2、俺らの部活動初日
一昨日の部活に入る騒動の後、その次の日──つまり昨日に、早速入部届けの用紙を貰いに行き、そして今日だ。入部届けは昨日家で書き、今朝に、入部届けを出した。そして、今───初めて部室に入るのである。
俺も翔も超能力制御部の扉前で足を止める。
「…………来斗」
「あ、ああ。……なんだ?」
「僕ら、大丈夫かな……?」
ちなみに、俺もついでに入部することになってしまっている。翔に頼まれたのもあるけど、心配だったってものある。もちろん口には出さないけど。
「…………大丈夫だろ。多分」
正直大丈夫じゃない気がするが、口に出してしまえば負けだ。
「多分、か……」
「ま、まぁ、入ろう! 入部したからには、入るしかない!」
すぅーー、はぁ~~と深呼吸をし、俺がドアノブを握る。
「……行くぞ」
「…………うん」
「───し、失礼します」
「えっと、失礼しま~す」
とりあえず、入ってみたけど……
あ、え~と……。き、気まずい……。
ふとこっちに背を向けていた人が振り返る。
「──ん? あ、もしかして、らいたんとしょーたんかな??」
「ら、ら、らいたん!? ってもしかして、俺のこと、ですか……?」
らいたん!? なんじゃそりゃっ! 来ちゃんの方がましだって!
「あ、どうも」
ってなんで翔は普通に挨拶してんの!?
────って、あれ? 挨拶するのが、普通……なのか??
「ほうほう、新人くん! いらっしゃーいっ! ようこそ!──」
「──超能力制御部へっ」
ぴゅらーんと花が沢山咲く。
え? え? どうなってんの!?
「おお。言えたねー、玲茶ちゃん! 偉い!」
「それくらい出来るよ〜?」
「──え、えーっと、よろしくお願いします」
と、とりあえず、挨拶しといた方がいいよな。うん。挨拶大事。
「はーいっ。よろしくね〜〜! らいたんっ」
誰かわかんないけど、テンション高ぇ!
「あ、荷物はその辺置いといていいよー。んーで、えと、私が、部長の花村結。結ちゃんでも、結でも、なんでもいいから適当に呼んでね〜。三年B組だよっ。超能力は『開花』! んーとね、こんな感じだよっ」
というと、手を線を描くように振る。
お、おお……!! 花が満開だ……! さっきのはこれか。
つまり、手を振ったラインに沿って、花が咲くと。
「──あれ? 先輩は自己制御出来るんですね」
「まぁね。私はもう小学生の頃から出来るよ」
えっへん、とかされても。
「──え? じゃあ、なぜこの部を?」
確かこの部は花村って人がつくったと聞いている。
「あー、もともと玲茶が制御出来ないから、私が作った部なんだよね〜。玲茶とは、幼馴染みで、昔から超能力の暴走ばっかりに困ってて。あ、後、私のこと、先輩は禁止ね?」
なんめっちゃかいい人じゃん……。
「えっと、じゃあ、なんて呼べば」
「結とか、結ちゃん♡とか。いっぱいあるでしょっ」
なんでハートが付くの!?
「ゆ、結さんでいいです!」
「じゃあ、僕は、結ちゃんにするねっ」
うおっ! さすが翔って感じだな!
「うんうん。なんでもいいよっ」
とか言いながら結さんって言ったとき、ピクッと眉が動いたような……? き、気のせい、だよな??
「私は高杉玲茶だよ〜。結が言ってたけどね〜、結とは幼馴染みで、いつも助けて貰ってるんだ〜。そして今年は運良く結と同じクラスになったからね〜、三年B組だよ〜。え〜と、いまだに自己制御は出来ないけどね〜、超能力は『水質体』でね〜、見せられないけど、要するにね〜、んーっと……私の体がね、人型の水になるような感じだよ〜。あ、液体でね〜」
き、綺麗な人だなぁ……。
「あ、よ、よろしくお願いします。えーっと、玲茶先輩」
「玲茶ちゃんもよろしく!」
「おい。先輩だろ」
なんでそんなフレンドリーなの?
「いえいえ〜。別に先輩だなんてね〜。そんな堅苦しくなくて大丈夫だよ〜」
「そ、そんな気を使わらなくても」
なんていい人なんだ玲茶先輩!
「そうそう、そうだよっ! 超能力制御部のいい所は、みんな仲良しな所なんだから、気ぃなんて使わなくても全然大丈夫っ☆だからね、タメ語でいいんだよ?」
大丈夫とか言われても。初対面ですよ? そんな俺強くないです。
「あ、えぇと……。じゃあ、よろしく?」
「なんで疑問形なのかなっ、らいたん?」
そんなこと言われましても、結さん?
「えぇ〜と……。玲茶さんよろしくっ!」
もう敬語の方が可笑しく思えてくるよ、この部っ!
「うんうんっ。みんなで仲良く毎日楽しも〜うっ!」
確かに結さん超楽しそうだな!
毎日充実しまくってるって顔をしてる。
「うふふ。うん。来斗くん、翔くん、仲良くしてね〜」
綺麗な人だなー。玲茶さん。
「次っ、すーたん! 自己紹介っ」
「あ、はい。本の世界に入り込んでしまってたです。忘れてたです」
おお、なんか、部屋の壁にもたれ掛かって座っているこが、本から目を離してこちらを見る。
つか、やっぱりたん付けなのかよ。
「どうも。栗無須戸菜です。二年A組です。二年になってすぐに入部したです。自己制御の前に、自分がどんな超能力を持つのかすらもわからないです。後は略称です」
おとなしそうに見えて、実は超能力の性質すらわからないと。
まぁ、仕方ないことなんだけどな。
こういう人もいるんだなー、とか思っただけで。
「えっと、須戸菜先輩もよろしくお願いします」
「すーちゃんもよろしくねー」
いやいや。こういう人は敬語にしないと。
つか、いきなりあだ名つける!?
「ん。よろしくです」
え? いいの? 全く気にしてない様子だけど? え、俺が可笑しいの??
「はい次っ! きーたんっ!」
あ、もう次ですか。
「は、はいっ。え、えぇ〜と、わ、私は、咲都桐木です〜っ。ちょ、超能力は『冷却』でしてっ、対象物を冷却、最終的には凍らすことまで出ぎるんでずけどっ、わ、私には操れないです〜っ! れ、冷却してしまったときは、申し訳ございまぜん〜〜っ。あ、後、二年D組で〜すっ」
────おおお……。可愛い……。
「よろしくね〜。桐木ちゃん」
────あああ〜〜。可愛いぃ〜〜。
「────えーっと…………らいたん??」
ふと、ジーッと俺の方を見る結さんの視線が。
なんだよ。俺はきーたんの素晴らしさに慕ってるとこなんだけど。
「──────へ? あ、あぁ。す、すいません。えーっと、きーたん、よ、よろしくお願いしますっ」
──────って俺は何を言ってるんだ!?
「き、きーたんっ?? も、もうっ。結ちゃんが変なあだ名付けるからだよぉ〜〜」
す、すみませんっっ。
「うっわ〜〜。来斗くんがフリーズしてた……。こういうこが好きなのかなぁ……」
なんか玲茶さんから小さい呟きが聞こえ────いや、聞こえないっ! 俺は何も聞こえてないぞっ!
「────す、すいませんっ! 焦ってしまっててっ。えーっと、桐木ざんっ。よ、よろしくっ!」
「……噛んだよね?」
「噛んだね〜」
か、噛んでなんかないでずっ。
「来斗と翔、よ、よろしくお願いしますっ」
「───で。らいたん、しょーたん。ほらほら自己紹介っ」
あれ? もともと四人しかいなかったのか、この部。
「あ、じゃあ俺から。────えーと、俺は、本名冬野来斗です───だ。一年E組で、翔とは桜高で知り合って、シェアハウスで一緒に住んでるんだけどなー。……一昨日も家の本棚を超能力の暴走で壊されたから、この部に入ることにした。俺の超能力は『加速』だ。簡単にまとめると────あ、見てもらった方が早いか?」
「そうだねっ。この辺でやってみて〜」
ちょうど机とかもない短めの通りがほつり。
「ら、来斗は、超能力操れるんだぁ〜。自己制御出来る人は、二人目ですぅ〜っ! この部もやっと成果が出できたね〜〜」
すごく嬉しそうに言ってくれるのはありがたいんだけども。二人とも元々じゃん。それは成果とは言わんでしょうよ。
大丈夫かな、この部。なんか特に意味ないんじゃ…………
ま、まぁいいや。とりあえず披露しよう。
スーッと足の力を抜く。
「────じゃ、じゃあ、行きます」
ごくん、と唾を飲み込む。
なんか超能力使うのに緊張しちゃってるよ。
よしっ。
俺はその短めの通りを瞬時に走って見せる。
うん。いつも通り。
「…………」
「────えーっと……?」
いつも通りにしたはずなんですけども?
「…………普通だね?」
「普通だね〜」
「そうだろうな! 何求めてるんだよ、俺の超能力に!」
やって見せたのに、普通ってなんだよ!
「あはは。ごめんごめんっ」
確かに結さんのは凄かったけどね!
「……風吹かせないでくださいです。埃が舞うです」
酷い!須戸菜先輩は本にしか目がないの!?
「す、すごいでずぅ……」
…………。
完全に気ぃ使ってくれてありがとうっ!
…………あ〜〜、何この反応。俺やる意味あった?
「来斗はやっぱり普通なんだよ」
翔!? 翔も裏切るのかっ!?
「おいっ。やっぱりってなんだよ。普通って結構良いことだと思うんだけど」
まず、この部が普通じゃないんだよ!
成果出てないし! どの辺で学校は公認したの??
「まあまあ。別になんでもいいって!」
良くねぇよ結さん。
「じゃあ、次は僕の自己紹介だね」
流石。切り替えの早い翔だこと。
「そうだね〜」
「うーんと、僕は早川翔。別に何て呼んでくれても大丈夫だよ。僕は来斗と一緒の一年E組。超能力は『木破壊』っていって、木製の物をぼろぼろにしちゃうんだ……。うーんと、それで、超能力制御部に入ることにしたんだよ。噂では、ヤバイ部とは聞いていたけど、結構楽しそうな部で安心したよ。これからよろしくね〜〜」
「しょーたん、よろしくっ! そっか〜気に入ってくれたのかいっ! 私もこの部のこと大好きだよ〜〜」
「良いこが来たね〜。改めてよろしくね〜、翔くん」
「…………」
「よろしくです〜っ」
なんか高評価なんだけど翔! 俺大丈夫かな?
須戸菜先輩は特に用無しみたいだけどさ。
俺この部について行ける気がしないんだけど……。
「んじゃー、歓迎会っ!! 始めたいけど、何もないから、今日準備して、明日しよーうっ!」
歓迎会!? この部にはそういうのもあるのか。
「おーっ! 歓迎会! いいね〜〜。僕歓迎されるんだ〜」
「俺も楽しみにだな! 何してくれるんですか?」
「ふふ〜んっ。内緒だよ〜〜。ね、玲茶?」
「もちろんだよ〜。超能力制御部の恒例だもんね〜」
「恒例? てことは、俺ら以外はみんな内容を知ってるわけか?」
「はいっ! 私のときも歓迎会ありました〜っ! すっごい楽しかったです〜っ!! 明日は絶対来てください〜〜」
「ふふっ。私と玲茶の超能力制御部初日のときが始まりで、次はすーたん、その次はきーたんって、毎回どんどんバージョンアップしてるからね〜〜っ! きーたん、らいたんとしょーたんで、またバージョンアップさせるぞっ!」
「いいですね〜〜っ! 私、頑張っちゃいますぅ〜」
「さあっ。準備するよ〜! まず作戦会議だからっ! らいたんとしょーたんは、今日の部活動はここまでっ! 明日は少し遅れて部室に来てね〜〜っ」
「了解だよー」
「わかった」
おおお。これは結構楽しみだ。
床に置いていた鞄を持つ。
「えーっと、改めて、これからよろしく」
「僕もこれからよろしくね〜〜」
「もちろんっ! らいたんもしょーたんも可愛がってあげるよーっ」
「こちらこそよろしくね〜」
「よろしくです」
「いい人たちで良かったです〜っ」
なんか結構いい部じゃん。
「そんじゃあ、また」
「またね〜」
「はーいっ」
翔と俺は部室を出る。
なんか、いい感じの部じゃん。騒ぎはおきそうだけど。
いきなり人増やしすぎたかな、とか思いつつの第二話です。