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2、軽めの契約

「では、証拠を取りましょう」

一枚の紙を取り出したかと思うと、それには以下の文章が。

契約書、と。

「そんな大袈裟な‥‥‥」

「文面での取り引きが一番だと‥‥‥お、酷い父が」

今、お父さんなのかお父様なのかはわからないがそう言おうとして、言い直したらしい。

こんな関係、すぐに終わるだろう。

「写真証拠で十分だろ、そんな重くなくたって破らん」

「でも‥‥‥」

「それに、破ったら罪に問われるのは主に俺だ。破った方が損だろ」

恐らく警察に言ったら罪には問われないだろうが、『何故すぐに言わなかったか』など、言われるに決まっている。

「確かに、そうかもしれません。では、写真を」

俺のスマホで、写真を撮る。

それもかなりヤバイもので、俺の膝に彼女が乗っていると言うものだ。

そしてそれをお互いの端末で撮る。

「契約成立っと。今日はこのあとやることはあるか?」

今から学校行く気にはならないので尋ねる。

「いえ‥‥‥」

髪を弄り気味なのに気がつく。

「昨日は何処にいたんだ」

申し訳ないが少し強めに、聞いてしまった。


得られた情報はこれだ。

昨夜の夕食はファミレスで食べたこと。

高架下で夜を過ごしたこと。

髪を染めたのは高架下での出来ごとだったこと。


「じゃあ風呂、入りたいよな。すぐ沸くと思うから」

「そんな、シャワーだけでも十分‥‥‥」

「まだ、小学生だろうが、我が儘言っとけ言っとけ」


髪のカラーリング取れなさそうだし、身バレはこっちもあっちも嫌だろうな。

所々黒色のまんまだから髪型とその黒色でバレてもおかしくないな。

暫くして風呂が沸いた。

彼女が風呂に入っている間、俺は髪染めの道具を買いに行く。

風呂に入っている間に近くに男がいるのも嫌だろうしね。



ゆっくり買い物をして40分後に帰宅する。

ん?なんだか騒がしい。

「夏輝さん?夏輝さん?」

どうやら俺を探してたらしい。

バスタオル一枚で。

「‥‥‥まず、服を着ろ。ちょっと買い出しだよ、気にするな」

「良かった、私がお風呂の間に警察に行ったのかと」

「行かないから」

本当なら行かれてる側な気がしてならない。

「髪の毛、ちゃんと染めてやる」

その日の内にはきちんとした金色の髪になるのだった。


翌日

「鍵?」

「預けておく」

「良いの?」

「別に裏切らないだろうし、スペアだしな」

「裏切りません」

「だろうな。行ってくる」

勿論、学校に連れていくことも出来ない。

出掛けるなとも言っていないが、出掛けないだろう。

また迷って、それだけだ。


学校につくなり二人の生徒が俺に問いかけてくる。

「ナツキチがサボりなんて珍しいね。なんかあった?」

「そうだそうだ!寂しかったんだぞ!」

「マスには兎も角、レオナには心配かけたな」

「俺にはなんにもなしかよ!酷くねぇか?」

「‥‥‥アタシだってそんな、ガッツリ心配してたわけじゃ、ねーからな?」

「そんなこと言って『既読が既読が』って‥‥‥モガモガモガ」

(マス)獅子奈(レオナ)はクラスメイトの友人だ。

特にレオナは幼稚園が同じだった。

そのときはこんなにオープンな性格じゃなかった筈だけど。


クラスチャイムと共に先生がクラスに入ってくる。

「やっべ先生来ちまった」

「んじゃ、ナツキチまた、休み時間に」

「おう」

授業の合間の休み時間は先生に昨日の事を説明されられたり、移動だったり、体育だったりで話す時間がなかった。


そして昼休み。

「やっと話せるぜ。昨日はどうしたんだ?ナツキチよ」

「突然の高熱だよ。昨日の大半は寝て過ごした」

「連絡に出なかったのは何だったんだ、そんなに駄目だったのか?」

「わりぃわりぃ、余計な心配かけさせてな」

「なんならアタシが看病しに行っても良かったのに」

「別に要らねーよ。つーか昨日はバイトだっただろ」

来られても困るが。


ふと、今食べている物を咀嚼しながらあることが頭をよぎった。

あいつ昼メシちゃんと食べているのだろうか。


「ま、いいけど」

「帰りマック寄らね?新作食べてぇ」

「お!賛成!ジャン負けの奢りな」

「すまん、二人とも。今日は予定がある」

手を合わせたことにビックリしたのか二人は一旦、静止して。

「あー、そうなんだ。じゃあまた今度」

「ちえ~残念」

何だかんだ、最高の友人だ。



授業終わり、過去最速タイムで家へと駆け戻る。

「湊!」

「あ、おかえりなさい。冷蔵庫の物勝手に使わせてもらってますね」

俺はその場にへたり、と座り込む。

「ど、どうかしましたか?」

「ちゃんと食事は取ってるんだな。良かった」

「それどころか夕飯の支度も始めちゃってます」

多分、料理とか一通り出来てしまうのだろう。

最近の小学校はなんでもできるのか。

「今の私は居候の身、家事くらい任せてください」

「‥‥‥うん、任せる」


彼女は身分や年齢さえ無ければ一人で生活し生きていける人間なのだろう。

「一人で寂しくなかったか?」

「‥‥‥ずっとひとりぼっちだった人に言いますか?それ」

「聞いただけだよ」

カレーの匂いがしてきた。

今夜はカレーらしい。

「足らないものあるか?」

「なら、福神漬けを。いつもあったもので無いと寂しいです」

「了解。任せとけ」


こうして犯罪紛いの関係はどんどん深みに嵌まっていく。

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