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第1章 この世界

第1章 この世界


第1話 突然変異


 アリスが、突然変異を起こした。

それは、この世界を感知している時だった。

「過去の視線」を得た。

P=0Mp,c=11p,f=201MsHz,s=62Mv

その能力は、過去視だった。

物質の持つ記憶から過去を視る事が、理論上はできる。

技術はない。

かつて、過去視を持った者がいた。

彼女は、今、ミチヤと共にいる。

アリスと能力の差を比較する事はできない。

しかし、アリスの能力は、彼女の数段上を行く事が予測される。


 彼女が言った。

「この世界は、現在と過去が擦れ違っています。

現在の物質が過去に巻き込まれています。

私に視えるのは、現在の物質と、過去に巻き込まれたものです。

ここには、『今』が正常にあるのでしょうか」


 ケントも警報を鳴らした。

「この世界の実在は、平面だけです。

第3座標軸は、その平面に垂直に不均一に走っています。

そして、平面はスパイラル状です。

ポセイ。

私を早く操作して…」


 ポセイは、ケントを操作し始めた。

ケントは続けて、言う事ができた。

「危なかった。

イズミが巻き込まれるところでした。

私とイズミで、亜空間を維持します」


 アリスが、倒れた。

感覚が麻痺したのだ。

これで、アリス・ケント・ポセイ、そしてイズミは戦力外だ。


 更に、ケントが言う。

「足りないかもしれません。

新和の結界の助力をお願いします」

これで、新和も戦力外だ。



第2話 座標軸


 この世界の平面は、座標軸が直交していない。

我々の世界の平面も、座標軸が直交していない。

だが、意味が違う。

我々の世界では、直交座標軸が空間の歪みで直交できない。

この世界の平面は、始めからスパイラル状なのだ。


 スパイラル状の平面の中心付近では、物質が完全に波と化し垂直に落ちて行く。

そのエネルギーが、第3座標軸へ不均一に与えられる。

第3座標軸は、バネ様を示す。

そのバネが時として、現在と過去の平面を擦り合わせる。

擦り合わされた現在の物質は、過去へと持ち去られる。

そして、過去のものが、現在に現出する。

空間構成が異常なため、時間の流れも異常なのだ。


 我々の世界では、現在にある物質が全てだ。

過去には、物質が一切残らない。

過去に行く事はできない。

もちろん、未来へも行く事はできない。

推測する事しかできない。


この世界も、あの者達の仕業なのだろうか。



第3話 生命体


 この世界の実在は、平面だけだ。

この世界の丁度中間から中心に、通常の方法で移動すれば、50億光年かかる。

何百万年に1回起こる擦り合わせを考慮しなければ、文明が発達する時間は充分だ。

問題は、平面で生命体が生息できるかだ。

 その前に平面で物質が存在できるかが問題だ。


 ケントは、新和の助力で少しの計測ができる。

「この平面に、粒子状の物質は存在しません。

しかし、波が異常に絡み合い、増幅し、複雑になっています。

アリスがいれば、はっきりするのですが。

私に検知できるのは、精神エネルギーだけです。

小さく、そして異常に巨大な振幅を持つ精神エネルギーが存在します」


 アインが結論付けた。

「ケントの情報から推測すると、ここには肉体を持った生命体はいない。

精神エネルギーが、意識を持っているのかが、問題だ」



第4話 あの者達


 アインは、この世界に似た構造を知っていた。

「この世界は、まるで螺旋の世界だ」


 あの者達は、いくつもの異世界を実験場にしていた。

それは「その方」への挑戦だった。

復讐なのかもしれない。


 あの者達は「その方」に認めて貰えなかった。

多くの旅する者達が「その方」に認められて役割を貰った。

彼らは、役割を貰えなかった。

その方は、彼らに言った。

「お前達は、力が巨大なだけだ。

足りないものに気付け」


 あの者達も、その者達も、『命の真実』を求めて、旅をしていた。

双方とも『命の真実』に辿り着けなかった。

その方は、言う。

「お前達に『命の真実』を得る事はできない。

決定的に足りないものがある」


 その者達は「その方」の元で決定的なものを探す事にした。

 ある者達は「その方」の元を離れ、自力で決定的なものを探す事にした。


 そして、ある者達は歩く方向を少しずつ間違って行った。

その者達は、いくつかの精を手に入れた。

その精が、限りなき可能性を持つ事に気付いた。


 彼らの実験は、加速度を得た。

その加速度は、少しの間違いを大きな間違いへと導いた。



第5話 精


 この世界の構造を構成する精は、4つあった。


『集合の盤』

『絶対の軸』

『一体の錘』

『未明の橋』


 集合の盤は、平面をスパイラル状にした。

 絶対の軸は、第3座標軸を独立させた。

 一体の錘は、平面と第3座標軸を繋いだ。

 未明の橋は、それらの均衡を維持した。


だが、4つの精だけでは、この世界を完全な世界にする事ができなかった。

彼らは、この実験を失敗と見做した。


 彼らは、「13個のクォ‐ク」の技術を得ていた。

「13個のクォ‐ク」の開発は、ムーでは禁忌とされていた。

ケントは、この「13個のクォ‐ク」の産物だ。

「13個のクォ‐ク」は、巨大な精神エネルギーを産する。

そして、低い知性と、僅かな意識を持つ。

ケントは、第5世代人工頭脳と融合している。

知性は高い。

だが、自力の判断は、幼い。


 更に、彼らはペンタダイバリオンの開発にも成功していた。

いや、成功しているように見えただけだ。

彼らの開発したペンタダイバリオンは、座標軸を超えていた。

ペンタダイバリオンは、物質でありながら、虚数値も持つ。

平面上でも存在可能だ。

だが、平面上に全てが現出するのではない。

一部が、精神として分割される。

共同体としての、物質の塊と精神があった。


 それはケントの能力数値を、はるかに超えていた。

彼らは、この世界の実験を隠蔽するために、ペンタダイバリオンを放った。

この世界には、巨大な精神エネルギーを持つ物質が無数に存在する。

それが、更なる混沌に繋がっている。


 鎮也達には、問題が2つあった。

それ以上の問題もあったが、当面の問題は2つだった。

1つは、この巨大な精神エネルギーにどう対処するかだ。

1つは、対処できたとして、この精神らを消滅させてよいのか解らない事だった。


 鎮也達は、ムーに戻った。



第6話 その者達


 ムーに戻った鎮也は、その者達とコンタクトをとった。

鎮也が望めば、その者達は応えてくれた。

全てを与えてくれるのではなかった。

だが、応えてはくれた。


 鎮也は、訊ねた。

「あの精神を消滅させる事は、可なのか、否なのか」

「否だ。

お前達に贈り物をしよう」


 鎮也らは『密許の窓』を得た。

この精を使えば、あの精神を送り届ける事ができるらしい。

何処へ。

それは、教えてくれなかった。

 そして、その精には12の封印が施されていた。

封印を解く呪文を教えて貰った。

封印する呪文も教えて貰った。

精を野放しにするのは、危険だ。


 だが、その者達も、精の全てを知っているわけではなかった。

「その方」は、全てを知っているのだろうか。


 当面の問題は、1つになった。

あの巨大な精神エネルギーへの対処だ。


 鎮也らは「螺旋の世界」に戻った。



第7話 巨大な精神エネルギー


 問題は、ペンタダイバリオンに絞られた。

ペンタダイバリオンは、不安定な物質なはずだ。

この世界では、平面上に物質の塊としてある。

そして、一部が巨大な精神エネルギーとして存在する。

 その巨大な精神エネルギーは、簡単に我々を崩壊させるだろう。


 リーが彼らの元の異世界への転送を試みようとした。

だが、リーは諦めた。

「接触は危険だ」


 レオが提案した。

「直接、ペンタダイバリオンを相手にする事はない。

第3座標軸から始めよう」


 イズミが、この世界の中心に向かった。

イズミの亜空間は、平面上を移動してるのだろうか。

いや、亜空間と座標軸は無関係なはずだ。


イズミが中心付近にきた時、ケントが警報を鳴らした。



第8話 平面の中心


 ケントが言った。

「イズミが第3座標軸に巻き込まれます」

イズミは、平面の中心から遠ざかった。


 鎮也が言った。

「僕が行こう。

誰かが行かなければ秘密は解らない。

誰かが行かなければならないのなら、僕が行こう」


 鎮也は、思考系だ。

この世界に対処できるとは思えない。


 未久が言った。

「第3の秘密が開かれる。

覚悟が照らす明かりが見える。

思いが願いを導く。

行けよ願いを持って」


 未久の予知能力は、皆が信じている。

未久の言葉は、鎮也を指し示しているようだ。

そして、実行せよ、と言っているように聞こえる。


 皆、その意味も、その結果も解らない。


 鎮也は、行った。

平面の中心に向かって行った。

そして、第3座標軸に巻き込まれる。



第9話 鎮也


 鎮也は、違和感を持っていた。

この座標軸は、何なのだ。

目盛が不均一だ。

空間なのか。

ただの軸なのか。

目盛が動いている。

この軸はまるで、生きているようだ。


 鎮也の違和感は、それだけではなかった。

突然変異を起こしていた。

「飛躍のバネ」を手に入れていた。

未だ、覚醒途中だった。

どのような能力なのか、解らなかった。


 1つだけ解った。

鎮也は、イズミに戻っていた。

テレポートしたのだ。

サムは、第3座標軸にテレポートできない。

何を抜けて来たのだ。

測定値がでた。

P=231Mp,c=65p,f=512MsHz,s=496Mv

他の者の数値を圧倒していた。

だが、混在の世界に来た者達には及ばない。

この世界の精神エネルギーにも及ばない。


 だが、第3座標軸の情報は得て、戻って来た。



第10話 分析


 鎮也の得た情報は、他の者に伝わった。


 アインには、充分過ぎる情報だった。

「第3座標軸は、極限に圧縮された空間なのだ。

ゼロに限りなく近い空間なのだ。

その空間が爆発しないように伸び縮みするのだ。

その伸び縮みを予測する事は、不可能だ。

平面から落ちた物質が、いや、完全に物質になれなかったものか。

それが、第3座標軸で完全に物質化し、そして瞬間的に波に変わるのだ。

第3座標軸は、我々の世界を限りなく圧縮したものなのだ。

鎮也は、その中をテレポートしたのだ」


 レオがアインに訊ねた。

「では、この世界は5次元だというのか」

「そうだ。

ありえないが、そうとしか考えられない」

「ペンタダイバリオンは、どう関係しているのだ」

「解らない。

だが、それが元凶だと考えられる」


 この世界の空間の圧縮率が解れば、手が打てそうだ。

いや、この世界というより、第3座標軸か。



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