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お題に挑戦!  作者: 梨藍
▼問題児のセリフ▼(5題)
19/48

3.「君の為に歌うよ!昼休み、放送回線ジャックして歌うから!」

詆歌→将

「嘘だろう?」


信じられないといった様子のクラスメートに、(しょう)はどこか遠くを見詰めた。

その瞳は、哀愁漂っている。


「これが嘘なら、どれだけ良いか」


寂寥感が込められたその言葉は、クラスメートの心に強く響く。

それだけ、将の体験が如何に壮絶だったか計り知る事が出来て。


囲う一人が、それでも信じられないといった面持ちで首を振った。


「完璧な人間なんていないんだな」


その言葉に違う一人が頷く。


「そうだな……」


“天は二物を与えず”

この言葉の持つ意味を、改めて心に刻んでいた。


「あの鴻儒(こうじゅ)が、ジャイ〇ンに勝るとも劣らない音痴だなんて!」


―― そう……


完全無欠の理想を地で行く。

同性からさえも羨望の眼差しを浴びる。

そんなパーフェクト人間だと思われていた鴻儒(こうじゅ) 緋岐(ひき)の知られざる欠点。


―― 否……


正確には“緋岐の”ではなく“緋岐の兄”つまりは詆歌の欠点なのだが。


“一つの身体を共有している”


そんな奇想天外な事情を誰が納得するだろう?


故に、事情を知らない第三者には緋岐も詆歌も“鴻儒 緋岐”なのだ。

無論、クラスメートとて例外ではない。

緋岐にしてみれば、いい迷惑以外の何物でもない。

だが、将には将の言い分がある。


「もうあれは、ララバイという名のレクイエムだから!」


声を大にして主張する将。

実際の恐ろしさを知らないクラスメートは暢気なものだ。


「へえ、そりゃどんなもんか聴いてみたいもんだな」


なんて言いながら笑っている。


しかしその笑顔はすぐに引き攣った。


「人がいないと思って……随分と楽しそうじゃないか?」


全員の視線が声の主に集まる。


―― そこに居たのは……


「こっ……鴻儒……」


誰かが名を呼べば、見るもの全てを凍らせる程に凄惨な笑みを湛えた。


「……将……そんなに聞きたいのか?」


―― 俺の歌……


名指しされた将は、顔を真っ青にしたまま懸命に首を横に振るが。


「お前の為に歌ってやるよ。昼休み、放送回線ジャックして歌うから」


―― 有り難く耳をかっぽじって聴けよコラ



その日の昼休み……東森中学校を正体不明の毒電波に襲われたのだった。

真相は1年2組が知るのみである。



/(c)空をとぶ5つの方法

お読みいただきありがとうございました!

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