仲直り、すなわち関係の修復。そして、気づく。
今日の全授業が終了し、終礼も終わった。
つまり、この後残された時間は、部活だけだ。
幸い、僕と彼女は同じ部活、具体的には文芸部に所属している。
つまり、まだチャンスはある。
ただ、切羽詰まってきているのも確かだ。
なにしろ、ただ本を読むだけの部活とはいえ、喋ってばかりいては怒られる。
よって、部室につくまでに済ませなくてはならない。
まあ、先輩に心配かけても悪いし。
という事で、僕は言った。
「春山。部活、一緒にいかない?」
すると、彼女は少し戸惑うようなそぶりを見せつつ、言った。
「え、う、うん。わかった」
僕らは並んで歩き出した。
教室から廊下へ。
廊下から階段へ。
二階、三階と上っていき、四階を過ぎたところで話しかけた。
この上にあるのは文化部の部室だけで、ここを通る生徒はいるにはいるが、ここまでより圧倒的に少ない。
「あ~、友達、できた?」
できたはずだ。だって、その証拠に、ずっと僕には話しかけなかった。
だから、この質問に、意味はない、はずだった。
「う、ううん。ダメだった。ずっと一人だったよ……?」
「え!?」
なら、どうして僕と話そうとしなかったのか。
どうして、僕に相談したりしてくれなかったのか。
やはり、僕に迷惑がられていると思っているのだろうか。
だから、僕に話しかけようとせず、僕に相談しようともしなかったのだろうか。
そう聞いてみた。
「う、うん。そう。だって、迷惑だったんだよね。私が、頼って。それで、他の人と仲良くするように促したんでしょ? だから、私、遠山くんに話しかけないように、頼らないようにしてたんだ。これ以上嫌われたくなかったから」
「え、じゃあ、一人でなにやってたんだ? 休み時間の度に、席を立ってたよな?」
「そ、それは、トイレに行って、本を読んでたの。誰にも迷惑かからないように。誰にも気にされないように」
おいおい……。
「あのなあ、春山?」
「な、なにかな……?」
「僕は、春山のことを迷惑だと思ったことなんて、一度もないよ。面倒だと思ったことも、嫌いになったこともない。僕は、むしろ頼られるのは好きな方かもしれない。自分が認められたような気になれるからかな……? でなきゃ、十五年以上もあいつらとつるんでたりしないよ」
共通の知り合いであるところの幼馴染二人を引っ張ってきて、言う。
そして僕は続ける。
「だから、春山。僕に頼ってくれていい。どれだけ頼られたって、僕は嫌な顔はしないよ。まあ、依存してほしくはないけど、依存しそうになってたら、ちゃんと助ける。どれだけでも頼ってくれ。大丈夫だよ。僕は、ずっと味方だ」
言い終えると、僕は黙って春山の方を見る。
「い、いいの?」
「ああ。問題ない」
「だいぶ頼っちゃうよ?」
「望むところだ」
「依存しちゃうかも」
「さっき言ったろ? ちゃんと助ける」
「ありがと、ありがとう……!」
「じゃ、また元通りって感じで」
「ふふ、短い仲違いだったね」
「まあいいだろ。これからもよろしく」
「うん。こちらこそ」
こうして、僕たちの関係は修復された。
ああ、でも。
これまでと同じように、とはいかないかもしれない。
だって、気づいてしまった。
きっと、これが恋ってやつだ。
きっと、僕は、好きになってしまったのだろう。
どうにも、彼女がかわいくて、守ってあげたい。支えてあげたい。
悟られぬよう、隠しながら、それからを過ごした。
気づいてしまった……。
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