春山小春と席替え。
席替えです!
席替えがあることを今日知った。
遠山くんが教えてくれたわけだけれど、そういえばあるよね。
当然だよね……。
いつまでもこの席なきがしてたんだけど……。
そんなこと、あるはずないか。
残念。
私、遠山くん以外のクラスの人と話したことないんだよね。
だから、彼と離れると、けっこう大変かも。
でも、まだ離れるって決まった訳じゃないし。
うん。大丈夫……、だよね?
なんて思ってた時期が私にもありました。
今日、つまりは席替えの存在を知った日の約二週間後。
五月十五日その日。
朝礼の際に行われた席替えで、私はこれまでの席の反対側、具体的には前から二列目の窓際の席になった。
そして、だ。
なんと、遠山くんは、前まで私のいた席になった。
わ~! どうしよどうしよ。席が離れちゃっただけじゃなく、私の座ってた席に、遠山くんが……! 突っ伏したりしてたし、こう、なんか、間接濃厚接触じゃない!? わ~! きゃ~! 嬉しいような恥ずかしいような……!
いや、そんなこと……、「そんなこと」ではないけれど、それよりも、だ。
どうしよう。
私、話す相手近くにいない……。
この期に、友達を増やせって遠山くんは言ってたけど……。
ってあれ?
遠山くんがこっちに向かってくる。
どうしたんだろ?
「春山、これ、忘れてたぞ?」
彼が差し出したのは、一冊のノート。
私が机のなかに置き忘れてしまったのだろう。
「あ、ありがとう、遠山くん」
わざわざ持ってきてくれるとは、やっぱり優しいな。
「や、別に礼を言われるようなことじゃない。じゃな」
そう言うと、彼は席に戻っていった。
去っていく彼をボーッと眺めていると、不意に肩を叩かれた。
ポンポンとだ。
「わきゃ!」
突然だったので驚いて変な声を出してしまった。
幸い、席替え直後の喧騒に満ちた教室に響き渡るほどではなかったが、肩を叩いた主には聞こえたことだろう。
急になんだろうと思い、その方向へ顔を向ける。
「あ、驚かせちゃった?」
「ううん。大丈夫。ど、どうかした?」
「いや、あのさ」
彼女はちょいちょいと手招きをする。
顔を近づけると、彼女は私に囁くように言った。
「遠山君と、仲良いよね。付き合ってたりするの?」
ビックリして、少し跳ねた。
「いや、あの、友達、友達です!」
「あ、そうなんだ。な~んだ」
「付き合ってたりしません」
「まあいいや。私は深山幸。これからよろしくね?」
「あ、私は春山小春です。よろしくお願いします」
「あはは、敬語じゃなくていいよ? さっちゃんとでも呼んでくれればいいからよろしく、こはちゃん」
「こ、こはちゃん……?」
「あだ名あだ名。ダメ?」
「う、ううん。いいよ全然。えと、さっちゃん?」
「うんそ。よろしくね?」
そう言って、彼女は手を差し出してくる。握手を求められているのだろう。
「うん。よろしく」
私が手を握ると、彼女はにっこりと笑った。




