101話・ロゼッタ、夜会に見知った顔が沢山なんだよ
そして二日が経過した。
うん、この二日ずっとキーリと二人でダンス練習だったんだよ。
あまりにも窮屈なダンスだったせいで終わった後に現代風ダンス踊りまくっちゃったよ。
ブレイクダンスしたらリオネッタが悲痛な叫び上げてお嬢様はしたないですぅっ!! と、ブレイクダンス禁止になった。
悔しかったからコサックダンスしたら死んだ眼でもう止めてくださいって言われたから仕方なく止めることにしたんだよ。
ベル貰った時に鳴らし過ぎて次の日辞表出しちゃったメイドさんと同じような目だったからさすがにこれ以上リオネッタに心労掛けるのはマズいんだよ。
本日はいつも以上にキメッキメの赤いドレスを着た私。キーリも黒いドレスで……肌も黒いからなんというか、裸? ちょっと目のやり場に困るんだよ。あとスカート短くない? 動きにくいから切った!? お母様キーリあんなこと言ってるけど良いの!? 良いんだ!? 私もミニスカートがよかったよぅ。
王城に着くと既に無数の貴族が到着していらっしゃった。
なんでも男爵や子爵など位の低い者が比較的早めに到着して、大御所は後から来るのが常識なんだそうだ。
だから私達もゆっくり出ればいいのだそうだ。
家族総出なんだよ。
お父様とお母様と私とキーリ。
皆おめかしして王城へと御到着。
お父様も普段よりきりっとしてるな。あとお母様綺麗。そして目立つ私の悪人顔よ。
「レニファティウス・ベルングシュタット様以下ご家族一同、ご来臨ーっ」
おお? なんか兵士さんの一人が盛大な声を響かせた。
ちょっとびっくりしたよ。
「ふふ、驚いたロゼ? あの兵士は貴族が来たらその名前を皆に告げる役目を持っているのよ」
つまり、誰か来たら必ずその人の名前を大声で叫ばないといけないってことか。
貴族だから名前呼び忘れたり間違えたりしただけで首飛ばされかねないから大変だね。
名誉はある役職なんだろうけど、命がけの役職なんかいらないんだよ。
頑張れおっちゃん。全員名前暗記とか優秀過ぎるんだよ。仕事辞めたくなったらいつでもおいで、私が雇ってあげるんだよ。
「主様よ。なんぞウチ目立っとる気がするんやけど……」
そりゃそうだろ。キーリの見た目はどう見ても魔族、貴族様方は普通の人間なんだよ。
キーリが綺麗なドレス着て侯爵家の一員として歩いてたらそりゃ目立つでしょ。
「あ、ロゼッタ様……」
ん? なんか今耳鳴りが……あ、フレデリカがいる。
「フレデリカも来ていたのね」
「ん。公爵令嬢、だから」
「わざわざ公国からここまで夜会に参加って、大変ね」
「一日泊まる。こっちにも家、あるから」
「そうなの? その内遊びに行ってもいいかしら?」
「滅多に居ないから、その……」
あら残念。こっちの家は夜会などで一泊する時用のものらしく、年に数回使う程度らしい。
「ケリーアは来てないのね」
「ケリーアは、失礼があったら首、飛ぶから」
なるほど。確かにそれは来させられないね。
「そちらの、魔族、は?」
「ん? あ、紹介するわ。こちら私の妹、キーリクライク・ベルングシュタットよ」
「あ、ウチそういう紹介になるんな」
にしても、フレデリカがいるってことは、もしかして……
あ、やっぱり。貴族系の攻略キャラが居らっしゃる。
サラディン・リーファナシスは父親に連れられて人物観察中だ。さすが宰相の息子、私と同じか二個程上なだけなのに、随分とまぁ大変な仕事を覚えようとしてるよね。
そういえばサラディンはあの時点で何歳だったっけ? 同い年ではなかった気がするけど三年ではなかったはず。一年の時の王子が卒業した後も普通に学校に居たし。いや、待てよ。確か私たちが卒業する時もいたよね? じゃあ別クラスの同い年!?
うわーお、まさかの同い年が既に親の仕事引き継ぎ始めているんだよ。バケモノかな?
宰相の息子は既に宰相候補になってるんだよ。近づくとなんかフラグ立ちそうだから放置するけども。
ヒロインちゃんはいるかいなっと? いや、居ないか。彼女平民だっけか。
あ、あそこに居るのは我儘伯爵のエレイン・ヒールロッドだ。
付き人さんにめっちゃ命令してる。我儘だなぁ。
しかも優秀じゃないと気が済まない性格だから礼儀云々は凄いきちっとしてるんだよ。
我儘だけど貴族としては優秀だから手に負えないんだな。
あちらに居るのは、げぇ、ヤンデレ伯爵令嬢デリーラ・ガラルド。
ビル・マークレンと二人でなんか良い雰囲気作っていらっしゃる。
うん、触らぬ神に祟りなし、なんだよ、フレデリカ、アレには近づかないように。
下手打ったらデスゲーム強制参加でホラー映画を自分で体験することになるんだよ。
クランツ・ヒュッケインとパラミツィア・ロンデブールもいらっしゃった。
うん、この二組には近づかないんだよ。キーリも近づいちゃだめよ?
多分邪神相手だろうとドロボー猫には死を届けちゃうんだよ。やばいな。