おとしだま 2
帰省最終日。寝るときにおむつを履くよさに気づいてしまった芽衣。ばれるリスクをわかっていながらも長時間履いていたいという誘惑に勝つことができなかった。そんな帰り道のお話。
帰省最終日。初売りも参加し、初詣にもいった。あとは帰るだけの状況になった。帰り道も行きと同じように渋滞に巻き込まれる予感がした。行きは何とかおしっこを我慢することができたが、今の状況からして無理に我慢する必要はない。なぜならあと1枚おむつが残っているのだから。
高速道路に乗る前の最後の休憩でトイレに寄り、リュックの中に隠していた最後の一枚のおむつを取り出し、ショーツの代わりに穿く。真っ白で黄色のお知らせラインが入ったおむつ。ショーツに比べてふわふわで気持ちがいい。最後の一枚なので極力使いたくはないが「保険」と「おむつを長時間穿いていたい」という誘惑に勝つことはできなかった。
一応上からショーツも穿く。さらにタイツを穿き、ショートパンツを上げる。
「今から高速乗るけどトイレとか大丈夫?渋滞に巻き込まれたらすぐにトイレ行けないけど」
「うん。大丈夫」
おむつの心的安心は大きかった。そのまま高速道路に乗るが開始五分で渋滞に巻き込まれてしまい全然進まなくなった。そこまでは予想通りだったが行きに比べて明らかに進むのが遅い。
「・・・あ、これやばいやつかもな。全然動かない」
「トイレ大丈夫?早めに言ってね。多分そんなすぐにPA寄れないから」
「わかった」
とは言ったものの、おむつを穿いているというのもあって全く心配していない。朝からそこまで水分をとっていないのもある。きっと大丈夫だろう、そう思う。
ラスト一枚しかないおむつ、そう簡単と使うわけにはいかない。次いつ手に入るかもわからない。
窓の外を眺める。高速道路にふさわしくない全く流れない景色。これがいつ終わるかはわからないが、そう簡単に終わらないことだけはわかる。
とりあえず意識を車の中で流されている曲に移しつつおやつに手を伸ばす――
――二時間が経過する。あの時の余裕はどこへやら。尿意が押し寄せて今は必死に格闘中。まだ大して景色は変わらず渋滞の中にいた。下手に「トイレに行きたい」と言って限界でおむつにするわけにはいかない。おむつは自分だけの秘密なのだ。先ほどのPAを通り過ぎる前に寄ってもらえばよかったと後悔するがもう遅い。あの頃は全然感じていなかったので仕方ない。
必死に意識を尿意から引きはがす。車の中で流れる好きな曲に集中しようとするが尿意は消えない。できれば前を押さえたい所だが両親に悟られるわけにはいかない。必死に平常の体制で我慢をする。変に汗もかいてきた。
(さすがにちょっとやばいかも)
次はSA。看板に距離が書かれているがそこまでどのくらいの時間がかかるかがわからない。ギリギリのところで申告すれば決壊の可能性は低いだろう。ラスト一枚のおむつをそう簡単に使いたくはない。そうはいってもかなり限界に近かった。
(そうだ。クッション抱いてれば前押さえててもばれないかも!)
隣に置かれているクッションを手に取り体の前に持ってきて利き手でショートパンツを押さえ、利き手の逆でクッションを抱きしめる。前押さえで若干気がまぎれるが、クッションに押され余計に尿意を感じる。上からの圧は盲点だった。
(まあでも・・・押さえないよりはマシかなあ・・・?)
後部座席から必死に前方を見る。前の車と前列シートにかなり視界が遮られているがその隙間から情報を得ようとする。次のSAの情報を見逃してはついに後がないだろう。絶対に見逃すわけにはいかない。
同時に親に我慢していると思われないように必死に平静を装う。
そうはいってもかなりもう限界だった。次のSAまでの距離もわからずいつたどり着くかわからない。今後の作戦としては二つ。一つ目は諦めておむつにするという方法。ラストの一枚だがもうそろそろワガママを言っている余裕もない。二つ目は限界まで我慢をし、使ってしまったら使ってしまったであきらめるという方法。極力そうしたいところだが、こうなってしまうような気がしていた。
(・・・においとか大丈夫だよね?ばれないよね?)
この間のことを思い出す。密閉した車内ということもあってかなり微妙なラインな気がする。だがもう限界だった。足を精一杯の力で閉じ、それでも我慢しようとする。
だがわずかな気のゆるみでほんの少しだけ出てしまう。押さえている手でもわからないほど微妙な量だが、感覚的には絶対に出てしまっただろう。一度汚れてしまったおむつ、ここからそう長くはもたなかった。
一瞬でも開放してしまったあとは今まで経験したことのない尿意がガンガンと押し寄せてくる。その度に力を込めて耐えようとするが少しずつ、「じゅっ、じゅっ」と少しづつおむつの中へと出て行ってしまう。
(あっ・・・またしちゃった・・・もう限界・・・)
もうにおいなどのことを考える余裕などなかった。今はとにかくこの尿意のことしか考えられない。諦めてちょっとずつ開放していく。
おむつの内側をおしっこがたたく感覚が伝わってくる。音は幸いなことに音楽にかき消されている。押さえている手から伝わってくるおむつが膨らむ感覚。きっとあの黄色かったラインは青色に変わっていっているのだろう。
座っている影響か以前よりも前におしっこが集中しているような気がする。お尻まで温かくなるという感覚はそこまで感じない。おかげで前で大量におしっこを吸収している。かなり膨らんでいる。
おしっこも終盤になり、あの頃の尿意はかなり薄れていた。対照的に前側はかなり膨らんでしまっていた。ちょっとずつ理性も戻ってくる。においが上がってこないようにするため、変わらずクッションは抱いておくことにする。
(あ・・・私限界でおむつにおしっこしちゃったんだ・・・)
前方への意識も薄れていたことを思い出す。改めてSAの看板を探しつつタイミングを狙う。だが当初とは理由が変わっていた。今は濡れたおむつを迅速に処理するため。
ただせっかくおしっこをしたのだ。この温かい、旧主体が膨らんだ姿はもう少し楽しみたい。利き手でさわさわ触りながら前方に集中する。
♢
あのあと少ししてSAの予告を見つけ、ギリギリのタイミングでSAに寄ってもらうことに成功する。においも何とか漏れずに耐えた気がする。シートも服も濡れていない。とりあえずはそれで良しとしよう。
SAに入っても相変わらずの込み具合だった。駐車場を探し、何とか車を停める。そしてバレないように演技もかねて速足でトイレへと向かう。さすがに周りにおむつを穿いていることはばれないと思うがそれでも恥ずかしかった。
濡れたおむつで歩く感覚。それはそれで新鮮だった。こんなにも普通に歩くのが大変になるとは思わなかった。気を抜くと足が開いてしまう。トイレにたどり着くが、そこもトイレを求める客で列ができていた。もう我慢をしているわけでもないので耐える必要もなく順番がやってくる。個室に入り、鍵を閉めてリュックを下ろしてショートパンツとタイツを下ろす。ぱんつの上からもわかるほど膨らんでいた。きっとショートパンツの上からでもそれなりに膨らんでいただろう。大丈夫だろうか。パンツも下ろすが濡れたようなところはない。このまま穿けるだろう。
露わになるおむつ。前側が特に膨らみ、ラインはしっかりと青くなっていた。せっかくなので若干残っていたおしっこを出し切る。少しは出すことができた。
もう脱がなくてはいけないのかと少し寂しかった。まだ本当はこの感覚を味わっていたい。だがこれ以上穿いているとさすがににおいや膨らみでばれるだろう。最後に膨らんだおむつを上から触り、脱ぐ。濡れた部分をトイレットペーパーで拭き、おむつのサイドを破って個室の中にあるごみ箱へと捨てる。もうすでにおむつが捨てられていた。他にも我慢できなかった子がいるのだと思いつつおむつを丸めて中に入れる。そのあとはぱんつを穿きなおして出るだけだ。擬装用に一応トイレを流して出る。数時間ぶりのショーツ。おむつに比べて薄いためこの冬の気温が刺さる。そんなに違うことに驚きつつ両親を探す。歩く感覚ももう懐かしい。
「・・・あの子さ、やっぱり変じゃなかった?」
「隠してるみたいだけど絶対トイレ我慢してたよな」
「うん。あと少し匂いも残ってるし・・・」
「ってことはあの残りのおむつ使ったのかな?心配で?」
「そうしか考えられないでしょ。トイレで捨ててきてくれるといいけど」
「一応確認しないとな。さすがに言う?」
「・・・そうね。まだ高速道路走らないといけないし、確認しようかな」
ちょうどそこで芽衣がトイレから帰ってくる。父親は席を外し、母親が芽衣を迎える。
「・・・大丈夫だった?」
「うん。なんとか」
・・・ぱっと下半身を見るが車を降りた時の膨らみはもうない。本人も何かをごまかそうとしているようには感じない。捨ててきてくれたことを祈る。聞くのもかなりの勇気がいる。母は小さく深呼吸をし、娘を少し端につれていく。
「・・・本当は言いたくなかったけど、おむつしてた?」
「ふぇ?」
母親からの予想外の指摘に驚く。自分としては完璧に隠していたつもりなのだが――どこからバレていたのだろうか?一枚目の時からだろうか?入手ルートからバレたのだろうか。どこまで知っているのだろう。
動揺して声が出ない芽衣を置いてさらに母は続ける。
「・・・別に責めてるわけじゃないし、むしろ車汚さないように穿いてくれてありがと。どうやって手に入れたとか、なんで穿いてたのかとかは聞かないから。だけどちゃんと汚れたおむつ捨てた?」
声が出ない。ゆっくりと首を縦に振る。怒られるのだろうか。足の震えが止まらない。
「だったらよし。怒ったりしないってば。さっきも言った通り感謝してる。で、ママから一つ提案があるんだけどいい?」
「うん」
「あのさ、まだ帰り道も長いし、心配だったらおむつ買ってあげようか?」
「え?」
「だって心配じゃない?それに今度こそ限界来ても困るし。買ってあげるから。どう?悪くない提案なんじゃない?」
――それ以上何も言わない母だったが、すべて気付いているだろう。だからこそのいろんな体裁を含めた今回の提案。母に認知されると思うと少し恥ずかしかったが、またおむつが穿けるというのがうれしかった。
「・・・うん。お願い」
「わかった。あ、またトイレ並ぶと時間かかっちゃうし、パパのいない車で穿こうね」
「うん」
そういうと母は芽衣の頭を撫で、売店のほうへと向かっていった。タイミングよく帰ってくる父。手には温かいココアが二つ。母が帰ってくるまで二人で飲んだ。
母が帰ってくると父がまた姿を消し、母と二人で車へ戻り、車の中で新しいおむつに履き替える。母が買ってきたのはホテルの売店で売っていたのと全く同じだった。
「ちょっと小さいけど大丈夫でしょ。これが一番大きいサイズだったし」
袋ごと手渡され、後部座席で開封し、一枚穿く。慣れた?おむつなのでそう手間取ることはない。母はその姿を見て「懐かしい」と小さくつぶやいた。ほんと、いつの話をしているのやら。
母の提案でショーツは預かってもらった。(穿くだけふくらみが目立つとのこと)タイツを少しめくると見えるおむつ。今度は公認だ。嬉しそうにしているのを隠しているつもりだったが母にはバレバレだった。
父が帰ってくる。一応母子二人の秘密ということになっている。
「すまんな待たせて」
「ううん。大丈夫。帰ろ」
「そだな」
そういうと父は車を発進させ再び高速道路に戻る。まだまだ帰路も楽しめそうだ。だって新しいおむつがあるのだから――
Fin