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お題に挑戦!  作者: 梨藍
▼問題児のセリフ▼(5題)
18/49

2.「英語の教科書を見る度に、動悸・息切れがするんだ」

紗貴→緋岐

「……だから、この単語が入って形容詞は……」


―― キレイだよねぇ……


緋岐(ひき)の黒髪が窓から差し込む光に反射して光る。


紗貴(さき)は、ぼうっとそんな事を考えていた。


放課後の図書室。


デート……なんて甘い響きのものではなく。

目下、英語が天敵という紗貴の為の特別授業の真っ最中だ。


だが、話半分で紗貴の耳には殆ど入ってはいない。

改めて、まじまじと“彼”に見惚れていた。


―― 睫毛長いなぁ……


っていうか、もう日本人形みたい


――舞妓さんの格好とか似合いそうよね


本人達が聞いたら、ガックリ肩を落としそうな感想である。


――そう言えば……声低くなったなぁ


少し視線を落とせば、少年から青年へと変わろうとしている喉元に目が行く。

更に視線は下がって。


――夏服って何か色っぽいよね


何て脳裏を過ぎれば、白いワイシャツから覗く鎖骨が目に入って。


―― ドキリ……


一度鼓動が高鳴れば、妙に耳について。


―― しっ……静まれ!


一度意識してしまうと、周囲にまで聞こえていそうな錯覚を起こして。

何だか、視線を感じて目を上げれば。


「……聞いてるのか?」


不審そうに、本日の先生が眉を潜めていた。


「うっ……うん!」


元気に返事はしてみたものの、声は不自然なまでに裏返って。


「おい、顔が赤いぞ?」


―― 熱あるんじゃ……


ガタンと立ち上がって伸ばされた手……


――ではなくて、近付く顔に耐えられなくて。


「ひゃっ!?」


素っ頓狂な声を上げて、椅子から落ちた。

そんな挙動不審な紗貴に、緋岐は眉をしかめた。


「……大丈夫か?」

「だっ……大丈夫……」


強かに打ち付けた腰を摩りながら椅子に座り直す紗貴。




緋岐は胡乱気な視線を紗貴に向けた。




視線が痛くて、紗貴はいたたまれなくなって。




だがやはり、心臓の音が耳にやけに煩くて。




「英語の教科書を見る度に、動悸・息切れがするのよ!」




気付いた時には、そんな本気混じりの言い訳をしていた。




「……そんなムキにならなくても……」




緋岐が、紗貴の真意を知る筈もなく。




――可哀相に……




なんて見当違いな同情を“英語”にしていたのだった。






/(c)空をとぶ5つの方法

お読みいただきありがとうございました!

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