3.あの時に戻れるのなら
由貴、緋岐
――ハァ……
由貴は、深い溜息を付いた。
そんな由貴を無視する事も可能たが、長年の習慣で結局無理で。
「……どうした?」
―― 尋ねた事を、一分後には後悔した。
……この後悔も何時もの事だ。
「緋岐せんぱい……いや、昨日に戻らないかなとか思って……」
何時になく深刻な表情で。
「そしたら、英語のテストを1点に出来るのにっ……」
どうしようもなく、くだらない事を宣ったのだった。
由貴の言葉にその手に握り締められている紙切れを取り上げた。
「…………マイナス……1点……?」
まさかの奇跡の点数に緋岐は絶句だ。
次の瞬間、自分の目を見開いた。
そこに書かれた名前
「……って……もう何て読むのか判んねえじゃねえか!」
「せんぱい、問題そこじゃない!ここっ!」
打てば響く様に返って来た返答に「は?」と問う。
そして、由貴の指し示すところを見て、言葉を失った。
「……な?マイケルとマークを間違って……点数逃したんだっ……」
―― クソッ……
心底悔しそうに拳を握り締める。
「昨日に戻る事が出来たら。マークってちゃんと書くのに……」
「その前に……DoをCoって間違えてる時点で残念だからな?」
――Canにも成り切れていない
「むしろ……高校一年生にもなって自分の名前ローマ字で書けないとかどんだけだよ!何でうちの高校に受かったんだよ!」
「……せんぱい……気力、体力、時の運さ」
「お・ま・え・はぁ~!」
怒りに拳が震える。
「俺が勉強教えてやったんだろうがぁ!」
そして、思いの丈を詰め込んだ拳を容赦なく振り下ろした。
「お前はもういっぺん小1に戻ってやり直して来い!」
●あの時に戻れるのなら
/(c)螺旋の都
シリアスクラッシャー!!!
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