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天使の気まぐれでパスワードは変わる

作者: 明家叶依

「はぁ……」

 意図せずに出たため息はとても長かった。


 ちなみに僕は天使だ。一応恋のキューピットと称してここらの地域一帯の恋愛事情を担当しているのだが、最近は運命の出会いというのがなさ過ぎて仕事がなく困っている。マッチングアプリとかいうので簡単に相手を見つけられる時代になってきていて、そのせいでここ数年の給与は激減だ。


 ため息の一つも吐きたくなるさ……。

 だから、一つの計画を立てた。


 その名も

 『担当地域にいる人の所有するスマホのパスワード勝手に変えちゃえ‼』だ。


 昨夜、徹夜で考えた末、明け方寝不足になりながら思いついた。これで人間達はパニックになり、スマホ離れをするのではないか、という狙いだ。パスワードくらいなら天使特権の魔法でちょちょいのちょいと変えられる。バレたらすごい叱られるけれど。

 僕は人間達が活動開始する通勤時間に会わせ、空中から呪文を唱えた。すると、焦りや不安に満ちた声が少しずつだが耳に届く。


「ロック解除できないんだけど⁉」

「お、俺もだ」

「はぁ? さっきまで動画見てたのに何で?」


 様々な声が聞こえてくる。この調子でスマホの電源まで切ってしまおうと思い、実行した。


「会社に連絡できねえ」

「このまま携帯会社行こ」

「ラッキー学校サボれるじゃん」


 けれど、思いのほか下から聞こえてくるのは苛立ちばかりではなかった。

 そんな様子を上空からしばらくの間覗いていた。


 ニュースにもなったし、一時ネットでも話題になった。携帯ショップはただでさえ予約客でいっぱいなのに混雑していた。でも、別に普段と変わらない。以前なら困ったときは他人と協力したりして乗り越えていたのに、あくまでも今は他人は他人みたいだ。むしろ店員に「早くしろ!」と苛立ちをぶつけている。


 今回の騒動で困ったのはスマホ所有者ではなく、テレビ局や携帯ショップの店員らだった。

 このことがバレて天界から叱られ、元に戻すように言われる。

 一斉にスマホの電源がつき、人間達は電波障害だの、バグだので片づけた。ただ、根も葉もない憶測をネットニュースで言われ続けている。

 現状を変えても直接的な変化があるわけではない。


 一つだけ変わったことがあるとするのなら、思春期くらいの男女がこの件で仲が深まったことくらいかな……。

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