お嬢様ヒロイン
「ごきげんよう」
優雅な声と共に、一人の少女が相談室に現れた
〈先輩、お嬢様ですよ、お嬢様私初めて見ました〉
興奮気味の結衣の声が、秀の脳内に響く
〈そこまで珍しいもんじゃないだろ〉
「聞いてくださませ、お母様にお小遣いを減らされてたんですのよ」
「それは可哀想ですね、先輩なんとかしてあげましょう」
「その前にプロフィールに記載をお願いします」
秀は、感情を挟まず事務的に促した
「さらさら~ですわ」
少女は優雅にペンを走らせる
「御雅 嬢さんですね」
〈先輩この子12歳ですって〉
〈それがどうしたんだよ〉
〈可愛いですね、先輩はどう思いますか〉
〈お嬢様口調が間違っていても、12歳だからと言い訳にできるはいいな〉
「お小遣いが減らされて困ってるですよね」
「そうなのよ、最近お金使い過ぎだ〜ってお母様に怒られちゃいましたわ、わたくしは転校生にサプライズパーティーをしてあげただけですのに」
嬢は、不満げに口を尖らせる
〈金持ちキャラはこき使われるからな〉
〈そうなんですか?〉
〈夏休みには別荘に招待したり、山の土地を所有してるから山菜採りをしようとか、金に物をいわせて話を作れるからギャグ漫画には高確率で出現する〉
「親はどんな仕事をしてるの?」
「お父様は凄いんですのよ、学校の理事長とかお薬の開発をしてる会社の経営をしてるんですわ」
嬢は、得意げに父親の仕事について語った
「すごいですね、かっこいいいです。転校してきた生徒はどんな人なんですか?」
「毎日おしゃれをしてきて髪型もとっても素敵なんですわ」
〈秀さん、天華様が相談に来ました、今お時間空いてますか〉
突如、秀の脳内に別の声が響いた、受付のお姉さんお声だ
〈⋯あぁ今空いてるからこっちに連れてきてくれ〉
〈かしこまりました〉
「おい、秀いるか?」
〈この人誰ですか先輩?、この子と知り合いのようですが〉
結衣は、突然の来訪者に混乱している
〈そうか、ゆいはいなかったな、ほらお前がカフェに言ってるときに俺が1人で相談した相手だ〉
「あっ天華ちゃん」
嬢が、親しげな声で天華に呼びかける
「えっ!?お前がなんでここにいる?」
「ど~も~天華チャンそのお洋服似合ってますね」
秀はあざ笑うように天華に挨拶をする
「秀、表にでろ」
天華は、秀を睨みつけながら言った
「はい」
秀は、素直に従い、天華と共に部屋を出る。結衣と嬢が心配そうに見守る中、廊下で二人の緊迫した会話が始まった
「これはどういうことだ、説明しろ」
天華は、秀に詰め寄った
「嬢がお小遣いを減らされて困ってるらしいよ」
「そういうことを聞いてんじゃねぇよ」
「転校生ってお前のことだろ」
「それがどうしたんだよ」
「それは研究機関の実験台として親に売られたからだろ?」
「あぁ、そうだよあのクソババアのせいで、おかげで今は学校の寮で暮らしてるよ!」
「で、たぶんその研究機関がじょうの親」
「はぁ?あいつの親がそんな事するわけ無いだろ」
「え?お前じょうのこと好きなの」
秀は、意地の悪い笑みを浮かべて問いかけた。
「バッ⋯そんなわけないだろ」
天華は、顔を赤くして否定する
「まぁ別にそんなこと俺にはどうでもいいけど」
「なんであいつの親って決めつけるんだよ」
「薬の開発もしてるらしいし、お前の転校させられた学校の理事長らしいぞ、そんなの俺からしたら実験台を観察するための施設にしか見えないんだけど」
「じゃあ俺はあいつを人質にとって、男に戻る薬をつくってもらえばいいんだな」
天華は目を輝かせながら秀に言った
「そんなことしたら、お前は世界から抹消されるぞ」
「じゃあどうすれば良いんだよ」
「じょうと仲良くなって、親と接触をしてみればいいんじゃないか」
「おぉ、それは良いな」
天華の顔に、希望の光が差した
相談室に戻った秀は、嬢に優しい顔で告げた
「ということでじょうさん、これからは天華が遊び相手になってくれるから好きに使っていいよ」