ヒロイン交流会
「先輩は一人で相談中なので今回は私の出番です」
「それにしても知りませんでしたよ、相談所の上の階に、カフェがあるなんて、教えてくれない先輩は意地悪です」
※マニュアルにも書いてあるし、相談所からも説明は受けています、ただ結衣が真面目に話を聞いていなかっただけです
チーン
「あっエレベーター来ました」
ウィーン
扉が開く。結衣は乗り込む前に、少し身構えた
「よいしょっとエレベーターに乗るのって少し緊張します、この前は服が扉に挟まれて大変でしたよ」
「あの〜結衣さんですよね」
結衣が振り返ると、そこにいたのは見覚えのある顔だった
「はいそうですが?あっ!あなた前に来ましたよね確か...幼さんです」
「そうです」
「なんでここに?、はっ!もしかして振られちゃったとか」
※第二話参照
「違います、無事付き合うことができました」
幼は嬉しそうに報告した。
「本当ですか!?勇気出してよかったですね。じゃあ今日はなぜ?」
結衣は目を輝かせ、幼の成功を心から喜んだ
「今日はカフェに来たんです」
「私もちょうどカフェに行くところなんです一緒に行きましょう、それにしてもヒロインも利用できるんですね」
※もともとカフェはヒロイン同士の交流をするための場所です、マニュアルにも書いてありますし以下省略
その時、エレベーターの中から苛立った声が飛んできた
「ちょっとあなた達早く降りてくれる私が降りられないじゃない」
「すみません、今降りますね」
結衣と幼は慌ててエレベーターを降りた
「別に謝らなくていいわよ、あんたたちがついたのに気づいてなさそうだったから教えてあげただけなんだからね」
顔を赤くしてそっぽを向く彼女は、明らかに照れているようだった
「えっ!?あぁ恋さんですね、帽子を被っていたのでわかりませんでした、話しかけてくださいよ」
「偶然あなたを見かけたからこの前のお礼を伝えようと思ったけど、どのタイミングで話しかければいいかわかんなかっただけなんだからね」
「そうなんですね、よかったら恋さんも一緒にどうですか、良いですよね幼さん」
「私は構いませんよ、大勢のほうが楽しいですから」
「なんで私があなた達といっしょに食べないといけないのよ」
「いやなんですか?」
結衣が素直に尋ねる
「しょうがないわね、今回だけなんだからね」
「で?カフェはどこにあるんですか」
結衣がキョロキョロと周りを見回した
「さぁ、私も初めてきたので」
「あんたたち知らないで来たわけ?ついてきなさいこっちよ」
恋は、呆れたようにそう言うと、スタスタと先を歩き始めた
恋の案内で無事にカフェに到着した、カフェは賑やかで、人の話し声で溢れていた
「混んでますね〜空いてる席がないです」
結衣が心配そうに呟いた。席はどこも埋まっているように見える。
そんな中、近くの席から賑やかな声が聞こえてくる
「でねこの彼の写真とか良くない、この前撮ったの、かわいいでしょ!」
「私のお兄ちゃんはね、不器用だけどいつも私のことを思ってくれるしねこの前なんかもね」
「ふたりとも本当に大好きなのね」
二人のヒロインが熱弁をしてそれに頷くヒロインの姿があった
「あんた、なにやってんのよ」
その会話に、恋が眉をひそめて近づいていった
「あ?恋ちゃん、結衣さんも隣の子は初めて見ますね」
「はじめまして染馴 幼です」
「はじめまして私は曽生 恵です、よかったら3人も一緒にどうですか?」
「良いんですか?席空いてなかったので助かりました、恵さんと恋さんは知り合いだったんですね」
結衣は二人に質問をする
「まぁ私も恋ちゃんもよくここを利用するので」
「そうなんですね、それで3人は何をしていたんですか」
「私は彼のことについて話してたの」
「私はお兄ちゃんのことを」
「私は複数人と話す練習を」
「せっかくだし自己紹介やらない?」
結衣が笑顔で提案した
「いいですねそれ」
結衣の提案に恵が同意をする
「じゃあ私から、葉宮 結衣です、好きな人は先輩です」
結衣は、迷いなくそう告げた
「染馴 幼です、え〜と私には最近できた、幼馴染の彼氏がいます」
幼は少し照れながら自己紹介をした
「津出 恋よ」
「聡です、好きな人は塩尾 聡君です」
にこやかながらも、どこか執着を感じさせる笑顔で言った
ちなみに塩尾 聡はヤンデレヒロインの世界の主人公の名前で、ヤンデレヒロインは自分のニックネームとして使っている
「盛井 宇土です、私はお兄ちゃんが好き」
宇土は純粋な笑顔でそう告げた
「曽生 恵です、好きな人は〜いないかな今は」
〈ゆい聞こえてるか?お楽しみのところ申し訳ないがもう戻ってこい〉
突然、結衣の頭の中に秀の声が響いた
〈先輩が私の脳に直接語りかけてくる!〉
〈今更何いってんだ、いつもしてただろ〉
〈なんでお楽しみのところだって知ってるんですか〉
〈どうせ、上のカフェに行ってるんだろ〉
〈なんでそれを知ってるんですか〉
〈なんでってマニュアルがカフェのところで開かれたままだし、とにかくこっちは終わったから戻ってこいよ〉
〈は~い〉
結衣は、不満そうではあったが、素直に返事をした
この間、恵は四人とそれぞれ別の会話を同時にしている
「みなさん私、先輩に呼ばれたので仕事に戻りますね、今日はみなさんと話せて楽しかったです」
結衣は、名残惜しそうに立ち上がり、皆に挨拶をした
〈ところで、テレパって近くにいる人としかできない設定でしたよね〉
〈それはアプデが入って上方修正された〉
〈そうなんですか〉
〈渡したマニュアルにも書いてあるし、説明もされただろ、ちゃんと話を聞け〉