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いろせかい  作者: 雲雀 蓮
虹の麓でこんにちは
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友達の印、勿忘草色

「にらめっこ」とは、人を最短で笑わせる凄い魔法だと思う。



なぜならば、先程まで言い合いをしていてあまり良くない雰囲気が崩れたからだ。

どうでもいいけど、こっちみんな。


「彼女は聖奈みなという名前でしたね」

「そうだよ、可愛いでしょ?」

「どうやら生粋のお姉さん気質のようでした。もしかしたら」

「手間の掛かる妹こそ可愛いの」

「・・・妹と友人は違いますよ」


大きく態とらしくため息をつく優騎ゆうき。連動して頭を下げる。

もう一度上げて私を見て苦笑いをする。『しようがない人だ』と。


優騎は優しい。

普通は親友と言い合っていても、学校が変われば縁も切れてしまう。

それでも彼女は私に会いに来てくれる。理由は様々あるけれど。

わざときつい口調や、内容に手を伸ばすのも彼女なりの気遣いで。

それが堪らなくすきだ。


「優騎、やっぱり何か見えたんでしょ」

「えぇ、見えました。貴女が一人で泣いているのを」

「原因は?」

「わかりません。時間もはっきりしません。カメラのフラッシュのように一瞬だったのです」


しゅん、としぼんだ十年来の友人。力を込めた両手が震えている。

無力だ、といった普通の人に失礼なことを考えているのが聞こえる。


「大丈夫だよ。聖奈はその原因じゃないよ」

「でも」

「そうだったら優騎がいるじゃん。夏樹なつきもいる。何が困るの?」


幸福は手に入れると薄れていく。不幸はついてくる。

期間や効果は人それぞれ違うのだろう。でも理屈は同じ。y=sinθのグラフと同じだ。

0から始まって1、0、-1、0と巡っていくものなのだ。


「そうなる要素はいっぱいあったほうがいいよ。皆で幸せが一番いい。

 それに、私はいつまでも守られてばかりじゃいけない。変わらなきゃいけないの」


人生はいつまでも同じ、という事はない。川の水と同じだって彼の人は言った。

私だけ、そのルールに逆らうことはきっとできない。


「今はさ。流れに身を任せようよ」


運命が絶対であるのならば。

それはきっと膜を張ったような、ぼんやりした人生を量産しているだろう。

人によってはそれが幸せなことだと思える人もいるのだろう。

私みたいな人生の辛酸舐めきった人とか。

先生のこと「お母さん」って間違えたとか、初恋振られたとか。


だけど大丈夫。

転んでも、前みたいに立ち上がれる。

私は子供の時に転び慣れたのだから。


とたとた。


「二人とも、お茶の準備が出来たわよ~」


なぜか私のエプロンを身につけた聖奈が、紅茶のセットを用意していた。

あれ、夏樹は?夏樹が準備してたんじゃないの?


「夏樹はね、今カップケーキを並べているの」

「へー。・・・ぇ」

「早くないですか?ケーキ」

「カップケーキは短い焼き時間でも大丈夫なの。小さめだから」


本当の女子力をみた。なんてこった。嫁に欲しい。


ただ、一つ問題があるが。(対私のみ)


「ね、ねぇ聖奈。コーヒーとかないの?」

「紅茶しかないわよ?」

「・・・・マジっすか」


私は紅茶が嫌いだ。渋いという味覚がダメのようだ。

苦い、辛いはなんの問題もない。唐辛子やゴーヤは無理だが、食べる機会はそもそも無い。


だがしかし。

久しぶりの友人の作ってくれたものだ。

別のものを自分で用意するのも失礼だ。吐き出すのもNGだ。

必然的に、飲み込むしかない。


更に、一気に飲む事は一番良くない!

おかわりを注がれたらゲームオーバーだ。

だから私は、一口飲むだけにとどめるしかない。

あとはカップケーキに頼ろう。そうしよう。


「前途多難ですね」

「なにもいうな、バカ優騎」

「どうかしたの?」


何も知らないのは聖奈だけだ。追々話すことにしよう。

今は分が悪い。・・・いやしかし、ココで断らねば後で気まずく(悶々


「まんまみーや」


お母さん。私は今日大人の階段を一段登ります。

友人に大きな嘘をつきました。あぁ。生きるのは大変なことなのですね。


「はい、どうぞ」

「これはこれは、どうもご丁寧に」


にっこり笑ってカップを受け取る。こんなのどこに隠し持っていたのだ、バカ兄。

一緒に暮らしていたけれど、こんなの見たことないぞ!

(今更ですが、兄妹だけで暮らしてます)


カチャカチャと全身の震えがカップとお皿に伝わる。


いや、これはいけるかもしれない。香りがスッキリ爽やかなみたいだ。

きっと今まで飲んでいたのとは違うのかもしれない。麦茶みたいな味かも。


高級な杏仁豆腐はあんまり甘くないのと同じなのだ。

そう考えた。行ける、私勝てる!(対紅茶戦)


そして暖かい液体を、一口。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・むり。




一口でわかる。これはあかんやつや、と。

香りはカモフラージュだったのか。なんて姑息なっ!


「どう?今日のやつはね、ファーストフラッシュなの」


感想求められたー。口を開けたら何かが出そうなのに!?

この状態でなにが言えるって思うのさ!

そんでファーストフラッシュってなんぞ。どこかの富竹さんの必殺技ですか?

(※春摘み、一番摘みの紅茶のことです)


「えぇ、とても美味しいです。爽やかな香りがとてもいい感じです」

「そう、良かった。誰かに飲んでもらったの久し振りだからちょっと心配したの」


よし、そのまま話題ずれろ。

私に感想を求める流れ、来るな!


「ね、那都琉なつるは?」

「・・・・・・」


運命っていつも残酷です。泣きたいです、たちあがれません。


「っとってもおいしいよ。こんなに美味しいの飲んだことないや」

「ありがとう」


いいの、いいんだよ。

今の聖奈の笑顔が見れただけで幸せだって、考えるんだ。

落ち着いて素数を数えていれば、この拷問は終わる。

ほら、今口の中には酵素しかないよ。アミラーゼ?セルラーゼ?なんでもいいよ、バカ!


「2、3、5、7、11、13、17、19・・・」

『あーやっぱり壊れましたね』


優騎の声が聞こえた気がするけれど、木の精霊こだまの仕業だろう。

過去の声が今頃帰ってきたのだ。


『夏樹は嘘をついたのかしら?那都琉、普通に紅茶飲んでたわ』

「67・・・・って。え、」


急に横から入ってきた聖奈の(心の)声に驚いて、数えるのをやめる。

夏樹、嘘、私と紅茶・・・・。


「聖奈、私が紅茶ダメなの知ってたの?」

「え」

「え?」


本日二回目のにらめっこ。

どちらも笑わない。


いつも事件の影に奴あり。

夏樹を尋問しましょう、自白させればこちらのものだ。

そちも悪よのぉ。


そんな死にかけのオヤジ達の声が聞こえた。(嘘)


「夏樹を殴ってくるので、後でお話しましょう」


珍しく敬語でそう言った私。

ケーキ係の悲鳴はその一分後に上がった。勿論ケーキは無傷だよ。


聖奈たちの元へ夏樹と共に戻る。

彼の手にはカップケーキが何個か乗った大皿が。

そこから一つとり、口直しがてらに味見。普通に美味しい。

先ほどの渋さは悪夢のように感じられる。きっと夢だったのだ。


ほっこり笑顔の私を見て、聖奈は察したらしい。


「なんだ、無理しただけなのね」

「知ってて飲ませたのか、この人でなし!」

「嘘ついた方も相応に悪いと思いますが?」


優騎の言い分も正しいけれど、どうして何も言わずにいられるのか。

夏樹に聞いていたのなら紅茶と別の飲み物を用意しても良いじゃないか。

それか、夏樹が用意してくれればよかったのに。

ケーキを食べ、酸性になった口内に風が吹いた。


「はぁ」

「その、ごめんなさいね。どんな反応するかしらって思って」


私のため息に明らかに怯えている聖奈。

尻すぼみに声が小さくなっていく。

つまり、次はしないってことだよね。リアクション期待だけの理由だったのなら。

もう私は紅茶を無理して飲まなくていいの?ホント?


「なんだ、よかったー」

「え」

「これからは嘘つかなくていいんだーひゃっほーい!」


一回の傷で済むのなら、それでよかった。

なんて日だ。幸せなのかそうじゃないのかわからないぜ!


明らかに困惑している聖奈に笑った。


「えへへ、私はコーヒー党です。これからは気をつけてくれたまえ」


昔の貴族のように悠然と自室へ向かって歩く。内心はテンション上がりすぎてやばい。


そして自室にある、あるものに近づく。

昔優騎にもらった花。同じ種を買って育てた方を持つ。


いつかまた友達が出来た時に、渡せるように。

そして、その子が私の気持ちを受け継いでくれるように。


にんまり笑顔で、聖奈達のいる部屋に戻る。


未だに驚いた顔をしている聖奈に、その花を渡す。



「聖奈、これ受け取って」



「これは、勿忘草?何で」

「花言葉は真実の愛、私を忘れないで、それと真実の友情なんてものもありますね」

「それって那都琉がずっと大事に育ててたやつじゃないのか?」


まさに大人顔負けの表情で、流麗に私の行動の解説をする優騎。

まぁ普通、いきなりされてもわからないよね。本来くれた優騎は自分で調べたからわかるだけでしょ。

ドヤ顔すんな・・・、こっちみんな!


ついでに、右頬が赤くなった夏樹が心配そうに私を見つめる。

正直ギャグにしか見えない。雰囲気ぶち壊す気か。


「えへへ、私からのプロポーズだよ」

「・・・!プロポーズ?!」

「これからも学校でも放課後でも休日でも、ずっーと一緒にいて。またお茶しよ」

「はあ!?何言っているのかわかっているの?」

「え、うん」


そう答えると聖奈は茹でタコのようになって、黙ってしまった。

涙目になっている気がする。もしかして嫌、なのかな?

それか言葉間違えた?提案という意味ではあっていると思うけど。

あ、もっと大きなことを言うべきだったかな。


「こんなの初めて言われた」


そう言って聖奈は泣いていた。私、絶句。

聖奈のすすり泣く声が耳に張り付く。こういう時心の声が聞こえないのが不便だ。

(精神が安定していないと聞こえません)

やっぱりどっか変なのか、と私は慌てた。

急に何言ってんだコイツって思われたかも。


「ご、ゴメン。嫌だった?」

「ううん、違うの。すっごく嬉しいの」


泣いていた聖奈は笑った。


「あたしの方こそ、宜しくおねがいします」


今まで無理した顔を沢山見てきた。

でもその時の顔は、私の知っている顔じゃなかった。

真っ赤で、お世辞にも美しいとは言えない。

笑おうとしているが、ピクピク痙攣しているように上がった口角。赤い目元。


だから釣られて泣いてしまった。そんなつもりはなかったのに。

二人して何をしているんだか、と思ったけれど、一度泣くと止まらなかった。

胸が温かくて、ほんわか幸せな心地。



こんなのがずっと続く気がした。

いつまでも皆で笑って、泣いて。単調な日々がないように皆で埋め合わせる。

そんな日々が、これからずっと。




青い小さな花が咲いたのは、今年が初めてなのだから。




イタリア語大好きな、れんです。

某赤い人は「お母さーん」って言って落ちてゆくのです。


今回はグダグダ感とくどさ全開になりました。

こんな感じですが、少しでも誰か笑ってくれると嬉しいです。


今更ですが。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

まだまだグタグタ続きます!

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