表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ビスクドールの心

 目の前に広がる深い暗闇、それが目を開けることの無い私が知っている風景。

 何も見えない暗闇のなか、すべすべだったり、少しザラザラしてる大きくて湿り気のある何かが私に触れている。少し冷たいけど、でも…温かい。

 カチャリとかコトンといった小さな音しか聞えなかったのに、私の近くで声が聞こえた。

「この子には可愛いフリルよりナチュラルなレースの方が似合うかな?」

聞いたことの無い、低く渋い声が聞こえる。フリル?レース?何を言ってるのかわからないけど、この人は迷っている。それだけは分かった。あの後、

「ちょっと失礼」

 また声が聞こえた。と思ったら、少し冷たいけど、温かい何かがあたしに触れる。でも、私に触れるあの時とは違う。右腕と左腕は片方ずつ包まれていて、胴体も包まれているけどお腹は少し締め付けられている。脚は右脚と左脚が一緒に包まれていて、足には左右で固い何かに包まれている。不思議に思っていた時にあの声が聞こえた。

「素晴らしい!やはりレースにしてよかった。とても似合っているよリーシャ」

低くて渋い声なのは変わらない。喜んでいるからだろうか?初めて聞いた時の声の低さとは違った。

 その他にもいろいろなことが分かった。今私を包んでいる何かはレースであること。そして、私には"リーシャ"という名前があるということ。その時、胸のあたりが熱くなった。これが嬉しいという感情なのかしら?だとしたらなぜだろう。名前を呼んで貰ったから?レースで包んでくれたから?それとも、別の理由が?

 だとしたら、もっと知りたい。私に触れる冷たいけど温かい何かを。そして、低くて渋いあの声をもっと聞きたい。できればこの先ずっと……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ