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お題に挑戦!  作者: 梨藍
▼事実は小説より奇なり▼(連作お題)
45/52

説 説明するのが面倒な事態

沙羅夢幻想本編 第十章 読了後 推奨!!


第十章までお読みいただいてからだと、

よりお楽しみいただけるかと思います。


今回は、瑞智家で開催された「流しそうめん大会」

夏休みのとある平凡(?)な風景をお届けします!


「あいうえお作文」お題にちなんで、

 全て繋がっているお話です。


そのつながりも一緒に、お楽しみください♪


※ 単話でもお楽しみ頂けるよう心がけております♪

 気になるお話しだけでも、チラッと読んでみてくださいね☆


周のスマートフォンが、メッセージを受信したことを告げる。

勉強机に向かっていた周は、一つ大きく伸びをしてから携帯を開いて、そして……


「えッ……」


思わず口元を抑えて固まった。


紗貴からのLINEメッセージはこうだ。


―― 実際に、見たくない?


簡潔に、そう一文だけ書かれた後、送られてきた画像を見て固まったのだ。


―― ガタンッ……


音を立てて立ち上がると、クローゼットから適当な服を見繕って急いで着替える。


そして、部屋の鍵を閉めてから、徐に真承武具(しんしょうぶぐ)霹玲弓(へきれいきゅう)」を顕現して、ギュッと握りしめた。


まず行ったのは、式神召喚だ。


翠琉のように万物の長である四神や、緋岐の様に人格を有する神獣と呼ばれる上位種と契約するまでの力はなくとも、周もそれなりの実力を有している。


“媛巫女代理”、そして翠琉の“庇護師”の肩書は伊達ではないのだ。


奉霊(ほうれい)(とき)()たりて、此へ集うは万象に集いし眷属(けんぞく) 。我が声に(いら)え、其の姿(すがた)顕現(けんげん)せよ」


その声に応えるように現れた光の塊に向かって、更に呪を紡げば、そのままもう一人の周がそこに姿を現わした。


「私が帰って来るまで、座ってて」


意志のない、カラクリ人形の様にコクンと一つ頷くと、周の言葉に従って勉強机に向かう。


(次は……)


こっそりと窓を開けて、ベランダに出る。カーテンを外側から締めて、窓も締めればアリバイ工作は完璧だ。そのまま隣の木に飛び移ってから、なるべく気配を消す様に努めて裏山まで移動した。


そして、懐に忍ばせていた呪符を取り出すと、構えて短く唱える。


封解(ふうかい)遮蔽(しゃへい)せよ!!」


こうして、自身の気配を完全に隠してから、転移の呪を展開したのだった。


繋げた先は、瑞智家の庭に面した雑木林である。覇世神杖を消してから少し歩けば、すぐに瑞智家の庭が見えてきた。


着いた周はまず、視界に入ったものに顔を引きつらせた。


(え、何この地獄絵図(カオス)……)


何だかよく判らないが、とても緻密に設計されているのが判る、建設途中(?)の竹のオブジェ……の前で、両手を万歳の状態で固定したまま正座をしている由貴、槃、そして敦。


その3人に何の興味関心もないのか、現場監督よろしく指示を出す緋岐に、その指示に従って動いている将、蕎、そして璃庵。


更に、そんな庭の状況我関せずの状態で、縁側で碁を打っているのが正宗と、とてもお上品で柔和な雰囲気を醸し出している青年。


―― の、後ろの座敷で寝そべって、我が物顔でテレビを独占している、殺人鬼ばりに凶悪な人相のチンピラ。


「……え、思ってたのと違う……」


周の口から思わず飛び出した、素直な感想だ。


状況に付いていけない周に、まず気が付いたのは将だった。


「あれ?周ちゃん……いらっしゃい。もしかして、さっちゃんか蘭子さんに呼ばれた?」


「将さん、こんにちは……はい、紗貴さんにご連絡いただきました」


苦笑交じりに声を掛けた将は、だが作業の手は止めない。鬼と化した現場監督の手にあるハリセンの威力は、既に前で正座をしている“やらかしトリオ(由貴 敦 槃)”で実証済みだ。


ペコリと一礼してから周は応えて、遠慮がちにお伺いを立てる。


「……あの……一体、これはどういう……」


―― どういう状況なんですか?


と続くはずだった言葉は、緋岐の視線に奪われた。


(ひッ!!?)


その鬼気迫った様子に周は思わず息を詰める。


「いいか……今、俺たちは重要なミッションを遂行中なんだ。判るか?」


判るわけがない。だがしかし、緋岐の纏う覇気が、頷くことしか許さなかった。


助け船を出してくれたのは、蕎だった。


「説明するのもえらいさかい、奥に行きよし」


―― 否……


助け船ではなく、厄介払いだった。


「はあ!!?」


あんまりにも理不尽な言いがかりに、ムカッとした周は言い返そうとしたのだが、何故か緋岐に睨まれた。


全く持って、理不尽の塊である。


「二度、言わせるな……今、俺たちは、重要なミッションを遂行中なんだ……」


静かに怒気を孕んだ声音に、再度ひゅっと周は息を詰める。


あんまりにも可哀そうだと思いつつも、こちらとて一刻を争う事態だ。


時間がないッ!!間に合わないかもしれない……そんな、緊迫した状況なのだ。


「ごめんね?周ちゃん……本当に、説明するのが面倒な事態になっちゃってて……台所にさっちゃん達いるから、そっちで聞いてもらっていいかな?」


将は言いながら、釘を打つ手を止めない。


なんとなくこれ以上ここに居てはいけない気がして、周は若干涙目になりながら、とぼとぼと瑞智家の台所に足を向けたのだった。



●説 説明するのが面倒な事態


/(c)永遠少年症候群



☆ 周は礼儀正しい良い子です。

  年長者を敬ってきましたが、最近ちょっと緋岐兄様がおかしい?


NEXT⇒「よく見てほしい」


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