清楚系ヒロイン
「久しぶりです秀さん」
彼女は秀を見るなり、にこやかに挨拶をした、その立ち振舞に気品が感じられる
「お久しぶりです曽生恵さん。お待ちしておりました」
秀もまた、柔らかな笑顔で恵を迎える
「あら?あなたは初めましてですね」
恵の視線が、結衣に向けられた
「葉宮結衣ですよろしくお願いします」
結衣は、少し緊張しながらも丁寧にお辞儀をした
「はじめまして、こちらこそよろしくね」
その笑顔は初対面の結衣の緊張を和ませるようだった
〈先輩この人礼儀正しくて落ち着いていて素敵な人ですね〉
〈まぁそうだな〉
秀はなにか含みがあるような同意をした
「では秀さん、いつものを」
恵がそういうと秀は心得たように頷いた
「はい、どうぞこちらです」
秀が差し出したポテトチップスの袋を豪快に開け、恵は躊躇なく口に運ぶ。その優雅な外見からは想像できないような、豪快な食べっぷりだ
パリッ…ザクッ、ザクッ!ザッーーボリボリ……
そして、勢いよくコーラの缶を開け、喉を鳴らす
プシュッ!ゴクゴクゴク……プハァッッ!
「クぅーー!!これですよこれ!やっぱりポテチとコーラは最高です!」
至福の表情で叫んだ。満足げに息を吐き出すその姿は、なんとも清々しい。先ほどの気品あふれる姿とのギャップに、結衣は目を丸くした
〈先輩さっきまでの彼女の品はどこに行ったんですか〉
〈どんな人にも息抜きをしたいときぐらいあるだろ普段から気を張っている人は特にな〉
秀は慣れた様子で結衣の疑問に答える。秀にとって、恵のこの姿は日常なのだ
「喜んでもらえたようで何よりです」
秀は、そんな様子を微笑ましそうに見守る、豪快な食べっぷりに見ているこっちも幸せになる
「聞いて下さいよ、クラスのみんなが休み時間になるたびに話しかけてくるんですよ」
ポテチを頬張りながら早速今日の悩みを打ち明け始めた
「みんなから慕われてるんですね」
結衣は純粋に感心したように言った
「そりゃ話しかけて来てくれるのは嬉しいですけど、なんでみんな一斉に話しかけてくんですか!頭おかしいんじゃないですか!?私は聖徳太子ではないんです!そんな一度に会話できません!できたとしても5人までです!」
顔をしかめ、その状況への不満を爆発させた
〈5人までって普通にすごくないですかそれ?〉
「同時に会話ができる人数が1人増えてるじゃないですかすごいですね」
秀が感心したように言う、その発言に結衣は驚きを隠せないようだ
「それにみんなからの圧がすごいの!テストは一位を取って当たり前なの!あなたにこのプレッシャーがわかる!?もちろん一位を取れなかったくらいで見限ったりしないことぐらいわかっているわよ。だってみんな良い友達だもの。でも期待には答えたいじゃない!」
彼女の言葉からは、周囲からの大きな期待と、それに応えようとする真面目さが伝わってきた
「それにお母様もひどいのよジュースとお菓子は体に良くないから買ってもらえないの、だからこうしてここに食べに来るの、あっカップ麺とハンバーガーも用意してください」
「はい、すでに用意してあります」
「さすが秀ね、わかってるわ」
秀が用意していたカップ麺とハンバーガーをぺろりと平らげる
「ごちそうさまでした、じゃあ行ってきます」
心ゆくまでジャンクフードを堪能し、すっかり満足した様子の恵は、清々しい笑顔で立ち上がった
「あぁいってらしゃい」
秀は、まるで我が子ように、優しい眼差しで恵の後ろ姿を見守った
〈彼女にとって先輩は近所のおばあちゃんみたいな存在なんですね〉