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お題に挑戦!  作者: 梨藍
▼事実は小説より奇なり▼(連作お題)
44/52

小 小さな抵抗は無駄に終わりました

沙羅夢幻想本編 第十章 読了後 推奨!!


第十章までお読みいただいてからだと、

よりお楽しみいただけるかと思います。


今回は、瑞智家で開催された「流しそうめん大会」

夏休みのとある平凡(?)な風景をお届けします!


「あいうえお作文」お題にちなんで、

 全て繋がっているお話です。


そのつながりも一緒に、お楽しみください♪


※ 単話でもお楽しみ頂けるよう心がけております♪

 気になるお話しだけでも、チラッと読んでみてくださいね☆


「クソだりぃ」


高条(たかじょう) (さとき)は言いながらリビングのソファに寝そべって、録り溜めたドラマを鑑賞していた。


片手にはビール、目の前には枝豆。死角のない、完全な布陣だ。母親からは「どこのオヤジよ」なんて溜め息を吐かれたが、そんなの関係ない。


なんてことない、高条 鋭の休日の一コマだ。


いつもなら父親もパーティーインするのだが、今日は接待ゴルフらしく朝早くから出掛けて行った。

十歳下の弟も夏休みの課題をみんなで集まってするとかで、朝から出掛けている。


母親と2人しかいない家の中は、シーンとしているのだが、居心地が悪いわけでもなく。ただ、まったりと過ごしていたのだが……


固定電話の呼び出し音が、家の中に鳴り響いていたのだが、どうやら母親が出たらしい。


特に珍しいことでもないため、気に留めることなくドラマ鑑賞に勤しんでいたのだが。


「鋭、ちょっとお願いがあるんだけど」


「……あ?」


嫌な予感しかしない。思わず顔を顰めてのっそりと上体を起こす。常人であれば、ヒッと縮み上がるところだろう。


余談だが、高条 鋭という男、職業はまごう事なき警察官……つまりは、世のため人の為に日や働くお巡りさんなのだが、見た目はその筋のプロにしか見えない。「今日は何人殺したんでしょうか!?」なんてことを聞かれてもおかしくないほど、凶悪な面構えの男だ。


……が、そこは流石である。睨まれてもどこ吹く風、近付いてきて続ける。


「さっき、桜さんからお電話頂いたんだけど、今日は流しそうめんをみんなですることになったんですって。それで、夜もきっとお泊りになるだろうからって知らせてくれたのよ」


繰り返しになるが、もう嫌な予感しかしない。元々険悪な顔が更に恐ろしさを増していく。


「お世話になりっぱなしじゃ申し訳ないでしょ?それに、アンタ、今暇でしょう?ちょっと果物でも買って、届けて来てくれない?」


「あ?今忙し……」


「行ってくれるわよね?」


幾つになっても、母親には勝てないものである。まさかの視線で言葉を封じられた鋭は、母親からの無言の圧力に負けて渋々、出掛けることになったのだった。


※※※※※


(え、あれ……鋭、だよね……?)


坂本(さかもと) 由樹(よしき)は貴重な休日に、ちょっと美味しいものでも食べようかと都内まで行こうとのんびり街を歩いていた。


―― のだが……


どす黒いオーラを放ちながら、煙草を加えた凶悪な人相の青年を遠目に見つけて、思わず固まった。坂本 由樹の職業も鋭と同じく警察官。しかも、同じ課所属な上に現在のバディでもある。


―― というより、中学からの腐れ縁……なのだが。


なので今更、鋭の凶悪な面を見たくらいで恐れおののいたりはしない。その内面に隠された優しさを知っているから。だから、そう……今だってちょっと不機嫌なんだろうなくらいにか思わない。


思わないのだが……


「……鋭、その恰好は流石にないと思うんだけど?」


思わず苦言を呈した由樹は悪くない。


アロハシャツに、短パンにベランダサンダルだ。しかも、咥えタバコときた。


どこのチンピラだ。とてもじゃないが、取り締まる側の人間だなんて、誰も信じないだろう。


「あ?……由樹、テメー喧嘩売ってんのか?」


まさかの絡み方までチンピラ顔負けだった。


「何か、押し付けられたんでしょ」


周囲がちょっと騒めく。一見すると、良家のお坊ちゃんがチンピラに絡まれている様にしか見えない。まさか、2人が中学来の友人だなんて、誰も思いもよらないだろう。


だが、ここで愚痴を零したのが、鋭の運の尽きだった。


「……今日、何がどうしてそうなったかは知らねえが、流しそうめんをするようになったんだと。それで、敦が世話になってるんだから、果物買って持ってけっておふくろが……」


思い出しただけで、イライラが再燃する。せっかく、ビール片手に撮り溜めていたドラマを楽しく鑑賞していたというのに!!


「なるほど……よし、ならまずは鋭……その壊滅的な服をどうにかしようか」


清々しいほど爽やかな笑みでそう、由樹が言う。


「……は?」


人でも殺しそうな堂に入った睨みである。だがしかし、由樹にはそんな攻撃一切通用しない。


「きっと、いつものメンバーが集まってるだろうから……とりあえず、西瓜は確定かな?あとは、桃と……まあ、取り敢えず千〇屋に行ってから決めればいいか」


―― あとは、ちょっと辛めのお菓子と、甘いお菓子を適当に見繕って……


「ちょっと待て。なんでテメーも行くことになってるんだよ」


これは、本当に厄介でしかない。

無駄とは知りつつ、抵抗を試みる。


「だって、鋭……どうせ、そこら辺で適当なモノ買って行こうとか思ってるんでしょ?」

「それのどこが悪いんだよ」

「あのね、瑞智家には仕事上、すっごくお世話になってるんだよ?こういう時に、きちんと義理を通してこその、関係だってあるんだよ?」


確かに由樹の言うことはごもっともだが。理解も出来るし、その通りだとも思うのだが!!


「そこまでする必要ねえだろうがよ。服まで買う必要がどこにあるんだよ」

「なら聞くけど、その服装でデパート行けると思う?」

「ちょっと待ちやがれ。なんでデパート……」

「ほら、グチグチ言ってないで行くよ?」


こうして、鋭の小さな抵抗は全て、無駄に終わったのだった。



●小さな抵抗は無駄に終わりました


/(c)永遠少年症候群


☆ 「由樹といると、金がなくなるんだよ。いつの間にか……」


NEXT⇒「説明するのが面倒な事態」


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