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お題に挑戦!  作者: 梨藍
▼べたな展開に挑戦する5題(自宅付近編)▼(緋岐×紗貴)
28/52

4.予想外のお見舞いに、慌てて寝たふりをした

▼お見舞い▼(5題)

5.甘えん坊のキミに


の、続きのような、そうじゃないような……




(俺は、なんてことをッ!!!!)


緋岐の内心は大荒れに荒れていた。


(いくら、熱が高かったからって、あれはない!!)


というくらいの痴態を晒した自覚があるからだ。


『紗貴、食べさせて』

『飲ませて』

『初めてのキス』


などなど、思い出すだけで再度熱が上がりそうなセリフの数々を言った記憶が残念なことに鮮明に掘り起こされた。


(なんで、思い出すんだよ……俺……)


しかも、極めつけが今現在のこの状況。


『どこにも行くなよ』


とか何とか言いながら、手を握ったとこまでは記憶にあるのだが、それ以降は全くない。つまり、手を握ったまま眠ってしまったという事で。


振り払う事も出来ただろうに、緋岐から手を握られた状態で、ベットに突っ伏して眠ってしまっている。


嬉しいやら、気恥しいやら。


熱に浮かされてしてしまった事とはいえ……と、そこまで考えてハタと思い返す。


(忘れなくてよかった)


脳裏を走馬灯のように過ぎっていくのは、今日の紗貴だ。


(可愛かった)


役得とはまさにこの事。

前言撤回、自分よくやったと緋岐は自画自賛した。


「……ん……」


と、その時、枕元の紗貴が身動ぎする。

何となくバツが悪くて、緋岐は慌てて目をつぶった。言わずもがな狸寝入りだ。


「あちゃー、寝ちゃってたか」


ギシッとベッドが軋む音がしたかと思うと、いきなり吐息が触れ合う距離に紗貴を感じる、サラッと撫でるように優しく前髪をかきあげられるのと同時におでこに何かが触れた。


(なんで、狸寝入りなんかしたんだよ!!)


多分、恐らく感覚的に、おでことおでこを合わせているであろうことは、簡単に想像が付く。


甘い香りが鼻腔をくすぐる。


「良かった、熱は下がったみたいね」


ホッと安堵のため息を吐くその息を至近距離に感じて、思わず反応しそうになるのを必死に耐える。


(いや、これはこれで役得では?)


緋岐が目を覚ましていると知れば、こんな大胆な行動には出ないはずだ。


視界が機能していない分、他の感覚が研ぎ澄まされるこの状況も、中々に、イイ。なんて考える余裕があったのはそこまでまだった。


ヒンヤリとした、だけど馴染みのある手が優しく両頬に触れたかと思うと、乱れた髪を整えるように、撫でるように梳く。何度か繰り返される行為に、段々と熱が上がっているのではないかという錯覚に陥る。


(あれか、俺の心臓止める気か!!)


心の中で叫ぶが、当然紗貴には届かない。そして、とうとう紗貴がトドメを刺しに来た。


再度、額に何か温かいものが触れる。それが唇だと気付いたのが最後だった。鎖骨を、耳朶を擽るように、紗貴のくせ毛が零れ落ちながら甘い刺激を緋岐に与える。

そして、紗貴は額に触れたまま吐息と共に小さく呟いた。


「早く、緋岐くんがよくなりますように」


落とされた祈りよりも、与えられた刺激が強過ぎた。


目下、紗貴は自分に自信が無い。女性としての魅力がないと思い込んでいる節がある。……だけなら、いいのだが。


(弟扱い……だよな)


そこに思い至ると何だかイラッとした。


(待てよ。由貴にいつも、こんなことしてるのか?)


湧き上がるのは、独占欲か支配欲か……衝動に駆られるまま、緋岐はゆっくり目を開けると、そのまま紗貴の身体を引きずり込んで、身体の位置を逆転させる。


「え、緋岐くん……起きて……?」


組み敷かれているというのに、なんの危機感もなくただ呆然とのたまう紗貴に、覆い被さるように緋岐は退路を塞ぐ。


が、完全にスイッチを入れたのは、なんと紗貴その人だ。


「緋岐くん、前髪くすぐったい」


なんて言いながら、どうにか自身を擽る緋岐の前髪から逃れようと、顔を逸らす。が、ちょうどそこに緋岐の前髪がこぼれ落ちて。


「……んッ……」


擽ったさに耐え兼ねた紗貴が色を帯びた声を漏らした。


「紗貴、俺に早く元気になって欲しいんだよな?」


言いながら、顕になった首筋を吸い付く。上半身だけ乗っていた紗貴の身体をさり気なくベッドに上げて、逃げられないように紗貴の両足の間に自分の身体を滑り込ませた。


ここまで来て、ようやく紗貴は今の自分に迫り来る危機に気が付いた。


「ま、って……緋岐くん?風邪、治ってないんでしょ!?」


だがしかし、そんな抵抗も想定済だ。


「風邪ってさ、移したら治んるだって……紗貴、もらってくれるよな?」

「そッ……ンっ……」


反論は許さないとばかりに、口を塞ぐ。思うまま口腔内を蹂躙してから離せば、粘度を増した唾液が2人を繋ぐ細い銀糸のように2人のあいだを繋ぐ。紗貴はくたりと脱力したまま、酸素を求めてハクハクと口を動かすしかなくて。潤んだ瞳が更に緋岐を追い詰めた。


それでなくても熱があるというのに、更に追い詰められた緋岐は、掠れた声で紗貴に囁く。


「大丈夫。紗貴が悪くなったら、俺が看病するから」


(そういう問題じゃなくて!!)


だが、紗貴は抗議の声をあげる前に、緋岐に思考を溶かされてしまい……


翌日、案の定ツヤッツヤの緋岐をベッドから恨めしそうに見る紗貴の姿があったとか。



END

将は、多分、部活の合宿かなんかでいなかったのでしょう!!



@確かに恋だった

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