断罪されたくない転生令嬢SS・お兄さんは心配性
https://ncode.syosetu.com/n7991jl/
→こちらを読んでいないと分からない内容です。
アリアナ兄とエリザベスの話。
需要が微妙なのでおまけ的なSS。
エリザベス・ラフォード侯爵令嬢。
物語のヒロインで、我が家が没落する原因を作り出す相手。
彼女の印象は、高位貴族の、ある意味令嬢らしい令嬢だなというものだった。
それに対して、自分は『秀でたものの無い、翌日には忘れ去られる顔をした、うだつの上がらない下位貴族』のフリをした子爵家嫡男。
「兄さんはイケメン寄りなので、裕福な商家の高慢ちきな女に目を付けられないよう、野暮ったい見た目にしなくては」と、妹・アリアナに助言され、前髪を伸ばして顔を隠し、更に眼鏡で顔に向けられる視線を遮った。どうでもいいがイケメン寄りって何。
眼鏡は特殊な『認識阻害』の魔法がかけられた物。そんな国宝級の魔道具を作ったのは妹の婚約者。なんだソレ、という驚きの言葉は言い過ぎて大抵の事にもう驚かなくなった。慣れって怖いな。
そういう訳で、目立たない地味な子爵家嫡男のアルバート・フログスト(語呂が悪いとか言わないでくれ)が出来上がった。
これでも入学した直後はそこそこモテていたんだけどなぁ…
まぁ、妹が言う『断罪劇』に巻き込まれて落ちぶれるより、ダサい格好で学園生活を乗り切る方がいいだろう。うん。
同じクラスの第二王子には近寄らず関わらずを徹底するが……うーん、飛び級も視野に入れるべきかもしれない。
「イザーク様!あの、お昼がまだでしたらご一緒」
「すまないが昼食は側近達と摂る事になっている。君はまだ婚約者候補に過ぎないだろう?」
「は、はい。失礼致しました……」
うむ、と、そう言って護衛も兼ねた側近達と去っていく王子。そんな彼の背中を見つめる一人の女子生徒。ラフォード嬢だ。
別に彼女が冷遇されてる訳じゃない。
第二王子の立場的に、特別を作る事が許されないからだろう。何しろウチの妹に婚約打診してるからな、王家。周囲に揚げ足を取られないよう、女の影は見せず作らずってとこか。まぁそんな事しなくても、妹はもうガッチリ別の主人公に捕まってんだけどね。
ラフォード嬢は少し俯いていた。
泣くのかな、と、ちょっとした興味本意で見ていたが、彼女は背を真っすぐ伸ばして何事もなかったように歩き出す。
凛としたその姿が印象的だった。
その後も何となく目で追う事が多かったのは、彼女が美人だったからなのか、第二王子に冷たくされてもめげない逞しさに感心したからなのか。
第二王子は良くも悪くも、当たり障りなく学園生活を送っている。
あれは冷静と言うより、何にも興味が無いってタイプだな。
アリアナに会ったら世界変わりそうだけど、会わせるわけにはいかん。すまんな、王子よ。俺も妹が可愛いんだ。
一年後、俺は必要な教科だけ単位を取得し、波乱もなく学園生活を終えた。一応最終試験は合格して、卒業資格は得たから問題無い。
最後に学園長のとこへ挨拶に行く必要があった為、前日に髪を切った。流石にボサボサの頭で行くわけにはいかない。認識阻害の眼鏡は学園長室に入る前に外した。
「君のような優秀な生徒には長く在籍してもらいたかったのぅ…」
白くて長い髭と、丸い眼鏡。いつもニコニコ笑顔の絶えない、人の良さそうな、ちょっぴりふくよかな爺さん。そんな学園長を(妹の婚約者が作った、びでおかめら?とかいうやつでこっそり撮影した)見て妹は『だ、ダダダダンぶる、ド……』と呻いてたな。うん。誰ソレ。
「すみません、学園長。私もそうしたかったんですが、妹が学園生活を送れないのに、自分だけ……というのも可哀想で」
病弱設定だからな。
まぁ実際部屋に引き籠ってるけど、婚約者殿と楽しそうに何か発明してたり、すげー美味いもん出してもらったりして楽しそうだわ。あー、俺も異世界のジャンクフードってヤツまた喰いたい…
学園長は名残惜しそうに、卒業資格となるカードの形をした証明書をくれた。よっし、これで無事学園卒業!王族との関わりも無くなってホッとするわー。
気が抜けたせいか、学園長室から出たのに例の眼鏡をするのを忘れたまま、園内を歩いてしまった。それに気付いたのは、すれ違った何人かの女子が、俺の方を見てヒソヒソするのを見てからだ。
ヤバい。
気付かれる前に学園を出なきゃだ。
認識されてから眼鏡をかけてもしょうがないので、早足で出口へ急ぐ。そんな時なのに、また第二王子に袖にされてるラフォード嬢を見つけてしまった。
「君はあくまでも〝候補〟だと何度言えば理解する?王家は私とアリアナ・フログスト子爵令嬢を婚約させるつもりでいる。悪いが、君に関わる事でチャンスさえ失いかねない。諦めが悪いのは親譲りか?」
「そんな、っ…!!」
いや、チャンスなんて元々無いけどな。
妹、お前と絡みたくなくて学園にも来てないんだぞ?
諦め悪いのはお前ら王族の方だろう。
うちが断り続けるから、第二王子だけじゃなく、異母兄弟から陛下と歳の離れた王弟までこっそり名乗りをあげてきてるからな?
言うだけ言って相変わらずラフォード嬢の反応も見ずに去っていく王子。誠実であるように、と、他所の女性と関わらないようにしてる所は、まぁ、悪いやつじゃ無いんだろうけどなぁ…。気を持たせたりしないだけ良い奴とも言える。奴も辛い立場だろうし。
まぁもう少し、断り方というか、人として優しくあって欲しいぞと同じ男として思う所はあるが。
おっと、彼女がこっちに歩いてくるな…
まぁ、俺が誰か分からないだろうし、このまま通り過ぎ―――っとぉ!おっと!
「ちょ、ちょっと待った!っ、ラフォード嬢!」
「……?!」
女性に失礼とは思ったが、頭からタオルを被せた。
どういう魔法か原理は分からないが、俺の制服のポケットはちょっとした収納空間になっている。将来の義弟がいつの間にか付けてくれていた。ありがとう。
そこから出した大きめのタオルで彼女を隠したのは、淑女に有るまじき顔で泣いていたからだ。
彼女は、本当なら物語のヒロインだったはずだ。
それを俺達の都合で、話を、辿る歴史を変えられ、彼女は愛されヒロインで無くなってしまった。泣かれると流石に罪悪感がだな……ぐぅっ。妹と同じ歳なんだよな――!
ほんと、ごめんなサイ。
「えーと、見られちゃ困るだろうと思って……余計なお世話かもだけど」
「あ……」
ラフォード嬢は気付いて、顔を真赤に染めた。
お。
かわい……いやいや。
うーん、男に見られてちゃ恥ずかしいよな。
ここはとっとと行こう。去り際は素早く跡を濁さず、だ。
「じゃ!それは適当に処分していいんで!」
彼女が何か言おうとしてるのに気付いたけど、面倒事に巻き込まれる訳にはいかないので、失礼させてもらう。もう泣いてないし、大丈夫だよね?ほっといても。
王子に振られてもあの器量なら、引く手数多だろうし、さっさと見切りつけて次の恋でもすればいいさ。
幸せ見つけて頑張れよ、ヒロインちゃん。
その時の自分はそのくらいの熱量で、そう思ってた。
「え……あのっ、貴方が、アリアナのお兄様、でしたの…?」
数年後、何でか妹がヒロインを我が家に連れてきた。
え?なんで??
しかもなんか、この子……めっちゃ俺の事………………ロックオンしてないか?!?
いやっ、目が、潤んでるし、何か熱を感じるんだが…!
妹!こら!
ニヤニヤしてないで何とか言ってくれ!
「ベスがさー、兄さんと結婚するって意気込むから連れてきたんだけど、二人は知り合いだったの?」
「いや、知り合いというか、一言しか喋った事ない。俺は学園じゃ認識阻害の眼鏡してたから、誰も俺の事覚えてないは」
「わ、わたしっ!!ずっと貴方を探してて…!制服のバッジが2つ上の学年だったから探したのに、全然見つからなくて……」
ヒロインちゃん、いや、「エリザベスよ、兄さん」あ、はい。エリザベス嬢はそう言って顔を覆って泣き出した。
えー?これ、俺が悪いの??
すれ違いざまにタオルを渡しただけの不審人物ですよ、俺。
在学中に接触した内容を説明すると、妹は「はぁ〜」っと呆れたように言って、俺を指差した。
アリアナ、人を指差しちゃだめだろ。
「そんな初恋泥棒みたいな真似して何やってんのよ、兄さん。言ったでしょ、兄さんはイケメン寄りなんだから、その顔でそんな事されたら『惚れてまうやろ〜〜〜!!』だよ?」
妹が何言ってるのか分からないが、そのイケメン寄りはやめて。中途半端すぎる。
「でも、タオル渡しただけだぞ?優しい言葉なんてかけられなかったし」
一応言い訳してみたが、女性陣は納得してくれなかった。
「ベスは男性に優しくされ慣れてないから……初心な相手にそんなテクニックを……兄のくせに。ね、ベス?」
「うん。私の初恋返して下さい」
なんで。
理不尽過ぎないか?
「何かよく分からないけど、俺が悪かったです」
女子の気持ちはよく分からない。
だって、俺、学園でも領地に戻っても、恋人いないし。
妹の事が落ち着かないと恋愛なんて無理だったのと、この家の秘密を守ってくれる同士みたいな子じゃないと無理だしね。
子爵家だから、王族の方も降嫁させるには弱いみたいで、出戻りの訳アリ王女みたいな人ばっかり打診されてたんだよね。その人達の人柄は知らんけど、俺にもその人にも失礼じゃないか?
ってな感じで全部失礼の無いよう突っぱねてました。
そんな、親しい女性=家族の俺に、女性の機微が分かるはずもなく。こういう時はさっさと謝って話を聞いてあげるのが一番だと父が言ってたように、すぐ白旗を上げた。
「じゃ、とりあえず兄さん、エリザベスの事お願いね!」
「ん?」
「ベスも私と同じで異世界転生者だけど、侯爵令嬢として勉強してたから戦力になると思う!リューノの作った物にも驚かないし、使い方も分かってるからいちいち説明しなくても大丈夫だし。逆に色々教えてもらえるよ!」
「お、おい……」
また何か〝プレゼン〟ってヤツが始まったんだが。
待てよ。
そういや最初になんて言ってたっけ―――
「あの、私じゃ、ダメ……ですか?」
クイクイと、控え目に服の裾を引っ張られ。
見れば上目遣いで頬を染める美少女が。
「ちょ―――っと、んー、そう、そうだな、まずは、ほら。俺達何も知らない同士だし、話でも―――」
「!ホント?嬉しい!!」
エリザベス嬢はそう言って俺の腕に手を絡めて引っ付いた。
「〜〜〜〜〜き、みっ、分かってて、やって……るよ、ね?」
「攻撃は最大の防御です!」
「いや、それ、多分意味が違う……」
気付けばとっくに妹の姿は無く。
俺は妹とは真逆のタイプである彼女に、これまた振り回される事になるのだが―――
義弟。胃薬も開発してくれないかな……
アリアナは兄の事、イケメン寄りといっていますが普通にイケメンです。元日本人のアリアナは顔が外国人?の兄がどの程度美形なのか分からないので、そう表現しています。リューノは日本人顔なので。