拒絶と後悔。
教室に着いて、席について、僕は言う。
「ん~、そういえば、僕以外のやつとクラスで仲良くする気はないのか? はっきり言っちゃうけど、僕、このクラスに君以外に友達いないよ?」
「ん~、別にいいよ。だって、みんなもうグループできてるでしょ?」
「ああ、でも、友達は多いに越したことはないからね?」
「まあ、遠山くんがいるし、大丈夫だよ。学校生活、別に友達少なくても大丈夫じゃない? 私は、遠山くんがいれば十分、楽しいし……」
そう言われて嬉しい気がしないでもないが、やはり、僕以外とも仲よくすべきだ。
なにせ、僕はたいして出世する見込みもないし、将来的に価値のありそうな人間ではない。
将来の夢すら持たない僕では、なんとも、将来性に不安しかない。
だから、彼女は僕から離れるべきだ。
「ああ、でも、やっぱりコネは持っとくべきだぞ? 僕は、将来性に見込みもないし、将来的に力を持ちそうなのと付き合った方がいい」
「え……」
「いや、春山を嫌いって訳じゃないんだ。そもそも僕が誰とも付き合いを持っていないわけだし」
「いや、別にそんなこと思ってないけどね。う~ん、やっぱり、打算的に人付き合いしたくはないかな……」
「そっか。まあ、それが普通なんだろうな……。たださ、そんなにいっぱい関係を作っても、どうせ三年、短ければ一年でなくなっちゃうんだよな……。だからさ、僕は、できるだけ関わりを持たないようにしてるんだ。その代わり、一緒にいたいと思えるやつとは、できるだけ離れようとしない。だからさ、春山は、僕と一緒にいると、交友関係が広がらないと思うんだよな」
「だから、別にいいよ。私は、友達はそんなにたくさんほしい訳じゃないし」
「いや、でも、僕がいないとき、一人になっちゃうだろ?」
「まあ、それはそうだけどね……。でもさ、いなくなっちゃったりしないでしょ? あ、それとも、もしかして、私、頼りすぎ、かな? 邪魔、かな?」
「いや、そんなことないよ。まったく、迷惑なんて思ってない」
「じゃあ、どうして急にこんな話……?」
「いや、なんとなく、なんとなくだ」
「ならよかった。私、遠山くんに迷惑がられてないかって不安だったんだ……」
「全然、迷惑なんかじゃない。ただ、たださ、やっぱり、春山は友達を増やすべきだと思う」
「え、や、やっぱり、私、迷惑なんじゃない……?」
「いや、そんなことないって」
「じゃあ、何で私を遠ざけようとするの? なんで、遠山くんは、自分以外の人と私をくっつけようとするの?」
「いや、それは……」
言えない。
だって、理由なんて、なんとなく、が大半だ。強いていうなら、僕の唯一性を守って、僕の精神に安寧をもたらすため、とかだ。
言えるわけがない。
でも、何も言わないっていうのは、相手から、つまりは春山からすれば、
「やっぱり、迷惑なんだよね。邪魔なんだよね。ごめん。もう、話さないようにするよ」
そう言って、黙ってしまった春山にかけるべき言葉を、僕は持たなかった。
ああ、やっぱり、こんなこと考えるんじゃなかったな。
教室にボッチが二人できただけだ。
誰も幸せになんてなっちゃいない。
自分から、捨ててしまった。