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お題に挑戦!  作者: 梨藍
▼片想い▼(5題)
13/48

5.今はまだ、言えない

紗貴→詆歌

――何時から?

――何処が?


その問い掛けに、明確な答えを紗貴は持っていなかった。

気付いたら惹かれていた。


「今だけでも、隣に居させて……」


少し先を歩く詆歌に聞こえないようそっと呟く様に言う。


「……あ?」


立ち止まる背中、聞こえた声にビクリとして思わず身を硬くする。


「なっ……何よいきなり」


――まさか聞こえた?


動揺を隠す様に言えば、詆歌(ていか)は少し嬉しそうに振り返った。


「ほら紗貴(さき)見てみろよ!」


指差す方へと視線を向けて、紗貴も思わず感嘆の声を上げた。

天使のカーテンと呼ばれる陽の光の合間から、見事な虹が茜空へと翔けている。


「な?すごいだろ!」


嬉しそうにはしゃぐ詆歌に、紗貴も素直に微笑んだ。

そして無性に泣きたくなった。


余りにも幸せ過ぎて……


真っ直ぐに向けられた“想い”に応えそうになる自分がいる。


―― ダメなのに……


そう、応える事は叶わないのに。

本当ならば、今すぐにでも断ち切らねばならない。

彼を……彼らを縛り付ける権利など、紗貴にはありはしないのだから。


―― でも……それでも……


「ごめんね?私の我が儘で……」

「は?いきなり何なんだよ」


突然、謝られた詆歌は思わず顔をしかめた。


「ごめん。何でもない」


口を滑って出た言葉に、紗貴自身も慌てて首を横に振った。


「変な奴。……ほら、行くぞ。」


言葉が先か

手を握られるのが先か


後ろ姿からも判る。

耳たぶまで真っ赤だ。


握られた手から伝わる温もりは、離し難いもので。


―― まだ、“さよなら”したくないの……


そんな思いを込めて、そっと握り返した。


長く伸びた影は重なっていて。


――いっそ、影みたいに溶け合えたら良いのに


叶う筈がない夢を、そっと虹へと願ったのだった。



●今はまだ、言えない

/(c)螺旋の都

お読みいただきありがとうございました!

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