1、押し掛けの姫
もうすぐ時間か。
テレビをつける。
『昨日、総理大臣の一人娘、湊様(7)が失踪した事件で、警察は‥‥‥』
ピッ、という音と共にチャンネルを変える。
俺の朝は、ニュースではなく、オバスタと決めている。
山ちゃんから変わったときにはビックリしたけど、新しい人も色々なキャラの声優をしていて凄いと思う。
芸人が一発芸を披露しようとしたタイミングでテレビを消す。
これ以降は見ないし遅刻もあり得る。
「戸締まりよし、電気よし」
先月の電気つけっぱなし事件はもう、起こさない。
鍵をかけ、部屋を出る。
ここはアパートの一階、自転車に乗って登校するだけ‥‥‥
と、思ったのだが、自転車の上に誰か乗っていた。
金色の髪をした小学生。
パンパンのリュックサックを背負った、女の子だった。
「‥‥‥覚えていないでしょうからはじめまして。昨日はありがとうございました」
「昨日?」
「道順はおろか、飲み物までくださったじゃないですか」
昨日はアキバをぶらぶらしていたっけ。
そういえば声をかけられた気がした。
「あ、メイトまで連れていった子か」
その子は「親とはぐれてしまって、あにめいと?と言う場所に行くと言っていたのでそこに行きたいのですが」とか言っていた。
「その人で合ってますよ」
「親と合流出来たのか?俺がみていた時間まではいなかったみたいだけど」
「‥‥‥ごめんなさい」
「?」
何故謝られるのかわからない。
兎に角もう遅刻になってしまう。
「悪いけど、これから学校なんだ。そこをどいてくれない?」
すると彼女は少し暗い顔をして、こう言った。
「私、家出をしてきたんです」
俺は初めて、学校をさぼった。
「お邪魔します」
律儀な子だなあ。
靴は揃えるし、挨拶も完璧。
「飲み物、何がいい?」
「‥‥‥何かジュースはありますか?」
「コーラかリンゴ、どっちがいい?」
「‥‥‥コーラとは?」
コーラを知らないだと?
容姿を見る限り、そこまで貧乏では無いはず。
ならば、箱入り娘というやつ?
「それじゃあ、リンゴにしとくね」
自分の分のコーラと彼女の分のリンゴジュースを注いで持っていく。
スマホの通知がうるさいけど既読するわけにはいかないので、無視。
「鳴っていますよ?」
「友人からだろ、学校に来てないから鳴らしてるだけ」
「すみません、私のために」
「昨日の縁に感謝するんだな、そうじゃなきゃ、入れないよ」
そんな誰でも連れ込むような人じゃなければ、誰でも信じるような人じゃない。
ただ、彼女の顔が本当にそうだと言っているようだった。
まあ、それはさておき
「どうして、家出なんか‥‥‥」
「ちょっとした喧嘩です」
彼女の話はこうだった。
彼女の両親は忙しく、出掛けることも一緒に出来なかった。
ある日、ついに出掛ける予定が出来た。
それなのに、両親はそれを破り、黙って仕事に言ってしまった。とのことだ。
全く、よくある話ではあるけど、ほんとに家出をする人なんていたんだなぁ。
鞄には鼠のキーホルダーがいくつか付いていた。行き先は夢の国だったのかな。
「それで、そのバックの中身は?」
「‥‥‥出しますか?」
「あ~、男の人の前で出しにくいものは出さなくていいよ」
頭良さそうだし、着替えとか入ってそうだな。
「い、いえ、出します。信用してもらうのは大切なことなので」
鞄の中身を外に出す。
案の定、服がいくらか出てきた。
それには触れないようにして、問題は‥‥‥
「髪を染める染料?」
既に使用済みのようだが‥‥‥
「私が使ったものです。なので、元々は黒髪です」
だいぶ大胆なことをする子供だ。
それと、財布。
「貯金箱の中身を全て持ってきました」
だいぶ重い。かなり貯金をしていたところを見ると、彼女はやっぱりいい子らしい。
後はここまでに食べたもののゴミが分別されていたり、最低限の教科書が入っていたり。2年生って書いてあった。
そして極めつけは、大きい唾の帽子。
ある意味目立つんじゃないかな、それ。
「これは、その、バレにくいかなって、お母さんの、部屋から」
若干、金色の塗料が付いちゃってる。
洗えば取れるかな。
「後はポケットのこれだけです」
スマホを自分の近くに置いて、これ以上はもう持っていないと言う。
「ありがとう、着替えは早めに片付けてくれるとありがたいかな」
小学生のであれど、見るのはいたたまれない。
彼女は服を全てしまうと、自分の近くに鞄を置いた。
「後は自己紹介ですね。湊と言います」
おい待て、その名前、直近で聞いた気がするぞ?
確か今朝のテレビで‥‥‥
「もしかしなくても、総理大臣の娘だったり、する?」
「やっぱりニュースになっていましたか。なので、昨日は警察には頼れず、貴方に助けを‥‥‥」
ここまで、本気なのか。
「お願いします、警察とかには言わないでください」
小学生の土下座を見るのは初めてだ。と、言うかもう二度と見ないだろうし見たくない。
「言わないよ。っと、俺も名前を言わないとな。俺は夏輝だ」
「ありがとう、ございます、夏輝さん」
またも頭を下げられてしまった。
俺は女子小学生と同居を始めてしまった。
ついにロウキューブ、天使の3P、ぽけっと・えーすが揃ったのでロリに手を出しました(言い方)