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お題に挑戦!  作者: 梨藍
▼事実は小説より奇なり▼(連作お題)
42/52

実 実際のところ、どうなの

沙羅夢幻想本編 第十章 読了後 推奨!!


第十章までお読みいただいてからだと、

よりお楽しみいただけるかと思います。


今回は、瑞智家で開催された「流しそうめん大会」

夏休みのとある平凡(?)な風景をお届けします!


「あいうえお作文」お題にちなんで、

 全て繋がっているお話です。


そのつながりも一緒に、お楽しみください♪


※ 単話でもお楽しみ頂けるよう心がけております♪

 気になるお話しだけでも、チラッと読んでみてくださいね☆


さて、ちょっとした極一部の人には胸躍る、本人たちにしてみれば溜まったものではないハプニングに見舞われたものの、みんなでお茶をしてからそれぞれの作業に戻っていた。


紗貴、蘭子そして翠琉の三人は、由貴と紗貴の母 桜の指導の元、流しそうめんの具材の準備と、ちょっとつまめるおかず作りに勤しんでいる最中だ。


「せやねえ……マカロニのサラダに、卵焼き……きんぴらさんと、唐揚げも作りましょか~」


その一言で始まったクッキング教室は、中々順調に進んでいる。


紗貴はマカロニサラダに入れるゆで卵の殻を剝いて、蘭子は野菜を切っており、翠琉は唐揚げの衣付けを現在していた。


桜は電話を掛けるために、今は席を外している。


……と、そこに姿を現わしたのは璃庵だ。台所をゆったりと見回して、一瞬だけ翠琉を見て止まったように見えたが、さして興味もないのか直ぐに視線を逸らした。そして、紗貴を見つけるとスッと静かに歩み寄る。


「お忙しいところ失礼します。紗貴、主様がハリセンを貸して頂きたいとのことなのですが……」


「あ、アレね!!この間、手に入れたヤツね。アレ、叩き心地最高なのよねえ」


なんて、物騒なことを言いながら、二階に駆け上がる。その間も、璃庵はただそこに……背景と化して静かに佇んでいるだけだった……のを、野菜を切りながら、しっかりバッチリ観察している人物が一人。


「お待たせ。はい、これ緋岐くんに渡してね?」


紗貴は言うなりハリセンを手渡す。


「畏まりました」


薄っすらといつもの微笑を浮かべて静かにその場から去って行った……のを見届けてから、スススッと蘭子が翠琉に近寄った。そして、自分のエプロンで翠琉の鼻頭を拭いてやる。


恐らく、唐揚げの衣をまぶしながら、鼻頭を手の甲で擦ったのだろう。その際、白く汚れてしまっていたのだ。


「お前と璃庵……どうなってるんだ」


ため息交じりに蘭子が言えば、紗貴もスススッと移動する。丁度、翠琉が紗貴と蘭子に挟まれるような形になる。


「そうそう……私も気になってたのよ。実際のところ、どうなの?」


だが、紗貴と蘭子が何を言いたいのか皆目見当がつかない翠琉は、首を傾げるばかりだ。


「どう……とは……璃庵は、兄様の式神です。いつも、迷惑をかけてしまって申し訳ないと思っています」

「真面目か!!」

「そうじゃない!!そういうのじゃなくって!!」


なんとも、もどかしい。かゆい所に手が届かないとは、まさにこの状況ではなかろうか。


「原因の一端は気まぐれタイガーにもあるがな」

「気まぐれタイガーって、璃庵さんのこと?」


紗貴が確認するみたいに尋ねれば、蘭子は憤慨したように息を吐きながら一つ尊大に頷いた。


「過剰に心配して構い倒すかと思えば、さっきは翠琉の鼻頭をチラッと見ただけで無視だぞ?」

「確かに、気まぐれだよねえ」


蘭子の言葉に、紗貴は苦笑を漏らしながら頷く。


思い出されるのは昨日のことだ。最近では、紗貴と蘭子と翠琉が三人一緒にお風呂に入ることが習慣になりつつある。お風呂から出て、紗貴が翠琉の髪の毛をわしゃわしゃ拭いていたら、璃庵の視線が一点に集中した。そこは、赤く腫れていて……


『翠琉、虫に刺されています。塗り薬を……』


言うなり、いそいそと立ち上がった、その隣で軽くキレたのが緋岐だった。


『俺の、妹の血を啜った不届きな蚊はどいつだ』


ちょっとした騒動になりかかって、あまり皆の記憶には残っていないのだが、なるほど確かに対応が違い過ぎる。


昨夜の璃庵の様子からすれば、翠琉の鼻頭に白い粉が付いていることに気が付いた段階で、そっと近寄ってふき取り、「お手伝いをなさっているのですか、えらいですね。ですが、ご無理はなさらず」くらい声をかけて行きそうなものだ。


一生懸命、唐揚げの衣付けに勤しんでいる翠琉を挟んだ両サイドで、紗貴と蘭子はうーーーん?と首をかしげる。


「紗貴……似たような症状を見たことがあるんだが」

「病気じゃないけどね!!……うん、蘭子……私も、ちょっと思い当っちゃった……」

「……まさか、な?」

「お盆が近いからかな……」


そうして、翠琉を挟んだ状態でお互い目を見合わせてから、衣付けを真面目に、丁寧に、集中して頑張っている翠琉に目線を移す。それから、もう一度お互い顔を見合わせてから、どちらともなくスッと行動に移した。


向かうのはお仏壇だ。


決して瑞智家で供養しているわけではないのだが。


チーーーンと高らかにりんの音が鳴り響く。


手を合わせた紗貴と蘭子の心は、たった一つ。


(実際のところ、どうなの!?)


夏は、まだ、始まったばかり。



●実際のところ、どうなの


/(c)永遠少年症候群


☆ 璃庵に与えられた称号は、「気まぐれタイガー」


 「大変、不本意ですが仕方ないこと……なのでしょうね」


NEXT⇒「はい、うそです」


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