どうやら、五徹をする必要はないらしい。
学校へと引き返す道中でこれからの予定を考え直してみた。
⒈金曜日までに提出物の類を終わらせる。順番は任意。
⒉土曜日に全教科の教科書とノートを見返す。順番は任意。
⒊テスト前日に、翌日の教科の復習を再度行う。理科と社会、つまりは月曜日と木曜日は一夜漬けを全力で敢行する。国語、数学、そして英語において一夜漬けは集中力を損ない、むしろ逆効果なので、日曜日、火曜日、そして水曜日は午後十時には眠る。
※一夜漬けをした場合、眠気に襲われる可能性が高いので、テストは二十分ほどで終わらせ、残り時間を睡眠にあてる。
こんなところか。
五徹する必要がないとわかってよかった。体力がそこまでない僕がそんなことをしては、さすがに死にかねなかったから、これは朗報と言える。やったね。
まあ、三教科については、授業内に身につけたことがほぼすべてと言って差し支えないし、僕は授業はしっかりと受けているほうだから、復習もきちんとすれば満点に近い点数が期待できるはずだ。
よし、とりあえずは課題を片っ端からやっていくこととしよう。
と、そんなことを考えつつ図書館へと踏み入れ、自習用に用意されている机群のところへと足を運ぶ。
しかし、ここで大変な問題に直面した。
席が空いていないのだ。一席たりとも。
そりゃあそうか。なにしろ、一度帰宅しかけたのだ。家から最も近い高校とはいえ、片道でも二十分はかかる。満席になる程度の時間はある。
さて、どうするか。
僕が少し考えていると、一人が荷物をまとめ始めた。
どうやら帰るようだ。
これはチャンス。その席へ行き、座った。若干ぬくもりの残る椅子に座り、とりあえずは数学の課題に手を付ける。
「あれ? 遠山くん?」
そんな声に横を見やると、右隣の席に、見知った顔がいた。春山だ。
「ああ、春山か。どうした?」
声をかけてきたということは、何か用事があるのだろうか。
「いや、珍しいなと思って。いつも来てないでしょ?」
「いや。家では集中できないから、家にいなくてもいい時間帯は家以外の場所でやるようにしているよ」
「え?」
「え?」
ああ、そうか。
「実は、テストの存在を忘れていて今日から始めるんだ」
「だ、大丈夫なの?」
「ああ、問題ない。提出物を金曜日までに終了させられればきっと学年一桁はいけるはずだ」
「すごいね……」
「まあ、本当は一位でなければならないはずなんだが、一夜漬けがどのくらい効くのかわからないからな。半分くらいとれると仮定すれば、国語二つと数学二つ、それに英語一つと日本史と世界史、生物と物理なら、六百五十以上は固いはずだ」
「三教科は九十点換算なんだ……。遠山くんって、頭いいんだね」
「まあ、それなりにはな。というか、僕は高校のレベルを一つ下げてるんだ。だから、さっき言ったように、一位をとれて当たり前のはずなんだが……。これは両親への言い訳も考えておいたほうがいいかもしれないな……」
「あはは、まあ、頑張ろうね」
「ああ。よし、じゃあ、課題に全力を注ぐから、解説を読んでもわからないところとかがない限り、話しかけないでくれ」
「あ、うん」
その返事を最後に聞くと、僕は課題に取り組み始めた。
地味にやさしさがにじみ出てる……。




