13、初めまして
[日間]VRゲーム〔SF〕 - すべて、でトップ5にランクインしてました!!
たくさん読んでいただいて、とても嬉しいです!!信じられないくらい、狂喜乱舞しております。
本当にありがとうございます!!!!
店主さんのとこに行く前に、マギさんに一時的に外出することを伝えておきます。
「マギさん、少し外に出ますね」
「あいよ。あ、ちょっと待ってくれ」
「はい?」
どうしたんでしょうか。
「あんた、いくつか魔道具を作ったかい?」
「はい」
「それ、売る予定はあるかい?」
「えぇ、売りたいとは思っています」
「そいつはよかった。うちのギルドの【委託販売棚】を使ってみないかい?使い方は簡単だよ、金額を決めて、物を突っ込んでおくだけ。それとあんたら異界人なら、わざわざギルドまで来なくても買えるらしいね」
「へぇ、便利ですね」
「ギルドの信用を積めば、露店を出すこと、ましてや店を持つことだって夢じゃないさ。」
「お店…いつか、宇宙をモチーフにした、お店作りたいなぁ」
「宇宙…?主神様のお店ってことかい?あんた、案外信仰心が強いんだね」
マギさんは感心したように頷きましたが、私は内心で苦笑しました。主神様も確かに星の象徴ですが、私の言いたいのはもっと物理的で、天文学的なロマンのことなのですが……。まあ、この世界では似たようなものかもしれませんね。
ワールドアナウンス!
【露店・店舗経営】ならびに【委託販売システム】が解放されました!
詳しくはヘルプをご確認ください。
「それじゃあ、この棚を使いな。売上は自動でギルドカードに振り込まれる仕組みさ」 「ありがとうございます。助かります」
私は早速、作り上げたばかりの魔導具たちを【委託販売棚】へと並べていきました。
【ルミナスランタン】を4つのうちお気に入りの2つを手元に残し、残りの2つと標準的なランタンをすべて。 さらに【白兎角のアミュレット】や【ヤミ兎のアミュレット】。 【使い捨て魔法玉】【使い捨てスクロール】の闇属性セット。 【使い捨てウッドゴーレム】と【ストーンゴーレム】。 そして、基本6属性の短杖シリーズ。 棚の中に私の作品が吸い込まれていきます。適正価格が分からなかったので、相場より少し高めに設定しておきました。私の技術料、ということで。
ピーン
《委託販売を開始しました。売却時、ギルドに手数料5%が徴収されます》
《称号【新米商人】を獲得しました》
「よし、準備万端。マギさん、行ってきますね」
「ああ、気をつけてな。商売繁盛を祈ってるよ」
ギルドの戸を開けると、朝焼けが私を包みました。宇宙にはグラデーションがかかっています。私はその宇宙を見上げ、一度深呼吸をして歩き出しました。
道中、露店の準備を始める人達をちらほら見かけながら、あの店へ向かいました。
路地裏の古びた人形店。もう開店の札が掛かっています。
その年期の入った戸を開けると、乾いたカウベルの音が響きました。
「――いらっしゃい。おや、昨日の……」
そこまで言いかけて、店主さんは唖然とした表情で固まってしまいました。その視線は私の背負っている七罪万象を見つめています。
「お嬢さん、たった1日でどうやってここまで…」
「色々ありまして。……彼女は、奥に?」
「ああ……もしかして、もう動かせるのか?」
「まだ無理です、一回、彼女の顔を見ようと思って」
「そうか、彼女は、店の奥だ」
店主さんは、私の背後で静かに佇む『七罪万象』に隅々まで見たいといった、好奇の目を向けながら、店の奥へと私を導きました。
カーテンを潜った先、そこには作業台に横たわる、あのボロボロだった人形がいました。
手足は継ぎ接ぎで、顔には無数のひび割れ。でも、不思議と悲壮感は感じなくて。
「お嬢さん……あんた、本当にこの子を、動かせるのか?」
店主さんが、震える声で問いかけてきました。私はこの子の頬を撫でてから、店主さんの目をまっすぐ見ました。
「せっかくこの素敵な世界で作られたのに、生きられないなんて、もったいないと思って。私のエゴですけど、彼女に人生を届けたいんです」
店主さんは一瞬、目を見開き黙り込んでしまいました。そして、どこか遠くを見つめ、悩むような顔をし、首を横に振り、顔を上げました。
「……私は、昔、神導十二宮・双子宮マリオネットマスター兼最高位裁縫師ジェミニ・ノヴァ・ディヴィヌス・ライトウィングの弟子だったんだ」
「神導、十二宮…」
「自分は試験で『自分が作れる最高の人形を作れ』と言われ、この子を作った。だが、なぜか、起動しなかったんだ。「あなた、わかっていないのね。…ダメね、人形師として。」と言われた。だから、弟子と名乗ることなんて、できなくなってしまったけど、君なら…」
店主さんは、どこか縋るような目で私を見ていました。
店主さんは立ち上がり、棚の奥から古びた、双子座の星座記号が刻まれた手紙を取り出しました。
「これは、あの方への紹介状だ。試験の後、「その子を本当に理解できる人物を見つけたら」と渡されたものだ。君は、まだ無理だと言っていただろう?あの方のところで、修行をつけてもらうといい」
私は、店主さんから差し出されたその手紙を、両手で受け取りました。
古びてはいるけれど、丁寧に保管されていたことが分かります。封蝋には、双子座を象った紋章が刻まれていました。
双子宮、双子座、ということですよね。なら、十二宮とは、黄道十二星座のことでしょう。いつか、全ての方に会ってみたいですね。
ノヴァ様、マリオネットマスター、私の目指すべきお方といえるでしょう。こんなすぐに知ることができるなんて、嬉しいですね。
「その紹介状には転移の魔法が付与されている。魔力を込めれば、ノヴァ様とその妹君であるステラ様のおわする【双星の塔】へ行ける」
「…ありがとうございます」
私は、封蝋の刻まれた双子座の紋章を指でなぞりました。
ほんのりと、微かな魔力の脈動を感じます。
転移魔法。
それも、おそらくかなり高度なもの。
「……今、使っても大丈夫なんですか?ノヴァ様のご予定とか…」
「構わないさ。むしろ、あの方は待っているはずだ」
「待っている?」
店主さんは少し苦笑しました。
「……あの方はね、妙なところで勘が鋭いんだ。『その子を理解する者が現れた時、その子は動き出す』ってね」
「そう、なんですか。彼女、連れていってもいいですか?」
「もちろんだとも」
店主さんは即答しました。
「むしろ、その子のことを一番理解しようとしているのは君だ。連れて行ってやってくれ」
私は少しほっとした気持ちになりました。
そっと人形の体を持ち上げます。見た目よりずっと軽い。壊れてしまいそうなほど繊細なのに、不思議と芯のある重みを感じました。
アイテムボックスから布を取り出し、人形を包み込みました。
店主さんは黙ってその様子を見守っています。
それから、私は紹介状を胸の前に掲げました。
封蝋の双子座の紋章が、淡く光り始めます。
「じゃあ、行ってきます」
魔力を込めます。
すると、封蝋が静かに溶け、星屑のような光が空中に広がりました。
その光は床に降り、やがて魔法陣を描き出します。
見たこともないほど精密な転移陣。
星座の線が幾何学模様のように組み合わさり、中心に双子の星が浮かび上がりました。
店主さんが思わず呟きます。
「……相変わらず、とんでもない魔法だ」
光が、溢れました。視界いっぱいに広がる星屑。
足元の魔法陣がゆっくりと回転し、星座の線が一本一本、夜空のように輝いていきます。
身体がふわりと浮く感覚。重力が消えたような、不思議な浮遊感。
次の瞬間――
世界が切り替わりました。
静寂。
まず、耳に届いたのは風の音でした。さらさらと、どこか高い場所を吹き抜ける風。
目を開くと、そこは塔の内部のような場所でした。
円形の大広間。
床は白い石でできていて、中央には巨大な星図が描かれています。見上げると、天井はガラス……いや、ガラスではありません。まるで本物の宇宙が広がっていました。
深い紺色の空。ゆっくり流れる星々。銀河の帯。
思わず声が漏れます。
「……手が、届いてしまいそう…」
本当に、宇宙みたいでした。
「ーーふふ、皆『綺麗だ』というけど、そう言ったのは貴方が初めてね」
その声は、すぐ後ろから聞こえました。
振り返ると、そのお方は私をみて、口元に弧を描きました。
「あら、あらあら?あなた、その魔力…へぇ」
そのお方は、面白いものを見つけた子供のように目を細めました。
長い銀色の髪が、星明かりを受けて淡く輝いています。
瞳は深い群青。まるで夜空をそのまま閉じ込めたような色。
小柄だけれど、上品で、美しい不思議なお方。
私は人形を包んだ布を魔法糸で支えてから、初期服の短いスカートの裾を摘み、カーテシーをしました。
「初めまして、コスモと申します」
「礼儀正しいのね。嫌いじゃないわ、そういうの。私はノヴァ、ジェミニ・ノヴァ・ディヴィヌス・ライトウィングよ」
おやおや、私のものより美しい所作で返されてしまいましたね。なんとも格が違う。今のままでは勝てそうにありません。
「あら、あの子も嗅ぎつけたのかしら。コスモ、後ろ気をつけて」
ノヴァ様がくすりと笑いながらそう言った瞬間、風が、弾けた。
考えるよりも先に身体を半歩ずらすと、さっきまで私が立っていた場所に白い影が着地しました。その陰に向かって反射的に槍を向けます。あ…
…双子座、あの子、もしかして、妹君ステラ様でしょうか…急いで槍を引っ込めます。
「無礼をお許しください。ステラ様」
「わかるんだ」
「はい、こちらに来る前に、妹君もご一緒におられるとのことでしたので」
ステラ様は短く揃えた、ノヴァ様と同じ銀の髪。闘気を宿した恒星のようなオレンジがかった黄色の瞳。ノヴァ様が西洋なら、ステラ様は中華というような、漫画などでよく見るカンフー服を着用されています。
「へぇ、姉さんこの子、主神様が」
「そうね」
主神様…?注目を受けているからでしょうか、わかるんですかね。
…まぁ神導、十二宮ですから、神様の気配に敏感とかなんでしょう。
「ねぇ、コスモ、お前人形族だよね?」
「はい」
「見た目はちゃんと人形族なのに、中身が面白いことになってるわね」
「人形族は、付喪神のような存在だから、自我が薄かったりするけど、お前は逆。魂がギラギラと輝いてる」
「魂、ですか。異界人ですからね、この世界の人形族とは違うのでは?」
「それはそっか」
ステラ様がその言葉を言い切るかどうか、といった瞬間ノヴァ様がコホン、と咳払いをした。
「一番最初に言おうと思っていたのに、話が逸れてしまったわ。ねぇ、コスモ?貴方ここに来た理由は、その子でしょう?」
ノヴァ様の目線が、糸で支えられたままの人形に向きました。
「はい」
私は頷いてから、人形を包んでいる布をとり、お二方に見せました。
塔の星明かりが、そのひび割れた顔を静かに照らします。しばらくの沈黙の後、ノヴァ様が口を開きました。
「懐かしいわね…魔導回路はあの時のまま。外見は良くないけれど、あの子、丁寧に保管していたのね。」
ノヴァ様はひび割れた箇所にそっと、触れました。その仕草は、親が子に与えるような、慈悲深いものに見えました。
「…あら、そうなの?その子のお陰?」
ノヴァ様は何だか、人形と話しているような、そんな風にポツポツと言葉を漏らしています。
「コスモこの子、貴方に起こしてほしいみたいよ」
「私に…」
「ええ」
「私は彼女を起こせるような職人じゃないと思います。まだ、出会って一日も経っていませんが、彼女に惹かれているのかも。生きて欲しいんです。神導十二宮の弟子が命をこめて作り上げた彼女に、ひよっこの私が命をあげるなんて、夢見事だって」
お二人は静かに、私の独白に耳を傾けています。その表情はとてもお優しいものでした。
「物を作るのと、命をあげる、これは全く違うこと、でも生きて欲しいんです」
ノヴァ様とステラ様は互いに見つめ合い、こちらに向き直りました。そしてノヴァ様が柔らかく笑いました。
「その気持ちがあるなら十分だわ」
「うん、姉さん」
「「コスモ、私たちの弟子になりなさい」」
弟子…いいのでしょうか、一日目なのにこんなに素敵なことがたくさんあっても、これは断る理由がないですね。
「よろしいのですか…?ならせてください、弟子に」
「私たちは厳しいわよ」
「これから面白くなるよ、コスモ」
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