3.元気になるおまじない
翠琉、緋岐→由貴
「翠琉?何してるんだ?」
緋岐の声に、翠琉が振り返る。
「……兄様」
余程熱心に捜していたのか。
顔にはところどころ泥が付いている。
「何を、そんなに真剣に探してるんだ?」
苦笑混じりにそう問えば、翠琉は間を置かずに応えた。
「四つ葉という、願いが叶う葉を探しているんだ」
その応えに、納得した様に緋岐は頷く。
恐らく、由貴の為だろう。
「大丈夫、翠琉……すぐ治るって」
苦笑したまま顔に付着した泥を拭ってやれば、「でも」と不安げに言い募る。
「珍しく、苦しそうなんだ」
――ゲホッ……
まるで翠琉の言葉に呼応するかのように、二階の部屋から咳込む音が降って来た。
「大丈夫だよ。夏風邪は馬鹿がひくものだから」
――明日にはピンピンしてるよ
だが、緋岐の言葉にまだ納得がいかないのか。
眉尻は下がったままだ。そんな妹の様子に、判らないように溜息を付くと隣にしゃがむ。
「兄様?」
首を傾げて覗き込んで来る翠琉の頭を優しく撫でた。
「一人より、二人の方が早く見付かるだろ?」
緋岐の言葉に、みるみるうちに翠琉の表情は晴れて行って。
「うむっ!」
嬉しそうに頷くと、また野草と睨めっこを始めた。
――風邪が治るおまじないじゃ、ないんだけど
「まあ、いっか」
独り呟き、緋岐も四つ葉の捜索に乗り出したのだった。
●元気になるおまじない
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