第12話 週明けの生徒指導室
散々な土日だった。
土曜日は怪人退治、日曜日はその疲労で一日中寝込む――最悪のコンボだ。
普段ならここまで引きずらない。だが、一日二回の戦闘はさすがに堪える。体力も気力も、底が抜けたみたいに削られていく。
けれど、いま一番憂鬱なのは――。
「さて、言い訳を聞こうじゃないか」
鋭い声が、静かな部屋に落ちた。
目の前にいるのは九条先生。例によって、土曜の件で生徒指導室へ呼び出されたのだ。
「……なぜ来なかった?」
「そ、その……のっぴきならない予定がありまして……」
「のっぴきならない予定、ねぇ」
先生は半眼になって俺をじっと見つめてくる。
正直、そんなに見られても困る。言えないものは言えないんだ。だが、“のっぴきならないこと”だったのは本当なのだから。
「……まあ、そういうことにしておこう」
あっさりと受け流された。もっと問い詰められると思っていたから、逆に拍子抜けする。
「実際、君を責めるつもりはないんだ。歓迎会で何があったかは知っているかい?」
「ニュースで見ましたよ。かなり大変だったみたいですね」
「ああ、本当に……」
九条先生は苦い顔をして、視線を伏せた。いつもの飄々とした雰囲気とは違い、その横顔はどこか陰を帯びている。
「あんなことがあって、来なかった君を責めるなんてできるはずがない」
低く漏らした声には、悲しさと苦しさが滲んでいた。
「……先生は、責任を感じてるんですか?」
「私は教師だからね。常に責任は背負うものさ」
「教師って、大変ですね」
冗談めかして言ったつもりだったが、先生は笑わなかった。
「まあ、とにかくだ。君が無事で良かったよ」
「そりゃ、俺は何とも。先生は大丈夫なんですか、怪我とか?」
「おっ、心配してくれるのか? どうやら私の体は頑丈だったみたいでね、軽い打撲ですんだよ。おかげでサボれず、学校に来ているわけだ」
「それは災難ですね」
「ああ、そうだな」
今度の九条先生の顔は、いつもの柔らかい笑みに戻っていた。
「さて、話は終わりだ。放課後に呼び出してすまなかったね」
「本当ですよ。もうやめてくださいね」
「君がいい子ならね。さあ、早く帰りなさい。あんなことがあったんだ。しばらく、部活も委員会活動も中止だ」
「……マジですか?」
思わず声が漏れる。
そうか、委員会活動がないなら、生徒会もない。
なんと、こんないい話があるだろうか。ずっとこうであってくれ……。
そんな甘い妄想を胸に抱きながら、俺はドアノブに手をかけた――。
「なあ、青木」
背中に声が飛んできて、思わず足を止める。九条先生の声色は、さっきまでとは少し違っていた。
「はい?」
「……あの日、近くに来ていたか?」
「なんでそう思うんです?」
「いや、なんとなくだ。来ていたのか?」
「いや全然。こっちはのっぴきならない予定でてんやわんやでしたよ」
「……そうか」
先生はそれ以上追及してこなかった。
「それじゃあ、俺は行きますね」
ドアを開けながら、心の中で苦笑する。
――さすが九条先生。勘が鋭い。
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