2.またお前と一緒かよ
鋭&由樹
高条 鋭は室長に呼び出されていた。
――また、相棒が変わるのか
ひっそりと溜息を漏らす。
“警視庁捜査一課特殊捜査係第零班”
警察内部の人間にさえ、知られてはいない特殊捜査班である。
中々に特異な性質を持った人間の集団で、メンバーも極僅か。
事情を知らない者達から見れば、選りすぐりのエリート集団だ。
因みに、鋭の中学以来の友人も同部署に配属された。
コンビを組んで行動を共にする事を義務付けられてはいるものの。
流石に新人同士をペアにする程、薄情な部署ではない。
―― が……
鋭の相棒となった先輩刑事が立て続けに三名。
胃に穴を開けて入院した。
法を守る番人――……その中でもエリートだと謳われているというのに何という体たらく!
―― 何て、どうして責める事が出来ようか?
それほどまでに、滲み出るオーラは半端ない。
一見、その筋の人間にしか見えない。
高条 鋭とは、そういう男なのだ。
「失礼します」
ノック音と同時に、扉が開く。
そこに立っていたのは――……
「……由樹……?」
不審そうに眉根を寄せて名を呼ぶ鋭に、由樹はニッコリ微笑む。
「今日から相棒になりました。坂本です」
その言葉に、あからさまに鋭は顔をしかめた。
―― あ、困ってる
由樹は、可笑しくて仕方ない。
第三者からして見れば、機嫌を損ねたとしか思えない状況だ。
が、付き合いの長さがモノを言うのか……由樹には、鋭の心情が手に取る様に判る。
「何で、お前が居るんだよ」
「だから、今日から俺が鋭の相棒なんだってば」
「……あ?」
即答すれば、そんなドスの効いた返事が返って来て、それがまた可笑しくて堪らない。
―― 悩んでる悩んでる……
そんな部下のやり取りを静観していた室長が、咳ばらいを一つしてから重い口を開いた。
「君達には、今日付けで瑞智 紗貴さんの援護者になってもらう事になったから」
―― ほら、彼女も顔見知りの方が何かと言いやすいだろう?
なんて、もっともらしい事を口にしてはいたが。
―― 要するに鋭が判るの、俺しかいないんだよなぁ
と、このささやか人事異動の意図を的確に理解する由樹なのであった。
●またお前と一緒かよ
/(c)螺旋の都
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