1.「金縛りとか、日常的によくあるし。むしろ無かったら不安になる」
ターゲット:蕎
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セリフを言う人
どうしてそういう話になったのか。
まあ、学生の雑談に理由を求める方が野暮というものだろう。
「トイレは怪談の宝庫だよな」
目を輝かせて話す敦。
対照的に由貴は真っ青だ。
「やめろって……祟られるって!トイレ立入禁止になるよ!」
真剣に言い募る。
由貴の怯え様が楽しくて。
ついついクラスメートも悪ノリしてしまう。
「そういやさ、この間俺……金縛りにあったんだよ!」
イキイキと実体験に基づく恐怖を語る上原少年に、周囲は食いつく。
「……で?」
焦らす上原少年。
一人が待ち切れずに先を促した。
「お経、あげたら良いって言うから唱えたわけよ、そしたら」
―― 効かないよ……
「……ふっ……」
何とも絶妙なタイミングで聞こえて来た短い笑い声に、その場にいた誰もが息を呑んだ。
―― カタン……
「ひいぃいぃいいぃ!」
不気味な物音に、お互いの肩を抱き合いながらそんな悲鳴をあげて。
その音の方向を振り向いて。
―― 全員、安堵の溜息を吐いた。
「なんだよ、相模かよ」
「驚かすなよなぁ」
次々に上がる抗議も、蕎は見事な鉄仮面振りを発揮して受け流す。
そして、皆が落ち着きを取り戻した頃合いを見計らって、口を開いた。
「何、阿呆な事言ってんねん」
そしてクラスメートは後悔した。
――そう……
相模 蕎は、霊感少年なのだ。
「金縛りとか、日常的によくあるし。むしろ無かったら不安になる」
――ならねえよっ!
この時クラスは一つになったのだった。
/(c)空をとぶ5つの方法
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