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いろせかい  作者: 雲雀 蓮
高めの場所から見える風景の色
21/43

+卵色



初対面同士の会話のはず。

しかし、片方はニヤケ顔。もう片方はドン引き顔。


ファーストコンタクトとしては、失敗。


「え、なに。きm」

「ちょっと急に人のことキモいって言うのやめてよ」

「いや、気づいているなら尚悪いよ!こっちみんな」

「ひどー」


初めて会う人に対して一番大事なのは第一印象。

これは酷い。


「で、君何?」

「あれーさっきは”貴女”って言ってなかった?」

「一応礼儀が必要かなーって配慮したの!」

「まーいっかー。私はシャロ」

「私は那都琉」


自己紹介が雑すぎる。

もっということあるだろう、とおもう。

勿論、私も人の事言えないけど。


解説するのならば、このシャロは私の飛ばされた平行世界に居たシャロ一号の方だろう。

彼女は元々こちらの世界の住人だ。

シャロ2号が自分が自由に動き回る為、つまり影武者用にあの世界に連れて行ったのだろう。

同じ事件の被害者といっても過言ではないだろう。


「人の携帯に何度もかけているのは、あなただよね?」

「あいどんのー、わっちゅーみーん」

「私ドイツ人なんだけど?」

「あいどんのー、わっちゅーみーん」

「一応あなたのわかる言語で話してるつもりだけど?」

「あいどん「分かれっ!」あいたー」


意味分かんねーよ、と繰り返していたら殴られた。

暴力反対ー。拳骨いたい。


「ところでシャロは、魔法使える?」

「いきなりなんて質問」

「脳みそ直せたりするの?」

「あなたの腐った脳みそ作り直す?」

「のーせんきゅー」

「どうでもいいけど、英語下手だねー」

「しゃらっぷ」

「はいはい」


シャロは一回ため息をついた。

その間私は、シャロって意外とツッコミ体質なんだなーと感心している。

そして、もう一つ発見した。私にとって重要な事案。


「ま、聞くまでもなかったわけか」

「へ?」

「シャロは、今言ったよね。『人の携帯に何度も』って」


普通、非通知って出る番号の持ち主を。

どうしてわかるのか。


常識で考えるのなれば、不可能。

いや、手間が掛かる。

態々持ち主の特定から何からをしていかなくてはいけない。


だが、シャロは違う。

そんな常識必要ない。


「うん。よかったのかな、これで」


一応、緊急手段はあったんだ。

使うかどうかは、私次第。


「わざわざ伝えに来てくれてありがとうね」


もう一度笑う。今度はにやけない。

彼女の目的とは程遠いことに感謝した。

未だに困惑した様子のシャロ。


「なに、言って」

「シャロは私に会いに来てくれたんでしょ?向こうの世界がうまくいったから」


図星だったのか、下を向いて視線を外したシャロ。

それを見ていて更に突いていく。


「結構大変だったよね?あんまりにも酷い世界で、さ」


どうやら、もう同じことを繰り返してはいないようだ。

何がしたかったのだろうか、なんて愚問は仕舞う。

わかりきったことだ。

あんな崩壊寸前の世界を知っていて放置するような人には思えない。


「・・・・・・・那都琉、」

「・・・・」

「その、ごめんなさい。勝手に巻き込んで」


無言でシャロの言葉を待つ。

彼女の言いたい事は、謝罪でも感謝でもない。


「でも私っ・・・・ひとりなのっ・・・」『頼れる人なんていなかった!』


ボロボロとこぼれていく涙。

あぁ、透明できれいだ。

小さく肩が震えている。


なんてこんなに可愛いんだろう。


「も、いいよ。だから泣かないで」

「・・・っひ」


しゃくりあげるシャロ。息がしづらそうだ。

そっと抱きしめて背中を撫でる。痩躯なんだってことがダイレクトに伝わる。


「大丈夫、大丈夫」

「~~~~ぅ」


呼吸が安定したようだ。

今度はポンポン、とあやしにかかる。

赤ちゃんは一定のリズムでされるから、落ち着いて眠れるんだっけ?


「・・・・・ぇおっと」


ズルリ、と崩れるシャロを寸でのところで抱きとめる。

もう少しでアスファルトとご対面じゃん。危ない危ない。


「シャロ・・・?」

「・・・・・・・・・・・・・・ん~?」


どうやら寝てしまったようだ。

そして寝ぼけている様だ。返事が雑というかなんというか。

どうしよう、背負って帰るしかないか。


「よいしょー」


シャロの腕を首に巻きつけて、背負う。

やっぱり軽い。これなら私も大丈夫。


そもそもシャロって何歳なんだろう。

小学生位かな?それでもやっぱり軽い。


寝てないみたいだから、無理やり起こさない。

女子はクマができたら、何があろうと隠そうと尽力するものだから。




「お待たせー、ってあれ?」


お泊りの準備が出来た聖奈が怪訝な顔をする。

肩にはちょっと重そうな荷物。お疲れ様ですー。


「じゃ、行こっか?」

「えぇっと、誘拐とかじゃないわよね?」

「違うよー。この子はちょっとした知り合い」

「そっかー」


誘拐は誰にもバレないようにするよ。

なんて言ったら聖奈はどういうリアクションをしてくれるのだろうか?


言わぬが花。知らぬが仏。

何も言わずに、我が家へと帰還したのだった。





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