新しい友達。……、友達でいいんだよね?
「君も辞書好きなの?」
月曜日の朝礼前だった。
先週の疲れはもう残っていない。
全快だ。
席も、テストの時の出席番号順から先日の席替え後の席に戻っていた。
いつも通り辞書を読んでいた僕に、前の席の奴が声をかけてきたわけだ。
「え~と……?」
中性的な顔立ちだった。身にまとった制服から男だと判断できるが、何も着ていなければ判断できなかっただろう。
いや、裸だったら判断できるが。そういうことではなくて、性別の判断のつかない衣服を着用していたらということだ。
まあ、そんなことはいい。
「ああ、ごめんごめん急に。それ、辞書でしょ?」
「ああ、変だろ……?」
「そうかな。ボクも辞書好きなんだけど……。変、なのかな?」
「さあ? まあ、辞書を読むような奴は僕は自分以外見たことないしな……」
「そっか。ボクも初めてだ」
「じゃあ、少数派を変であると定義するのなら、僕らはまさしく変というわけだ」
「なるほどね~」
「ところで、一ついいか?」
「ん? なにかな?」
「名前を覚えてないんだ……。悪いが教えてもらってもいいか?」
「ああ、ごめんごめん。知らないか……。あんまり関わろうとしないもんね。ボクは木山千尋。チヒロって呼んでくれればいいよ。遠山君」
「ああ、僕もカズヤで構わない。よろしく、チヒロ」
こうやって、会話する相手が一人増えた。
これが友達の距離か?
チヒロは、距離が近い。
パーソナルスペースが狭いのかもしれない。というか、むしろパーソナルスペースがない可能性すらある。なにしろ、隣を歩いていると結構ぴったりくっついてくる。
まあそれは置いておいて、だ。
チヒロとは結構気が合う。
今日は一緒に昼食をとった。春山はカズキたちと食べているだろうが、まああいつらもちょくちょく別の友達と一緒に食べることもある。僕にだけ許されない道理はない。
それに、春山自身、あの二人とは僕抜きにしても仲良くなっているはずだ。
というわけで、僕らは二人で校舎の外で食べていた。校舎裏にベンチがあるのだ。かつては不良がたむろしていることもあ出たそうだが、今は小さな庭みたいになっている。
珍しいことに今日はパンだ。まあ、丼にすると外で食べれないからだけど。当然選んだのはカツサンド。最後のひとつだった。
「え、辞書部?」
「そう! 辞書研究会とかでも良いんだけど、ほら、辞書って高いからさ。部費が使えると、もっとたくさんの辞書を見れるでしょ?」
「ああ、そういうことか。でも、僕はもう文芸部に入っちゃってるんだよな……」
「そっか~。まあ、どのみち二人じゃ部活作るのは無理だからね」
「三人以上だったか? 文芸部も、けっこう危ういんだよな……」
「そうなの?」
「ああ。春山と僕と、一人先輩がいるだけだ。来年誰も入ってこなかったら廃部かもな……」
「どこも危ない感じなんだね~」
「ああ。そうみたいだな。よかったら入ってくれてもいいぞ?」
「う~ん、ボクはいいや。カズヤと二人で話してるくらいで十分だし」
そう言って笑うチヒロは、だいぶ可愛かった。
男だけどね!
いや、まてまて。
「男、だよな?」
「うん。そうだよ?」
「いや、笑顔めっちゃかわいいな」
「それ誉めてる?」
「ああ、誉めてる誉めてる」
「ふふっ、ありがと!」
そう言って彼は再び笑った。
う~ん、やっぱりかわいいな。
そんなことはおいておいて、だ。
僕に、幼馴染以外で初の同性の友達ができたかもしれない。
新キャラ、です……!




