの世におりませんもの」
「ま、待つのじゃロゼッタ嬢、今錯乱しとらんか? 軽く儂の死亡宣言された気がするんじゃが!?」
「はぁ。話が進まん。グランは黙っていろ」
「儂王様なんじゃけどなぁ……」
「それで。私が呼ばれた理由はなんでしょう?」
「うむ。いくつかあるから順に言おう。まずはサイエンスフィアの王族教育に関してだ」
確か我が国で王子を教育するとか聞いてたけど。
「教育係はロゼッタ嬢御指名だ」
「なんでっ!?」
「簡単に言えば、サイエンスフィア側としてはこれを機にロゼッタ嬢をサイエンスフィアに引き込みたいようだ。要するにどちらかの王子の正室か側室にして連れ帰りたい、といったところだな」
リオネル様がいるのに?
正直目論見自体がすでにご破算なんだよ?
「その顔もわかるがな。王族としての知識が欲しい、というのが建前である以上、エリオット殿下が王位継承に本気を出したきっかけである其方が教育した方がよいのだ」
「はぁ……」
「どうせじゃ、ライオネル大好き王子にしてやるがよい」
「グラン、そこは思っていても言うべきではない場所だ」
つまり宰相閣下も心の底では洗脳しちまえ、とか思ってるわけだ。
うむー。まぁ教育だけなら問題はないか。
「それから各国に向かわせた影から来た情報なのだが、アマリリスが滅んだらしい」
「……あそこは好戦的でしたからね。今はほとんどの兵がファーガレアで人生謳歌してますねぇ」
「うむ。そのファーガレアの王から近々我が国に来る旨が書かれていてな。正直あまり信用できんのだが……」
「ジームベルク君の目的はミリアに告白することらしいですから。おそらく迎えに来たんでしょう」
「ん? どういうことだ?」
あれ? 宰相閣下知らなかったっけ?
私は宰相閣下にジームベルク君とペルグリッドの目的を伝えておく。
正直宰相閣下からすればどうでもいい理由だけど、彼らの行動力の源は侮れないからなぁ。
特にペルグリッドと組んでる時のジームベルク君は主人公補正が掛かってるせいか雑に強い。
何しろレベル100しかなくても稀に200レベルの敵将がいる軍を単騎撃破しちゃうからなぁ。
とはいえ基本負けるから常用するようなキャラじゃないけどね。何しろ総大将だから負けたらゲームオーバー直行なのだ。よほど縛りプレイでもしてない限り前線で戦うキャラじゃないのである。
それにしても、マリアネージュからのゲーム情報もなしによくもまぁここまで拡大できたなぁジームベルク君。正直関心しちゃうんだよ。
つまり、それだけミリアにご執心って訳か。ミリアも隅に置けないなぁ。




