8、揺り籠
バレンタインもらえましたか?
んー、いやーなんだか最初よりも体が軽くなった気がしますね。角で何作りましょうかね〜?あ、そうそう魔力視で夜空を見ようと思ってたんでした。
私は夜空を見上げ、そっと意識を集中させました。
「――【魔力視】、起動」
その瞬間、世界から「暗闇」が消え去りました。 肉眼ではただの黒い天幕に星が散らばっているだけだった空が、無数の魔力の奔流が渦巻く、極彩色の海へと変貌したのです。
星々はただ光っているのではなく、それぞれが膨大なエネルギーを放出し、目に見えない光の帯……星間物質や魔力のラインで複雑に結ばれています。複雑に見えて、繊細な星々の交流。
「……綺麗。これ、いつまでも見ていられますね」
クトゥルフ風にいうなら「あなたは星に魅入られました。SAN値チェックです」って言ったところですかね。
※⚠️警告⚠️※
あたなは星に魅入られかけています。それ以上は危険です。直ちに目を離してください。
永久発狂寸前です。危険です。危険です。
バッ
「ふ、ふふ、あは」
フラグ回収ってやつですか?あぁ危ない危ない。あれですね、「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」ってやつですね。私、MID低いんですがねぇ、なんで戻って来れたんでしょう?楽しいなぁ、
おや?
街を囲む城壁内側の、ハッブルさんが教えてくれた「北門近くの噴水」のあたりから、ひときわ強い、しかし柔らかな光の粒子が立ち上るのが見えました。
「運がいいのか、悪いのかわかりませんね」
街に入ると、そこには時間が止まったような空間がありました。 古びた石造りの噴水。その周囲を囲むように咲き乱れる、見たこともない透明な花々。楽しそうに飛び回っている精霊たち。ハッブルさんが言っていた通り、そこは「精霊の揺り籠」でした。
『おや、珍しい。異界からきたのか。それに、数多の世界で恐れられてるようだ、何をしたのか?』
優しい目をした、他の精霊たちよりも魔力が多く、体も大きい、女性の精霊が話しかけてきました。
数多の世界、いろんなゲームの話ですかね?まぁ、ID遡れば個人情報なんてゲーム会社には筒抜けですし、こういうことも可能なんですかね。
「初めまして、コスモと申します。何をしたか、ですか。ふふ、自分がしたいこと、好きなことをしただけですよ」
私の答えに、その精霊――上位精霊とでも呼ぶべき存在は、小さく、鈴の鳴るような声で笑いました。
『好きなこと、か。自分の好きを愛すことはいいことだ。ただ、気をつけるんだな。お前は異界人のようだが、神の力で消えれば、戻ってくることはできない。虚無になるぞ』
キャラクターロストってことでしょうか。
「虚無、ですか。それは困りますね。私、まだこの宇宙の端まで見ていないんです」
私が淡々と、しかし本気でそう告げると、精霊は驚いたように目を見開き、そして愉快そうにその身を揺らしました。
『ふふ、面白い子だ。そうだ、お前さっき、音を奏でていただろう。あの草原で、命を散らす、不協和音を。』
精霊の言葉に、周囲で舞っていた小さな精霊たちが一瞬、怯えたように光を強く放ちました。範囲は指定していましたが…精霊は精神的な存在ですから、届いてしまったんですかね?
「あぁ、あれですか。お耳汚しでしたね。ウサギどもの駆除に、少しばかり。でも、普通の演奏もできますよ。」
「そうか、なら頼みがある。今夜は新しく精霊が誕生する夜でな、それを祝うように、できるか?」
ピーン
《特殊イベント:【輝く夜の祝祭の演奏者】が発生しました!》
精霊の誕生を祝う祭の演奏者を任されました。精霊たちを満足させましょう。
「祝祭の演奏者、ですか。……いいですね、そういう趣向は大好きです。そうだ、精霊の皆様、この糸見えますか?」
私はさっきと同じく、数十、数百の糸を張り巡らせます。
『きれい』『キラキラ!』『いっぱい!』
精霊たちは無邪気に笑いながらそう言います。
「よかった、見えてますね。この糸の上で好きなように踊ってほしいのです。私が皆さんの踊りに合わせて、演奏しますから。皆さん宜しいですか?」
『きゃはは!』『どきどきー!』『うん!』
精霊たちは糸の上で跳ねながらそう答えました。彼女らが跳ねるたび、ぽろん、ぽろんと優しい音色が響きます。
「即興・戯曲・協奏曲『生命の戯れ』」
指を弾くと同時に、不可視だった糸が七色の光を放ち、夜の空気そのものをプリズムへと変えました。 精霊たちがその光の糸に触れるたび、クリスタルの鐘を叩いたような、清澄で温かな音が草原を渡っていきます。
戯曲って劇などの舞台の台本という意味なんですけど、私は「精霊たちの誕生」とか「精霊の聖夜」とかそういう舞台だと思っているので。台本で役者を導く、台本を役者に合わせて調節する。どちらかというと指揮者みたいですね。
『すごい!』『おもしろい!』『あったかいね!』
光の糸を五線譜に見立てて、精霊たちが音符のように跳ね、回ります。 やがて噴水の中心から、ひときわ眩い光の繭が浮き上がり、パリンと割れました。 新しく生まれた小さな精霊。その産声に合わせて、私は祝福を込めて最後の音を奏でます。
【祝祭の香】
〈新精霊が〈音の祝福〉状態になりました〉
演奏が終わると、夜の静寂が以前よりもずっと優しく、温かなものに変わっていました。
『素晴らしい、ありがとう。今日生まれた精霊たちはきっと、強い子になるだろう。これは謝礼だ』
精霊さんが満足げに頷くと、私の視界にこれまでにないほど大量のログが流れ落ちました。
ピーン
《特殊イベント:【輝く夜の祝祭の演奏者】を最高評価でクリアしました!》
《称号【異次元の演奏技術】を獲得しました》
《称号【精霊の友垣】を獲得しました》
《スキル【精霊演奏】を獲得しました!》
《アイテム【精霊の絹】を獲得しました!》
《隠しステータス【感性】が解放されました》
《全STP10獲得》
《SKP 30 獲得》
おおおー、多い多い多い、これはまた、大盤振る舞いですね。イヤ、でも楽しかったです。久々に演奏しましたね、少し鈍ったなぁ。でも、皆さん楽しそうでしたしよかったです。
ん?グロウさんがこちらに手を差し出して、私の手を握りました。なんでしょう、魔力とは違うモノを感じます。
『異界の子よ、最後に、私の祝福を授けよう。ぜひ、この世界を楽しんでくれ。ではな』
《花の上位精霊〈グロウ〉の祝福を受けました》
〈上位精霊「グロウ」の加護により、全属性魔法の威力と消費効率が上昇しました〉
そう言ってグロウさんは精霊たちと共に、夜風に吹かれて消えていきました。さっきまでとは打って変わり、静寂が辺りを包みます。足元には、精霊たちが踊っていた名残か、透明な花々がより一層強く輝いています。これとってみますか。
そう思い、屈もうとした時、
ピーン
《精霊の生誕祭が終了しました。精霊の残滓を取り込みますか?》
『は、』ぃ…や、これ、自分の中枢魔石じゃなくて他のに取り込めないですかね。う〜んでも、スライムの核もホーンラビットの角も小さいし……ここさっきまで精霊たくさんいましたし、なんか落ちたりしてないですか?んーこの花使えないですかね?魔石判定になるんですかこれ…!鑑定してみますか。
【月霊晶華】(素材・魔力系・変異)
精霊が誕生した瞬間、溢れた生命エネルギーと月光を吸収して変異した幻の花。結晶のような見た目で、純粋な魔力の結晶体に近い。エネルギーを吸収すればするほど、結晶化し美しく咲き誇るという。
[属性]精霊・月光
[品質]A
[変異度]79%
[結晶化]80%
[ランク]SR
おお、ちょうどいいですね。じゃあこれに取り込みますか。取り込む対象を、この【月霊晶華】に指定。実行してください。
ピーン
《対象:【月霊晶華】が精霊の残滓を取り込みます……成功しました》
《変異度が100%になりました。完全開花を開始します…》
《結晶化が100%になりました。》
イレギュラー
〈星の瞬きを観測…〉
〈【月霊晶華】が吸収を開始しました…〉
〈【月霊晶華】が変質します…〉
《周囲の【月霊晶華】が共鳴進化します…》
ねーなんかやばそうなんですけど!なんで星が…さっき見たからですか?【月霊晶華】もなんかやり始めたし…パキパキ言ってる…まぶしっ、はー?えーんー【魔石鑑定】、発動
んなぁにこれぇ
【星辰晶華】(素材・魔力系・成長)
精霊の生命、月光、そして観測された星々の瞬きを吸い込み、完全に結晶化した奇跡の華。
内部には広大な魔力貯蔵空間を有し、常に宇宙のエネルギーを微弱ながら自己生成し続けている。
[属性]無・星・精霊
[品質]S
[成長度]36%
[魔力貯蔵量]21%
[魔力生成率]5/1s
[ランク]EX
あっはは、まじですか?えぇすご、語彙力なくなりますね。
う〜んやっぱまだ扱えないみたいですね。当分の目標はこれが扱えるようになること、ですね〜。でも、綺麗なものは、持っているだけで気分がいいですね。
そういえばこの周りのやつも、進化してたような…【星屑霊結晶】ですか
【星屑霊結晶】(素材・魔力系・共鳴)
【月霊晶華】と星の光が混ざり合い、結晶化した欠片。魔力を通すと微かに星の瞬きのような音を奏でる。とても加工しやすく、他素材の強化によく用いられる。
[属性]星・精霊
[品質]A
[ランク]UR
…全部持ってちゃいましょ、全て私のモノです。あ、進化してない【月霊晶華】も持っていかなきゃ。あ、これ重なるじゃん、よっしゃ!いっぱい摘むぞー!
ふぅ、うん、こんくらいでいいでしょう。全部持っていくのは精霊が可哀想ですからね。
この後どうしよっかなぁー。とりあえずクエスト達成報告に行ってから考えますか。
【星辰晶華】あの子の心臓にできますけど、多分スキルレベル30イヤ40越えないと使えなさそう。今日ログイン制限まで後ゲーム内時間で24時間はあるんですよね。そうだなぁ、東西南北にそれぞれボスいるみたいですし、そいつら倒して、進化までいきたいですね。報告したら一回トイレとご飯休憩しますか。ちょうどお昼ですし、
つきましたー、え〜バンさんまだいるじゃないですか。
「バンさ〜ん、納品に来ました」
バンさんはお疲れなのか、だるそうな声で言いました。
「右にスライム、左にホーンラビットだ」
「はい」
あ、ギルドカードも一緒に出しておきましょう。
「お、助かる、…5、…10、…10…よしぴったりだな。にしても嬢ちゃんが持ってくるものは総じて品質がいいな。」
「ありがとうございます。方法は企業秘密ですよ」
「わかってる。あぁ、それと嬢ちゃん。お前のカード、ランクアップまでの『星』がもうあと二つだ。スライムとウサギをこれだけ短時間で乱獲してくりゃ当然だが……。普通、登録初日にここまでやる奴はいねぇぞ」
バンさんがため息混じりでそう言いました。
「ふふ、そうなんですか?楽しかったので、つい」
私はバンさんからギルドカードと報酬の経験値オーブと銅貨を受け取り、ギルドを後にしました。ログアウトの前に、オーブを割りますか。
《Level UP!》
おめでとうございます!
種族Levelが3上昇しました!Level 16
MジョブLevelが2上昇しました!10ステータスポイントと20スキルポイントを獲得しました!
次のLevel UPまで残り 420 経験値。
9→11
STR 20 +1
VIT 3
INT 25
MID 3
DEX 20
AGI 26 +4
LUK 10 +5
さて、一旦ログアウトですね。
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