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1.思い馳せるは昔の記憶
真達羅
幾つの季節が巡っただろう
『師兄』
『匠葵耀命』
かつては、そう呼ばれていた。
もう、遠い遠い記憶……
幾つもの季節
巡る時の中
色々な人生を歩んだ。
ある時は、祈祷師
ある時は、無名の足軽
ある時は、問屋主人
米軍の兵だった事もある。
自慢じゃないが、東西ドイツ統一……ベルリンの壁を勇み足で壊しに行った一人だ。
あれが一人の男のうっかりミスで起こった奇跡なんだと後で知った時には可笑しかったものだ。
輪廻の理から外されて、果てしない時が過ぎた。
蓄積されて行く記憶。
――それでも薄れない
――それでも色褪せない
たった一つの約束
「やっとだ……やっとここまで来る事が出来た」
長い長い道のり
気が遠くなるような……
もう手が届かない
悠久の果てにある
想い、焦がれても
二度と触れる事は叶わない
「姉上、緒帰嶽命……必ずや――……」
その先は風にさらわれて行った。
馳せる先にあるのは
彼の人の笑顔か
はたまた
憎しみに流れる涙か
それは彼のみぞ知る話だ。
●思い馳せるは昔の記憶
/(c)螺旋の都
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