ツンデレヒロイン
「別に相談があってきたんじゃないんだからね」
また1人ヒロインがやってきたようだ、少し不機嫌そうな彼女が椅子に浅く腰掛けた
『先輩何を言っているんですかこの人は、不審者?お帰りいただきます?』
『バカ!彼女はツンデレヒロインだよ』
『ツンデレ?ああ聞いたことあります地理の授業で習いましたよ』
『それはツンドラだ、確かにツンデレが行き過ぎた場合周りからは冷たい人のように見られるけど』
『で?ツンデレってなんですか?』
『普段はぶっきらぼうで冷たい態度を取りながら、ときどき好意的な態度を見る人のことだ』
『なるほど』
『見ろ、金髪、ツインテ、貧乳、これはツンデレのテンプレだ』
『貧乳には見えませんよ?大きい方ではないですけど別に小さいってほどじゃCくらいはありそうです』
『あれはパッドだ、実際はAもしくは限りなくAよりのB』
「ちょっとねえ?聞いてんの」
少女が苛立ったように呼びかけた。秀はすぐにツインテールの少女へと向き直る
「今日はどうしたの?れん」
『名前は津出 恋よく来るから顔と名前を覚えておけよ』
「別に大した用じゃないわよ」
「うん、それで」
秀は動じることなく慣れた手つきで話を聞く
「まあ、そろそろあいつの誕生日だし参考までにどんな物がいいか聞こうと思っただけよ」
「つまりどういうことですか?」
結衣が純粋な目で尋ねる。
『先輩さっきからこの何ですか、言いたいことがあるならはっきり言えばいいのに』
『黙れ、これがツンデレヒロインの宿命なんだよ』
「だからプレゼントに何をあげればいいかって話よ、何度も言わせないでちょうだい」
恋はわざとらしく声を荒げた
『先輩そもそもあいつってどんな人ですか』
『れんの世界の主人公だな、今ヒロインレース中だから』
『ヒロインレースって主人公が複数人いるヒロインの誰と結ばれるかってやつですよね』
『そうだ、相手の詳しいことは本人から聞いてみろ』
「あいつってどんな人なんですか?」
「ふんっちょっと顔が良くて、頭も良くて、優しくて頼りになるだけの人なんだからね」
恋は腕を組み、不機嫌そうに顔を背けながら言った
「めっちゃ素敵じゃないですか」
『まるで先輩みたいな人ですね』
『はいはいそうですね〜ツンデレは普段素直になれないせいでうまく気持ちを伝えられないから誕生日とかのイベントでデレをもってこないと他のヒロインにリードされちゃうから重要な場面だぞ』
『そうなんですかじゃあ真面目に考えないと』
『いや普段から真面目にしろよ』
「そうだ!おそろいのキーホルダーとかどうですか」
「なによそれ!それじゃあまるで私があいつとペアルックをしたいみたいじゃない」
恋は猛烈に反論し、顔を赤くする
「嫌なんですか?その人のこと好きなんじゃないんですか?」
結衣の真っ直ぐな問いかけに、恋はあからさまに動揺した
「別にあいつのことなんかなんとも思ってないんだからね」
「でも、わざわざ誕生日プレゼントのことを聞きに来るってことは、れんさんがその人にとって特別な存在になりたいって気持ちがあるからじゃないですか?」
「な、何を馬鹿なこと言ってんのよ!別に特別な存在とかじゃ……」
「プレゼントって、私はただ物をあげるだけじゃなくて気持ちとかメッセージを込めて送るものだと思うんですよ。だから物ではなくあなたがその人に何を伝えたいのか、考えてみませんか?プレゼントの形は、その気持ち次第でいくらでも変わります」
「何を伝えたいかなんてもう決まってるわよ、こんな私でも隣りにいてくれるそんなところが好きなの!」
恋の頬は真っ赤に染まり、声は震えていた。ようやく引き出された素直な言葉に、結衣の顔がぱっと輝く
「じゃあそれを直接本人に伝えられるものをプレゼントしましょう」
「そんな都合のいいものあるわけないじゃない」
「⋯」
そういわれ数秒考えるが何も浮かばない結衣だった
『確かに、先輩どうしましょうノリと勢いで言ってしまいました!どうにかしてください』
『俺は便利やじゃないんだぞ、やれやれ可愛い後輩のためだ』
「あります、それは言葉です」
「はぁ〜何言っているのそれを伝えられないから
しかし、秀は彼女の言葉を遮るように続けた
「誕生日プレゼントは、普段言えない気持ちを伝える絶好のチャンスだ。物だけじゃなく、手紙でも、直接伝えるのでもいい。お前が心から伝えたいことを、飾らない言葉で、彼に贈るんだ。普段ツンツンしてるお前が、たった一言でも素直な気持ちを伝えれば、それはどんな高価な物よりも、彼にとって最高のプレゼントになるはずだ。」
「そうですよ照れくさいかもしれませんけどここで言わなければいつ言うんですか」
「これでもまだ言葉で伝えるのができませんか?」
「わかったわよしょうがないわねあなた達がどうしてもって言うならやってやるわよ、私もう行くからあと⋯⋯ありがとう///」