ヤンデレヒロイン
〈皆さん、前回の話で違和感を覚えませせんでしたか?そうですテレパの「」が〈〉ではなく『』になっていました〉
〈括弧、括弧うるさいんだよ〉
〈別に間違えたまま投稿して修正するのが面倒だからそのままネタにしちゃおうなんて思ってないんだからね〉
〈やかましいわ!今も相談中なんだからちゃんとしろ!〉
〈だって〜もう一時間話を聞いていますよ〉
結衣が愚痴をこぼすように言う。その目の前には、瞳を爛々と輝かせた少女が座っていた
「でねそれでね、私ね彼の合鍵を作ったの!これでいつでも会えるよね!あとね、あとねこれ彼の写真!ねえ、かわいいでしょ私の彼!」
少女は興奮気味に身を乗り出し、何枚もの写真を結衣の目の前に突きつけた。その笑顔は、純粋な恋する乙女のようだが、何枚もの写真に写る男性はひどく怯えた表情をしていた
〈先輩普通にストーカーですよね、合鍵作って不法侵入してますよ、この写真も許可を取っているようには見えません、盗撮ですよ〉
結衣は、完全に青ざめていた
〈ヤンデレヒロインは大抵こんなもんだ、もっとやばいのもいる〉
〈これよりもですか?一体どんな〉
〈監禁とか、夜中に後ろからブスッと刺したり、ホルマリン漬けにして標本にしたり〉
秀の言葉に、結衣はゴクリと唾を飲み込んだ。想像を絶するヤンデレの深淵に触れたかのようだった
〈大丈夫んなんですかそれ!?〉
〈これが大丈夫に聞こえるか?〉
〈いいえ、でも私たちは何をすれば?〉
〈話を聞きながら頷いていればいいよ〉
「あっこの写真いいですね自然な感じがして」
一枚の写真を見て結衣が思わず声を上げた。そこに写っていたのは、男性が寝ている間に撮られたような、穏やかな寝顔だった
「そうでしょ!私の一番のお気に入りなんだ!これを部屋中に張っていつも彼のことを考えているの!ねえ、彼には私しかいないと思わない?だって彼のことをこんなに愛しているのは私だけなのよ!でも、彼には他の女がいるの。私という存在がいるのになんで?私はこんなに彼のことを見ているのに、彼は私のことを見てくれないのおかしいよね!あなたたちもそう思うわよね?」
少女は前のめりになり、結衣の腕を掴んだ。その瞳の奥には、狂気にも似た執着が燃え上がっていた
「そうですね、同意見です」
秀が表情一つ変えず、適当に相槌を打った。その声には、一切の感情がこもっていなかった
「そうよね、そうよね彼は私のものよね、他の子と仲良くしてるなんてありえないよねもういっそ⋯私の手で⋯」
〈先輩どうしましょう、このままだと主人公の彼女が殺されちゃいますよ〉
〈この場合殺されるのは主人公だよ〉
〈なんでですか!?まだライバルを殺すのわかりますが好きな相手を殺すなんて理解ができません〉
〈ヤンデレヒロインはその行動力で話に波を作ってくれるから意外と便利なんだよな〉
秀はどこか他人事のように呟いた
〈でもそれで主人公が殺されたら元も子もないじゃないですか〉
〈大丈夫だ彼女は恋愛シュミレーションゲームの世界だからいくらでも時間を巻き戻せる〉
〈でも!〉
〈ヤンデレヒロインはこまめにセーブしないといつの間にかバッドエンドルートに突入してるからな〉
〈そうですよ好きなのはわかりましたけど少しは気持ちをセーブしたほうがいいです〉