は はい、うそです
沙羅夢幻想本編 第十章 読了後 推奨!!
第十章までお読みいただいてからだと、
よりお楽しみいただけるかと思います。
今回は、瑞智家で開催された「流しそうめん大会」
夏休みのとある平凡(?)な風景をお届けします!
「あいうえお作文」お題にちなんで、
全て繋がっているお話です。
そのつながりも一緒に、お楽しみください♪
※ 単話でもお楽しみ頂けるよう心がけております♪
気になるお話しだけでも、チラッと読んでみてくださいね☆
ことは、璃庵がが紗貴にハリセンを借り受けに行く少し前まで遡る。
汗が煌めく夏の青空の下、緋岐を監督にして順調に流し素麺の装置は完成に向かって作られていた。
「いや、もうこれ……流し素麺の域、越えてるよな!?これを、あの一瞬で設計したのか!!?」
「翠琉の為だ。当たり前だろ?」
「もーやだこの兄バカッ!!」
何ともテンポの小気味よいやり取りを交わしながらも、槃の手は止まらない。
―― と、ふと……緋岐は思い至って、馬鹿一号と馬鹿二号に振り返った。
ちなみに、馬鹿一号こと由貴と、馬鹿二号こと敦は既に戦線離脱しており、邪魔にならない様にと端っこで何故か余った竹で竹馬を作ったり、竹トンボを作ったりして遊んでいる。
「そういえば、俺が買ってきたアイスが、どこに行ったか知ってるか?」
そんな緋岐の言葉に、同時にピタッと静止する。
「翠琉がな……アイス食べたことないって言ってたから……買っておいたアイスがあったんだ」
色々な話をして判ったことがある。
本当に驚くほど、翠琉は世間一般とはかけ離れた生活を送らされていたのだ。
はらわたの煮えくり返る思いというものを、初めて感じた瞬間だった。
それは、神羅に対してであり、今まで見て見ぬふりをしてきた自分自身に対してであり……
落ち込む緋岐を奮い立たせたのは紗貴の何気ない一言だった。
『後悔する暇があるなら、今までのことぜーんぶ忘れちゃうくらい、たっくさん幸せをプレゼントしよう?私も……きっと、将君や蘭子も同じ想いだと思うよ?』
その時、心に決めたのだ。
どんな些細なことでもいい。
絶対に取りこぼさない。
自分が出来ることは全て、全力で取り組もうと……
アイスだってそうだ。何気ない会話の中で、アイスを知らないことを知った時、まず感じたのは怒りだった。だが直ぐに思い直して、その足で買いに走った。
きっと、自分の分だけだと気を使って食べないだろうからと、人数分の某有名店アイスを買って、現在お世話になっている瑞智家の冷凍室に入れさせてもらっている……はずだったのだが。
「さっき見たら、見当たらなくてな?」
あれおかしい。今日は真夏日のはずだ。温度は30度を軽く超えているはずなのに……緋岐の周囲の温度がどんどん、ぐんぐん下がっていく。
そんな様子に残念なものを見るような眼差しを向けるのは将だ。
「お前ら……食べたな……?」
それはもう、老若男女問わず虜にしそうな美しい微笑みなのに、何故だろう……背後に般若が見える。
「なッ……なんのことだろうか、敦くん」
「いやはや、さっぱりですな、由貴くんや」
それはもう、盛大に、「俺たちが食べました」と言わんばかりの態度に、更に温度が下がった。
「何や、槃……顔が青いで?」
「ばッ……言うなよ黙っとけよッ!!!」
淡々と指摘する蕎に慌てる槃。こちらもこちらで大変分かりやすい。
(世の中、由貴達みたいに判りやすいのばっかりだったら、ウソ発見器とか必要ないのにねー)
そんな現実逃避をする将は悪くない。
「今、素直に吐けば……先着一名には、それなりに減刑の余地を与えてやろう」
すさまじい威圧感が、由貴、敦、そして槃を襲う。
耐えいきれずに勢いよくスライディング土下座をかましたのは、由貴だった。
「はい、うそです!!食べましたッ!すみませんでしたー!!!」
「お前、抜け駆けは卑怯だぞ!!?」
「裏切者めッ!!!」
慌てたのは、敦と槃だ。
そんなことお構いなしに、音もなくスッと緋岐の背後に立ったのは璃庵だ。
「主様、こちらを……」
恭しく緋岐に献上したのは……
「ハリセン?」
思わず蕎が顔を顰める横で、盛大に噴き出した将は悪くない。
「そこになおれ。悪ガキトリオ。成敗してくれる……」
絶対に逆らってはならないと悟った由貴、敦、そして槃は姿勢も正しく正座する。
涙目なのは、由貴と敦だ。
なんてたって、あのハリセンの威力は既に経験済みなのだから。
「げ、減税してくれるって……言ったじゃん」
「それを言うなら、減刑だろうが!!!!!」
青空の下、スッパンと心地よい音が、三度響き渡ったのだった。
●はい、うそです
/(c)永遠少年症候群
☆ 老舗果物専門店「千●屋総本店」のシャーベットとアイスクリームのセットが、
三馬鹿トリオのお腹のなかに、消え去りました ☆
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