99話・ロゼッタ、腹の探り合いとか面倒なんだよ
「上を目指す気は無いか?」
上? 何処の上?
「リオネルと結婚するとなれば第三王子の嫁。国王になる可能性はまず無い、兄上が居るし、兄上に何かあっても俺が居るからな。そうなると、公爵となるくらいだな。リオネル次第で侯爵に婿入りという可能性もある」
ウチの家督を継ぐってことね。その可能性も高いか。ウチ一人っ子みたいだし。
と、いうことは、目指す上って王妃ってことね。
成る程、ゲームの世界でロゼッタがガイウス王子と繋がってたのはここでロゼッタが了承したからってことね。
ロゼッタはリオネル様じゃ満足せず王妃になりたかった。だからリオネル様をここで切り捨てたんだよきっと。
私としてはここで否と答えておきたいんだけど、ゲームと違う行動するとどうなるかわかんないよね。ここは警戒してますよって感じで煙に巻くのが良いかもしれない。
「まぁ、それはガイウス様の側室にこい、ということでしょうか?」
「いやいや、俺ではなく兄上の……正妻、とかな?」
ニタリ、悪どい笑みを浮かべるガイウス。
ヤバい、完全にこっちを仲間と見ている悪人だ。
「まぁ、御冗談を、エリオット様の許婚はマルチーナ様と聞いておりますわ。まさか、何かが起こってマルチーナ様が婚約破棄にでもなるのかしら? まぁ、恐い怖い」
「ふふ。さぁてな。そうだな。いきなりこんな話をされても信じられんよな。まぁいい。ところでロゼッタ。夜会でリオネルが誕生日となるのは知っているか?」
え? マジで!?
三日後にリオネル様誕生日!? 初めて知ったんだけども!?
ロゼッタったらこの年になっても許婚の誕生日祝ってすらいなかったとか……
まぁ、リオネル様も誕生日は城で過ごしてたみたいだし、お父様が誕生日祝いは城に送ってたんだろう。
「はい、知ってますわ」
嘘です知りませんでした。見栄張ってしまいましたわ。
「クク、やはり下調べは済んでいるか、ますますいい悪女だな」
今女って言った筈なのに悪女って聞こえた気がするんだよ。
「9歳になるってことは各町村へ廻ることになる。王族としての初仕事だな」
へー、地域回りって奴かな?
「当然、護衛も居るがな、魔物は出るし野盗も出る。王族としても一番命の危険がある危険な任務という奴だ」
本来であれば、精鋭兵がしっかりと護衛してくれるんだろう。でも、多分、その時リオネル様に付いてくる兵士は死に要員。あるいは、ガイウスが用意した……暗殺者!?
ヤバいじゃん!? ど、どうしよう、これ、もしかしてついに来ちゃうの!? リオネル様暗殺計画。
ど、どうにかリオネル様を助ける方法、あるかしら?
キーリを護衛に付ける? いや、でも、キーリ悪目立ちするしなぁ。
なんとか、考えなきゃ。
暗殺は阻止するしかないんだよ。
でも、ソレを悟られるとマズいんだよ。
「まぁ、リオネル様が危険な任務に就かれるのね、婚約者として鼻が高いわ」
ニヤリ。微笑んでみる。
すると、ガイウスがにやりと野生味溢れる笑みを浮かべた。
「クク、そのような笑みを浮かべて鼻が高いとは言いようだな。まぁ、任せておけ」
何か満足したみたいでガイウスが立ち上がる。
「今日はお前の意思を確認しに来ただけだ。俺の予想通り、いや予想以上だった。結果は楽しみにしておいてくれ」
いや、待って。今の会話で一体何を感じ取ったの!?
どう見ても私を悪者として認識しちゃってない?
微笑んだだけなんだよ!? あ、私の笑みって悪人面になるんだった!?
ということは、今の笑みはリオネル様暗殺を肯定するような笑みになっちゃってたってこと!?
うわー、ってことはもう最初の見回りでリオネル様暗殺計画発動しちゃうんだよ!?
どうしよう、何かいい方法、とりあえずリオネル様の外出予定を把握するのが一番なんだよ。
後は……キーリやボーエン先生と相談しなきゃ。
あと三日後の夜会とやらでプレゼント用意したいな。
誕生日だし、お披露目会みたいな感じになるんだよね、お父様に聞いてみよっと。
ガイウスが部屋から出て行く。
さすがに王族だし、見送りしたほうがいいよね?
「ガイウス様」
「なんだ?」
「あまり目立つようなことはやらないでくださいましね?」
「はは、当然だ。これまで用意して来たんだ。バレないようにするに決まってる」
上機嫌で家から出て行くガイウス。お付きの影さんたちもさっさと引き上げていった。
さて、どう動くんだろうなぁ。あんまし暗殺とかに動かないでほしいなぁ。
今回の行動を阻止したとして、その後もどうなるか分かんないんだよね。最悪、リオネル様には命狙われてる事伝えた方が良いんだろうか?
いや、下手に騒いでガイウスが闇に潜み出したら手が出し辛くなる。
ここは相手の出方を伺ってからリオネル様を守るのが一番良さそうなんだよ。