1018話、ロゼッタ、今年も国際会議が始まるんだよ
「では、前回議長国より議長変更の儀ー」
うわー、すっげぇやる気なさそう。
本日、今年もやってきた国際会議に出席した私は、司会となったサイエンスフィアの宰相さんのやる気ない声に戦慄していた。
この国々がいるなかで、そんな棒読みでいいんですか? というか良くあの口調で言えるな。
サイエンスフィアの宰相さんも技術肌なのでこういった会議は苦手。むしろ機械弄っていた方がいいという精神性だ。
つまり、本気でやる気が無いんだあの人。
それでも周辺の王から何のブーイングもでないのは、宰相さんがサイエンスフィアの宰相だからという一点に尽きる。
3大大国の一国だからねぇ。
ある程度はやる気なく見えても指摘はされないんだよ。
他の3大大国が声を掛ければ治るかもだけど、自分たちの時に悪意を持って指摘されかねないのである程度は許容されているのである。
しかし、それにしてもやる気ないなぁ。
というか、誰もホントに指摘しないのね。
「次に国王交替の国は……ザルツヴァッハ、カスタローレル、それから……」
うーん、小国の入れ替わりが激しいなぁ。
ザルツヴァッハはラグナ王に変わる前に国力消費し過ぎているから小国扱いされてしまっていて、カスタローレルはこの会議直前での国王交替だったので中規模国家扱いされてるけど、国力が一気に下がって小国の中でも下位の国になってしまった。
ファーガレアが躍進しているのでいくつかの国が平らげられており、だいぶ東進が進んでいるようだ。
その国力は既に中規模国家の中でも上位に食い込んでいるのだが、王が王なだけにまだまだ小規模国家ですよ。と謙遜しながらどこの国滅ぼそうか、と虎視眈々狙っているのである。
「それから、本日は世界初、魔族領の国王、パステル女王陛下がいらしてくださっております。本日は見学だけ、ということですが、人間国会議に興味を覚えてくださった唯一の魔族国ですので、皆さん是非に覚えておいてください」
うわー。パステルちゃん矢面に立たされたよ。
おっと、立ち上がって話するの? じゃあ風魔法で声拡張させておくね。
「ふむ。折角だから自己紹介でもしておくか。我はフ……おっと失礼、人族には我が国の正式名称は理解できないようでな。フリージア魔王国とでも覚えておいてほしい。フリージア魔王国の魔王、パステル・フリージアだ。本日はただ参加するだけのつもりだからそこまで気にすることは無い。空気とでも思っておいてくれたまえ」
くっくと不敵に笑って席に座り直すパステル。
さすがに魔王、堂々としてるなぁ。
一部国家が喉を鳴らして戦慄してるし。
「さて、では第一議題。いつものように、ナゲキノカルマ国の危機的状況に関してだ。本国から国際会議に救済願いが出ている」
「アルカエスオロゥ最高司祭殿、結局毎年生かさず殺さずの援助をしているようだが?」
「あの国の立て直しはなかなかに骨が折れるのだ。我が国も今年は少々ごたついてしまってな。他国への援助をしている余裕があまりなかったのでな」
「くく、聖女に逃げられたのだったか」
「いうてくれるなマギアクロフトの。信者たちが本気で後悔しているのだ。あまり追い詰めると貴国の信者が集団自殺しかねんぞ」
「なぜそうなる。まぁいい。アルカエスオロゥだけで無理だというのなら他国からの介入をすればいいではないか」
「毎年ソレを言うが、結局我が国以外介入して来んではないか。いいのだぞマギアクロフトの。貴国のあり余った作物を全てナゲキノカルマにくれてやってくれても」
「……残念だが今年は作物が芳しくなくてな自国消費だけでも手一杯だ」
「どこか、補助をしてくれる国は他にないかね?」
「補助は無理ですが、我が国の領地としてなら援助しても構いませんが?」
「チッ、ファーガレアの若造め。貴様随分と調子に乗っておるようだが、少々性急に侵略し過ぎておらんか? 我が国を狙うようであれば徹底的に潰させて貰うぞ?」
バチバチだなぁ。
ファーガレアはここ最近、スグニマケイル滅ぼして一気に飛躍したからなぁ。
既に何国滅ぼしたんだ?
といっても基本自国に取り込んで王様も宰相も登用してるから物凄い強国になってるんだよなぁ。
しかもなぜか負けた国は反抗しようとすら思わなくなる不思議仕様。これ、多分ゲーム仕様が関わってるでしょ。
「とりあえず、第一議題は今まで通り、でよかろう。次は……天竜と叛竜の問題と行こうか。正直口出しする程の事ではないのだが、見苦しい程の消耗戦というか、どういう状況だコレ?」
サイエンスフィア王も困惑してしまう現状。
まぁ仕方ないよね。叛竜王国は国が消失。家もない場所で市民が必死に生活して王国の体を成していない状況。皆生きるのに必死である。
対する天竜帝国は帝王の失態で奪還志願兵が逃げだし兵力を失った状態。
双方戦争を行い国を取り合うような状況ではないのである。
「これ、放置でいいんじゃないか?」
各国の本音はサイエンスフィア王の呟きに全てが集約されていた。




