TSヒロイン
「秀さん、男性のみを希望という方がいるので対応お任せいていいですか」
受付の女性が、秀に声をかけた
「はい、わかりました。今向かいますね」
秀は、慣れた様子で頷いた
「5番の相談室です。ではお願いします」
「ということだ。お前は休憩してていいぞ」
秀は、結衣にそう告げた
「先輩一人で行くつもりですか!?主人公はあくまでも私なんですよ!」
結衣は、不満げに抗議する
「しょうがないだろ、指名されたんだから。次の回に出番作ってやるから、マニュアルでも読んでろ」
秀はそう言い残し、さっさと5番の相談室へと向かっていった
ご利用案内
本相談所では、皆様の物語におけるご要望にお応えするため、以下のサービスを提供しております。
アドバイザーの希望・指名制度: 登場人物の皆様は、ご自身の物語の方向性や悩みに応じ、特定のアドバイザーを指名することが可能でございます。
専門相談室の設置: ヒロイン専用の相談室を10部屋設けております。その他にも、物語の主要人物である主人公、あるいは物語を彩るモブキャラクターの皆様に向けた専門の相談室もご用意しておりますので、どうぞご自身の立場に応じた部屋をご利用ください。
「へー、主人公用の相談所なんてあったんだ。マニュアルなんてちゃんと見たことなかったもっと見てみよう」
結衣は、秀が去った後、手渡されたマニュアルを読みぼそりと呟いた。
「おまたせしました、神木秀です」
「お願いします」
彼女は、どこか諦めたような顔で秀に頭を下げた
「初めてのご利用ですね。まずは、こちらに記入を」
「ハイ、書き終わりました」
彼女は、ペンを置いてシートを秀に手渡した
「仙井 天華様ですね、今日はなぜ?」
「朝起きたら女の体になってたんだ」
天華は、切実な表情で訴えた
「なるほど、性転換したんですね」
秀は、メモを取りながら淡々と答える
「そうだよ!なんでお前はそんなに冷静なんだよ!こっちは一大事なんだぞ!」
天華は、秀の冷静すぎる態度に思わず声を荒げた
「そういう方はよくいらっしゃるので、慣れといいますか」
秀は、表情を変えることなく答える。まるで日常茶飯事であるかのように
「じゃあ、どうしたら元の体に戻る?」
天華は、藁にもすがる思いで尋ねた
「そうですねまずなぜそうなったのか原因はわかりますか?」
「わかんねえからここに来たんだろうが!!わかってたらこんなとこ来てねえよ、そんなこともわからないのか」
「わからないから聞いたんですよ、そんなこともわからないんですか、あっ!すみません、わからないから聞いたんですよね」
「てめぇバカにしてんだろ!」
天華は、思い切り手をテーブルに叩きつけ秀を睨みつけた、思ったよりも痛かったようで涙ぐんでいる
「いえ決してそんなことは、そんなことよりどうすればもとに戻るかですね?」
「そうだよ、教えろ」
天華はムスッとしながら椅子に腰掛ける
「結論から言うと男に戻るのは難しいかと」
秀は、容赦なく現実を突きつけた
「そ⋯それは⋯なんでだ」
天華の顔から、血の気が引いていく
「あなたがヒロイン相談所に来たからですね」
秀の言葉に、天華は目を丸くした
「あぁ!?ここに来たからどうだって言うんだよ」
秀の説明に理解できず声を荒げた
「いいですかここはヒロイン専用の相談所なんです、本来ここはヒロインしか入ることはできません、こちらにこれている時点であなたはもう女として過ごすことが決定していると考えていいでしょう、話の都合上で男に戻る可能性はありますが、おそらく一定時間だけですね望みは薄いです」
「じゃあ俺は女として男と恋愛するのか?」
天華は、信じられないといった様子で呟いた。その声には、絶望が滲んでいた
「さあ?そうとは限りませんよ。最近は恋愛しないヒロインも増えていますし、百合展開になるかもしれません。男性と恋しない可能性はあります」
秀は、淡々と選択肢を提示した
「だとしても嫌だ、俺は男に戻りたい」
天華の言葉には、強い拒絶が込められていた
「まぁなったもんはしょうがないですし女の子として生活してください、意外と楽しんでいる人もいるので大丈夫ですよ」