なんとか協力出来ませんか?
拷問官は指を突きつけ、声を張り上げる。
「そんなの、情けないって言ったら貴方もですやん。男の癖に捕まったらダメですって。こういうのは女の方が捕まって、僕に色々助平な事される展開が王道でしょ?」
レベルは顔を真っ赤にし、声を荒げる。鎖がガチャガチャと鳴り、牢の空気が震える。
「ば、馬鹿者! そんな下品な話はもううんざりだっ! 俺は決して屈したりはしない!」
拷問官は手を振って、苛立ったように続ける。
「だから、その『屈する』とか言うのもやめて下さい! それは女性が言うから成立するセリフなんです! 貴方は男性!」
レベルは混乱する。縛っている縄が軋む。額の汗が石床にぽたりと落ちる。
「う、うるさい! そんな細かいことまで言われても…どうすればいいというんだ…」
拷問官は両手を広げ、牢の天井を見上げる。
「僕かだってわかんないよ! 貴方、女に変身する魔法とか使えないの!? こういうのは野郎二人では成立しない物語なんです!」
レベルは困惑しつつ、声を震わせる。縄が肌を擦り、鎖が軽く鳴る。
「ま、魔法など使えるわけがないだろう…俺たち騎士は剣でしか戦わない…」
拷問官は腰を叩き、声を張り上げる。
「なんでそこだけ律儀なんですよ!? 貴方が女体化して、『くっ、殺……』って言ったらこの物語は成立するんですよ!? なんで貴方、魔法使えませんの!?」
レベルは目を見開き、顔を背ける。小声で呟き、縄が軋む。
「な、なんだと…女体化だと? そんな馬鹿げたことが…できるはずがない…」
拷問官は頭を抱え、牢の壁に額を押し付ける。
「もうこれは貴方の一族に言っておいて下さい! 女体化の魔法を義務として覚えさせて下さい! それが嫌なら、こんな風に捕まらないような絶対的な力を手に入れて下さい! これ、僕、どうしたらいいかわからないっす!」
レベルは顔を真っ赤にし、慌てふためいた様子で叫ぶ。鎖がガチャガチャと鳴り、松明の炎が揺れる。
「わ、わかったから! 落ち着け! 我が家系の者にも無理難題を押し付けるな!」
騎士ってとって誇りとは重要である。
しかし、その誇りが時に枷になる事もあるのだ。
二人がこの物語の落とし所を見つけられないのは、まさに戦争の落とし所を見つけられない所を表しているのかもしれない。




