ドアストッパーマン
「フンヌッ!!!」
やった。今日も止めてやったぜ。今にも閉じそうになってるドアをな!ただあれだな、最近同じ木製のドアしか止めてないから刺激が足りないなぁ。もっとガツンッ!って来るような相手はいないものか。ちょっと持ち場を離れて色々な物を止めてぇーなー!
良し!旅に出よう。
第一章
ん?おっ!ギンギラギンに光ってるドアがあるじゃねぇか!
あれは重量級だなぁ。ドアを開けるやつも重そうな顔してたしな。
うん!良し!
…早く開かないかな。
「…………ガチャッ!!」
よーーし!きたきた!行くぞぉ!
「へへ、ソリヤ!ヘブッ!??」
くっ、なんだこの重さは!?気合い入れた分、ビックリ感も半端なかったぜ。んぬぬぬ…駄目だ!一回相手にペースを握られちまったら、そうそう返せる代物じゃないぞ、このドア!!くそぉ、ドンドン押し返されていく!
ぬおーーーー!!あーー!!
「キィィー」(ドアが開く音)
「アヒゃッ!?」ドテーーン!!
…負けた…人間が帰ってくるまで守ることが出来なかった…くっ…
良し……次へ行こう。
第二章
ふぅ、着いた。あいつが今度の相手かぁ。見た感じ弱そうだが、さぁてお手並み拝見と行きますか!
……まだ開かないのかな?
「キィィー」(ドアが開く音)
ヨッシャ!飛び込め!!
「ドリャッ!?あ、あ、あれ?」
何だ!?簡単に止められたぞ?拍子抜けだ。今の俺には生温い相手だったな。
こんなやつ片手で十分だ。いや、お尻で十分だな!ったく、ヨイショ!ちょろい相手だっ………な、何ぃぃ!!!
もう片方のドアも開いているだとぉ!?しかも閉じそうになってる!?いかん!!!急がねば!!
「チェリヤ!!?あれ?」
こいつも大したことないじゃないか!ビビらせやがって!お前もお尻で止め……ノォォォォ!!
さっきのドアが閉まりそうじゃないか!?い、いかん!!それっ!!
ふぅ……やっと…イヤァァァ!?
またか!?一体どういうことなんだ!!コッチを止めればアッチが閉まって、アッチを止めればコッチが閉まるじゃないか!!
ええい!考える事はしない!!どうにかなるさ!!うぉぉーー!!
……結果、なんとかお尻と腕で両方止めることが出来た。だが……もう閉まる一歩手前じゃん…変な体制だし……人間が通ることが出来ないんじゃ意味がない…完敗だ……
良し!こいつはこの辺でいいか!次!!
第三章
おやぁ?あれもドアなのだろか?さっき人間が中から出てきたようだったからきっとそうなのだろうな。しかし、不思議なドアだ。どういう仕組みになってんだ?
……早く開け、この野郎!
「ガラガラガラ」(開く音)
な、上に開いただと!?俺の身長を考えたら人間が通るのは無理だが……いやいや、なんとかなるさ!!そーれ!!…………ん?
…………………あの…落ちてこないんですけど…
意味ないじゃん!いや、最初から身長的に意味ないと思ってたよ。俺も!でも挑戦したいじゃん!レッツ、トライじゃん!!!
はっ!?待てよ、止まっているということは止めてる奴がいるってことか!?誰だ!何処だ!姿を見せろ!!……返事もなしか…
しかし、凄いやつもいるもんだ!こんな理解出来ないドアを止めちまうやつがいるなんてな!!
世の中はまだまだ広いっつーことだな!おっ?人間がきたぞ。
「ガラガラガラ」(閉まる音)
…ちょっと挑戦してみるか、
セイッ!!俺は勢い良く飛び込んだ……
「あだだだだだだ!!ちょっ、あ、駄目!!あ!!」
ハァハァ…あっと言う間だった…そりゃそうなるわな。向こうは完全に閉める気持ちでやってんだから、勝てるわけがない!
次だ!次!!
第四章
あれは?この前戦った、上に開くタイプのドアだが…明らかに違うのは人間が手を加えてないということだな。離れた場所にいたのに、開いたり閉まったりしてた。ということは……チャンスじゃない?人間には力で勝てないってことをこの前学んだ俺に死角はない!次こそは!!
……早く開けっつーの!!
「ガラガラガラ」(開く音)
はいっ!待ってました!!いよっ!!………そうか…すぐには落ちてこないんだったな。またこの扉も止めちまうなんて、あっぱれなやつだぜ。誰だかわからんが…
そうだ!少しでも高い位置で止められるように何か無いだろうか?おっ!この四角い木の箱がいいなぁ。ヨイショヨイショ…これを止めることが出来たら、最初に挑んだ鉄の扉や、なんか両方開くやつも攻略出来そうな気がする。良しっ!準備は万端だ!!いつでも降ろしてくれて構わんぞ!!
ソワソワ…ドキドキ…
「ピッ!ガラガラガラ」(閉まる音)
おお?来たぞ!よしっ!さあ、俺にその力を見せてみよ。いや、魅せてみよ!!!
「あぎゃーーーー!!あれ?全然、勢いが弱まらない……おぉ…くっ、だ、だーーーー!!」
俺は咄嗟に避けた。その瞬間!!
「バキバキバキバキ!」
ぞー…あわわわわ……見なかったことにしよう。
さ、次へ!!
第5章
随分遠くへ来たもんだ。人間がいっぱいいるが、どれも似たようなドアばかりだからつまらんな。俺の相手になりそうなのわっと。ん?あれか。あの透明なやつ。
人間が手を加えている様子もないし、横に空くタイプなんだな。しかし、あんなに出入りしてるのに開いたり閉まったり、なんか中途半端だなぁ。ほらまた、閉まり切る前に開いてる。見ちゃおれんな!あれが止まればみんな喜ぶに決まってる!!
位置はこの辺でいいかな?人間が2人いっぺんに通れるんじゃないか?ってくらいだな!こいつは大仕事だ!!まずは作戦をキチンと……あ、開いた!!いや、待て待て。ここは落ち着いて。作戦をたててだな…
「ウィーン、ウィーン」(ドアの音)
「いや、だからね。」
「ウィーン、ウィーン、ウィ、ウィーン」(扉の音)
……えーい!!当たって砕けろ!
ガシッ!!ぬっ!?駄目だ!後退している!?くそぉ!!負けるかぁー!
あ!
「ウィーン」
ちょっ、待って!!仕切り直しか…よしっ!来いっ!
ハッ!ガシッ!!ウヌヌヌ!さっきより重く、感じる…くくぅ!!やぁぁぁぁぁ!!
「ウィーン」
…ハァハァ………
ガシ。ずるずるずる………
もう!!なんなの!!!閉まれよ!…いや、閉まったら閉まったで困るんだが、何!?どうすんの!?どうすればいいの!?
…人間が少なくなるまで待つか…
うっし!だいぶ少なくなってきたな。閉まるようになってきたし。そろそろ行ってみますか。
「ウィーン」
はいはいはいはい!!ほっ!!
ガシッ!!むーー、休憩したから力が全然違うぜ!この、や、ろ!セイッ!セイッ!!
「ブーー」
え?何?何?なんの音?え?
「ブーー」
え?あ、やばい!!気を抜いてしまった!だいぶ押し込まれたぞ!これは罠か!?そうか、そうか!動揺させようってんだな!負けるかぁぁ!!!
「ブーー」
駄目だ!!あーーーーー!!!
「ガチン!!ブーー………」
………その後の記憶はあまりない…俺はきっと負けたんだろう。だが悔いはない!俺の両腕と両足は何故か短くなってしまってはいるが、これがなかなか様になってるではないか!あちこち傷だらけだし。
ん?今どうしてるのかって?
相変わらずな生活さ!
誰かが開けた扉を閉じないように必死で抑える、それが出来るのは俺だけだから!先に進みたいから扉を開ける、それを誰かが閉めたら可哀想だろ。もし、戻ってくるのなら自分の力で閉めに来いよ!それまで俺が開いた扉を守っていてやるよ。いつでも戻って来られるように。
さて、今日も仕事の時間だ!守ってやるさ!
この、木製の扉を!!
完