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お題に挑戦!  作者: 梨藍
▼お見舞い▼(5題)
5/35

5.甘えん坊のキミに

緋岐×紗貴

「大丈夫?」


否、大丈夫じゃないことは見れば判るのだが。

それでも聞いてしまう。これはもう人の性であろう。

案の定、返されたのは荒い吐息のみ。


緋岐(ひき)くん、お粥……作ってみたんだけど、食べれる?」


サイドテーブルにお盆を置き、傍の椅子に腰を下ろした。

瞼が震え、うっすらと開かれる。


「………無理………」


熱のせいか、声が掠れ気味だ。


紗貴(さき)、食べさせて……」

「……はい?」


全身を駆け巡り、やっと緋岐の言わんとすることがやっと理解出来て。

顔と言わずに、全身が熱を持つのが判る。


「ひっ……緋岐くん?」


窺う様に見れば、どうやら本気らしく一向に自分で食べる気配はい。


―― 仕方……ない……


観念して、スプーンで一口分掬い、ふうっと息を掛けて冷やす。


「はい……」

「ん……うまい……」


―― 何の罰ゲーム!?


熱に浮かされている為か、妙な色気を醸し出す緋岐を、内心で目一杯罵りながら食べさせあげた後。


「よっ……よし!食べたね!薬……」

「飲ませて」

「はぁ!?」


食器を下げて戻れば、緋岐は既に横になっていて。


―― それは……


――つまり……


「口……移し……?」


音にすれば、何だか気恥ずかしくて。

だが、目の前の病人はとてもじゃないが、自分で飲める状況ではなくて。


「じっ……人口呼吸みたいなもんよ!」


誰に対する言い訳か。

意を決して薬と水を口に含み、そっと緋岐の口に宛がう。


―― コクン……


喉が鳴ったのを確認してから口を離す。

緋岐の口元から、飲み切れなかった残滓が一筋滴り落ちた。


―― 人助けっ!


自身に言い聞かせる様に何度も繰り返すが。

心臓が耳にあるのではないかと思うほど、バクバク鳴る。


「紗貴から……初めてのキス……」


―― 限界だった。


余りの恥ずかしさにいたたまれなくて、その場から逃げようとしたが。

しかし、離れようにも腕をしっかり掴まれていて。

いきなり引き寄せられる。


「お返し……」


有無を言わせぬ勢いで、再度口を塞がれたのだった。



●甘えん坊のキミに

/(c)螺旋の都



えんだあああああああッ!!


お読みいただきありがとうございました!!!

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